ド素人の主婦が
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フィリッパ・ラングレー(サリー・ホプキンス)は、
職場で上司から理不尽な評価を受け、落ち込んでしまいます。
夫とは離婚。
2人の息子と暮らしているので、仕事を辞めるわけにもいきません。
そんなある日、息子の付き添いでシェークスピア劇「リチャード三世」を鑑賞。
リチャード三世は、障害のある体のためか心も醜く歪み、
甥2人を殺害して王位に就いた・・・
などと悪評の高い1400年代のイギリス王です。
この時フィリッパはリチャード三世に自身を投影。
彼も実は自分と同じように、不当な扱いを受けているのではないかと思うのです。
そのことがきっかけでフィリッパは、リチャード三世の歴史研究にのめり込んでいきます。
1485年に死亡したリチャード三世の遺骨は近くの川に投げ込まれたと長く考えられていましたが、
フィリッパは彼の汚名をそそぐべく、遺骨探しを開始。
多くの人は馬鹿馬鹿しいといいますが、中には注目してくれる人もいます。
専門の学者の助言や古文書などから、有望な場所を割り出しては見たものの、
実際の発掘には大金が必要・・・。
この時、フィリッパにはリチャード三世の幻影が見えています。
彼女自身、これは「幻影」だと自覚はしている。
でも彼女の見る、力無くうなだれたリチャード三世の姿を
私たちも見ることで親近感が湧いて、
必ず彼の遺骨を見つけてほしいという願望が湧いてきます。
ほとんど憑かれたようになっているフィリッパだけを映し出せば、
こちらも若干引いてしまうかも知れない。
うまい演出だと思います。
終盤、いよいよ遺骨発見?というときには、
これまでうなだれていたリチャード三世が颯爽と白馬にまたがって登場。
ステキです!!
結局フィリッパはこの研究のために仕事も辞めてしまうのです。
別れた夫とは子供たちとのこともあるので、頻繁に逢っています。
なのでその元夫にも子供たちにもあきれられてしまう・・・。
でも家族の絆はそんな彼らをもまた一つにしていく・・・
というところも心憎いですね。
何より、これが実話に基づいているというのがスゴイ。
研究者でも何でもないド素人の主婦が成し遂げたこと。
・・・でも結局その手柄が、大学やら学者やらに奪われてしまったという
オチもまたいかにも現実。
実に興味深い物語でした。
<Amazon prime videoにて>
「ロスト・キング 500年越しの運命」
2022年/イギリス/108分
監督:スティーブン・フリアーズ
原作:フィリッパ・ラングレー、マイケル・ジョーンズ
脚本:スティーブ・クーガン、ジェフ・ポープ
出演:サリー・ホーキンス、スティーブ・クーガン、ハリー・ロイド、マーク・アディ
歴史発掘度★★★★★
執着度★★★★★
満足度★★★★★