映画と本の『たんぽぽ館』

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少年の君

2022年07月19日 | 映画(さ行)

緊張感を感じるほどの信頼

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先日感服した「ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)」のデレク・ツアン監督作品。

進学校の高校3年チェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)。
校内は大学入試を控え、殺伐とした雰囲気が漂っています。
そんな中で、チェンは息を潜めるようにしてひたすら勉学に励んでいます。

ある日、同級生がいじめを苦に自殺。
そして、チェンが新たないじめの標的になってしまいます。
またある日、チェンは下校途中、集団暴行を受けている少年・シャオベイを目撃し、
とっさに救いの手を差し伸べます。
優等生と不良という対極の存在でありながら、
孤独を抱える2人は次第に心を通わせるようになって行きますが・・・

本作冒頭では「いじめの撲滅に向けて」というメッセージがあります。
実際、どこの国でも同様のいじめがあるものなんですね。
これが、人が社会生活を送る上で、必ずあるつきもののようなもの・・・
だなんて思いたくはないけれど、でも、実際にある。

チェンの母は借金を抱えており、
インチキな化粧品セールスをして人から責められてもいると言う状況。
チェンの大学受験、そして合格だけがこのどん底の貧乏生活から抜け出す道なのです。
チェンはいじめを受けようがなんだろうが、ひたすら耐えて勉学に励むしかない。
周囲の子も似たような状況。
いじめをする側の子は資産家の娘で、親からの重圧が大きくてストレスをため込んでいる。
まあ、これで平穏な学校生活が営まれる方がおかしいのかも知れません・・・。

ということで本作、もちろん「いじめ撲滅」がテーマの一つではありますが、
それよりも、二つの無垢な魂の強く美しい結びつきについて、
そのことが非常に強く胸を打つのであります。

チェンは、シャオベイに「私を守って」といい、
下校時にはシャオベイが少し離れたところからチェンの後を歩き、
彼女に危害を加える者がないように見守りを続けます。

しかし他の用事でどうしてもそれができないときに、
チェンはいよいよ悪辣ないじめにあってしまうのです。

髪をぐちゃぐちゃに切られてしまったチェンは、
いっそ、ということで自ら丸坊主にしてしまいます。
心は決して暴力に屈しないチェン。
その強いまなざしを、ますます守りたいと思うシャオベイ。

ヒリヒリした緊張感すら感じるくらいの互いの信頼感。
シビれます。

シャオベイ役のイー・ヤンチェンシーは、中国のアイドルグループ「TFBOYS」のメンバーだそうで。
なるほど~。
私は、なんかEXILEにでもいそうな感じのイケメンのにーちゃんだなあ・・・
と思いながら見ていました。
当たらずとも遠からず。

 

<WOWOW視聴にて>

「少年の君」

2019年/中国・香港/135分

監督:デレク・ツアン

出演:チョウ・ドンユイ、イー・ヤンチェンシー、イン・ファン、ホアン・ジュエ

 

いじめ度★★★★★

純愛度★★★★★

満足度★★★★★