当時の父と同じ年齢になった自分
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11歳の夏休みを迎えたソフィ(フランキー・コリオ)。
両親は離婚し、普段は母と暮らしていますが、
この夏休みは父・カラム(ポール・メスカル)と共に
トルコのひなびたリゾート地で過ごすことになりました。
ユニークなのは、この作品が、このひと夏の様子を
そのままソフィの視点で描いているのではなく、
20年後、当時の父・カラムと同じ年齢になったソフィが、
その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、
父との記憶を蘇らせていくという体で描かれているところです。
その当時、子どもの自分にはよく分っていなかった父の内面が、今なら分る。
とはいえ、11歳といえばすでに思春期の入り口にはあるわけで、
当時整理がつかなかった自分の感情をもまた、同時に思い起こしてもいるわけですね。
当時の父は、離婚後孤独で仕事も順調ではなかった。
けれど、大事な娘のために、なけなしのお金をはたいて
このバカンスに挑んだのでしょう。
夜、1人で海へ歩み入っていくカラム。
いやあ、私はてっきりそのまま帰ってこないのでは?と思ってしまいました。
けれど、11歳の娘を1人残して行ってしまうほど無責任なヤツではありませんでした。
よかった、よかった・・・。
ただ楽しいだけではなくて、物憂くてけだるくもあるリゾート地の夏。
普段は離れて暮らしている父と娘。
特別な時間。
見事にそのような状況が切り取られていました。
<Amazon prime videoにて>
「アフターサン」
2022年/アメリカ/101分
監督・脚本:シャーロット・ウェルズ
出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ローソン=ホール
夏の倦怠感度★★★★☆
郷愁度★★★☆☆
満足度★★★★☆