映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ワイルドライフ

2020年08月13日 | 映画(わ行)

ダメダメな親を見つめる少年

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1960年代、モンタナ州の田舎町。
14歳の少年ジョー(エド・オクセンボールド)は
仲の良い両親ジェリー(ジェイク・ギレンホール)とジャネット(キャリー・マリガン)のもと、
慎ましくも幸せに生活していました。

ところがある日、ジェリーがゴルフ場の仕事をクビになり、両親の様相が変わってきます。
父ジェリーはなかなか新しい仕事が見つからず、山火事をくい止める危険な仕事、
ただしほとんどボランティアのため、家を出て行ってしまいます。
生活のため、母も仕事を始め、ジョーも写真屋でバイトをはじめます。
ところが母は、次第に変わっていく・・・。

ジョーという多感な少年の目が、静かに父と母を見つめます。

仕事をなくし、見栄で簡単な仕事には就こうとしない父。
そんなことから逃げるように、妻も息子もほっぽり出して「ヒーロー的な」仕事に出かけてしまった父。

全く頼りにならずダメな夫に絶望し、
妻・母としての立場をあっさり脱ぎ捨てて、「女」になってしまった母。

ジョーはダメな父と母に対して非難めいた言葉は発しません。
自分とは違い、「大人」だと思っていた両親が、全くそうではないということを、
ただ物静かに見つめて、悲しく理解していくのです。
その間、彼は自分でバイトを探し、写真の仕事の腕を上げていく。
本作で一番大人なのは彼なのかもしれません。
というか、ダメな両親のおかげで彼は成長した。

ジョーが両親に対してたった一言非難めいたことを言ったとすれば
「これからうちはどうなるの?」という終盤のシーン。

本作、夫婦のゴタゴタを描くだけなら何と言うことのない作品と思うのですが、
あくまでも少年の心に寄り添って描かれたところが素晴らしいのです。

ダメダメな親2人、キャリー・マリガンとジェイク・ギレンホールも良かった。

 

「ワイルドライフ」

2018年/アメリカ/105分

監督:ポール・ダノ

原作:リチャード・フォード

出演:キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールド、ビル・キャンプ

ダメ親度★★★★☆

多感な少年度★★★★☆

満足度★★★★☆