あなたは誰と食べますか?
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ショートケーキは祈りのかたち――。
悩んだり立ち止まったり、鬱屈を抱えたりする日常に、
ひとすじの光を見せてくれる甘いもの。
ショートケーキをめぐる、優しく温かな5編の物語。
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坂木司さんの「お菓子」の話と言えば、「和菓子のアン」を思い浮かべますが、
本作はそれとは別、「ショートケーキ」にまつわる連作短編集となっています。
実は今時、和菓子よりもショートケーキの方がうんと身近かもしれません。
日常食べる和菓子と言えば、お饅頭とか大福餅で、
きちんとした和菓子は滅多に食べない・・・というのは私だけかな?
そこへ行くとショートケーキは、確かに多くの人の生活の中にあるのではないでしょうか。
それを一緒に食べる家族の形、友達との語らい、
そしてお一人様サイズのショートケーキとなれば1人の思いもあるでしょう。
多くの物語を秘めたお菓子なのかも知れません。
私の心に残ったのは
「ままならない」
結婚し、子どもができたのは良いけれど、自分のための時間がとれないママたち。
少しも目が離せない赤子をかかえて、大好きなショートケーキをじっくりと味わう時間もない・・・。
あつこは、似たような思いを抱く2人のママ友と、互助会を結成します。
大変な時期に、助け合うことができる人の輪は貴重ですね。
本作、それぞれ前の話に登場した人物が
かぶってほんの少し登場したり話に出てきたりするので、
それを見つけるのも楽しいところです。
「ショートケーキ。」 坂木司 文春文庫
満足度★★★.5