こだわりの名品たち
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日常に退屈した者が集い、世に秘められた珍奇な話や猟奇譚を披露する「赤い部屋」。
新会員のT氏は、これまで九十九人の命を奪ったという〈殺人遊戯〉について語り始める。
少しも法律に触れない、安全至極な殺人法とは――
そして恐るべき身の上話ののち、仰天の結末がT氏を待ち受けていた!(「赤い部屋異聞」)
乱歩の名作をアレンジし、どんでん返しのつづら折りが見事な表題作ほか、
都筑道夫のホラー短編を下敷きにした“決して最後まで読めない本”の怪異譚「だまし舟」(書き下ろし)など、
マニアであれば二度おいしい、絶品揃いの全九篇。
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法月倫太郎さんの短編集。
それぞれの一作が、特定のテーマに基づいて編まれた
アンソロジーへの一篇として書かれたもので、
従って通常の作者の発想の枠から逃れたという感があり、
ユニークな作品揃いです。
それで、一篇ごとに著者の「裁断されたあとがき」が付いているのも嬉しいところです。
私が好きだったのは・・・
「まよい猫」
探偵のもとを訪れてきた身なりもかまわない女性は、
まるで中年男性のような口調で「私の飼い主」を探して欲しいという。
彼女がさしだしたその「飼い主」だという写真は、彼女本人が写っていた・・・。
猫と飼い主の体が入れ替わってしまったらしいという事件なのですが・・・。
「葬式がえり」
ミステリというよりホラーです。
侍が家に帰ると奥方が三つ指をついて「お帰りなさいませ」と迎える。
それから、その侍は屋敷から一歩も外へ出ず、日に日にやつれていき、
ついには首をつって死んでしまう。
「何事も起こっていない」のに、どうしてこうなるのか・・・?
何が怖いかって、それは・・・。
「迷探偵誕生」
もしも、どんな難事件も間違いなく解決してしまう
驚異的推理能力があったとしたら・・・というお話。
それはさぞかし、快感に違いないのですが・・・。
人は果たしてそれで満足できるのか、ということなんですね。
<図書館蔵書にて>
「赤い部屋異聞」法月倫太郎 角川書店
満足度★★★★☆