映画と本の『たんぽぽ館』

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やすらぎの森

2024年11月15日 | 映画(や行)

世捨て人たちの住むところ

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カナダ、ケベック州。
人里離れた深い森の中にある湖のほとり。
そこで3人の男性老人がそれぞれの小屋で犬と共に暮らしています。
3人はそれぞれの理由で社会に背を向け、世捨て人となったのです。

毎日湖で泳ぎ、絵を描いたりギターをつま弾いて歌ったり、気ままな暮らし。
しかしその、絵を描いていた男が、ある日穏やかに永遠の眠りについてしまったのです。
そんな時から物語は始まります。

1人の老婦人がここへやって来ます。
彼女は少女時代の不当な措置により、精神科療養所に60年以上も入れられ、
外界と隔絶した生活を強いられてきたのでした。

世捨て人たちに受け入れられた彼女は名を捨て、マリーと名乗り、
第二の人生を踏み出し、日に日に活力を取り戻していきます。

しかしそんな時、森の日常を揺るがす緊急事態が・・・。

この地域一帯は、その昔大規模な森林火災があって、
多くの人々が犠牲になった地でもあります。
絵を描いていた老人は、おそらくその時に家族を亡くして、
孤独の淵に沈みながら、焼け焦げた森の絵を描き続けていたのでしょう。

マリーはおそらく霊感が強い人で、子どもの頃そのようなことを口にしたために、
父親に気味悪く思われて精神病院に入れられたということのようなのです。
だから彼女は絵描きの描き残した絵に、強く反応するのです。

それにしても、60年・・・。
人間らしい扱いも受けられず、外の世界を見たこともない・・・。
あまりのことに言葉を失います。

そして世捨て人とはいっても老人同士は気心も知れて、
やはり人と人との絆を求めてはいるわけで。

けれど、なんのために生きるのか、生きているのか。
そうしたことが最後まで生きようとするか、もういいと思うのかの
分かれ目ではあるのですね。

とにかく、この森の奥の老人たちの世界はまずはうまく回っているのです。
ところが、これが外界の現実社会から見ると見方は変わってくる。

森の奥に勝手に住み着いている得体の知れない老人たち。
おまけに、違法薬物の原料である植物を栽培している(これは本当)。
そして、マリーは勝手に精神病者の施設を抜け出したわけで・・・。

どうやらここが安住の地というわけにはいかないらしい・・・。

幸福なのかそうでないのか、よく分らない物語。
それはつまり、見る人それぞれの考え方ということになるのでしょう。

<Amazon prime videoにて>

「やすらぎの森」

2019年/カナダ/126分

監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー

原作:ジョスリーヌ・ソシエ

出演:アンドレ・ラシャペル、ジルベール・シコット、レミー・ジラール、ケネス・ウエルシュ、エブ・ランドリー

世捨て人度★★★★☆

満足度★★★.5



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