映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「怪しい店」 有栖川有栖

2017年01月20日 | 本(ミステリ)
火村英生シリーズファンなら、ぜひ

怪しい店 (角川文庫)
有栖川 有栖
KADOKAWA


* * * * * * * * * *

推理作家・有栖川有栖は、盟友の犯罪学者・火村英生を、敬意を持ってこう呼ぶ。
「臨床犯罪学者」と。
骨董品店"骨董 あわしま"で、店主の左衛門が殺された。
生前の左衛門を惑わせた「変な物」とは…(「古物の魔」)。
ほか、美しい海に臨む理髪店のそばで火村が見かけた、列車に向けハンカチを振る美女など、
美しくも恐ろしい「お店」を巡る謎を、
火村と有栖の名コンビが解き明かす。
火村英生シリーズ、珠玉の作品集が登場。


* * * * * * * * * *

有栖川有栖さんの火村英生シリーズ。
様々な「店」をテーマにした短編集です。


はじめに取り上げられているのが『古物の魔』で、
古物商で起きた殺人事件。
これを読んでいたら、私も無性に骨董品のお店を覗いてみたくなってしまいました。
もちろん、由緒ある高いものなど買うことはできません。
でもちょっとした置物とかアクセサリ、
どこでどんな人が作って、どんな人が使っていたのだろうと思いながら、
手元にあったりするのは楽しそうです。
買わないまでも、店先で見るだけでもいいですね。


『ショーウィンドウを砕く』は、珍しく倒叙形式。
つまり、犯人の視点で描かれています。
犯人側から見た火村は、
得体が知れなくて見透かれそうで、実に油断ならない感じ。
この話はテレビドラマ版でも使われていました。
・・・いや、他にも使われていたものがあったのかもしれませんが、
何故かこの話の1000円札のエピソードだけ、覚えていまして・・・。
ここのロジックは、さすが有栖川有栖!!


『潮騒理髪店』は、火村が寂れた海辺の町を一人旅するという、
これも珍しいパターン。
旅というか、仕事で訪れた町で、バスの待ち時間に起きたできごとで、
殺人事件は起きません。
いわば「日常の謎」。
火村がほんの数時間そこで見聞きしたことだけで、
一つの謎が解き明かされていきます。
ひなびた味のある秀作。


ラスト、表題の『怪しい店』。
ここに登場するのは<みみや>という店で、
ひたすら人の話を聞くだけのお店。
カウンセリングなどは、とにかく相談者の話を聞くことが大切だといいます。
人は自分の心の中を話すだけで、心の荷を下ろすことがあるらしい・・・。
意外と、身内や友人に言えないこともあるものですよね・・・。
人に話しているうちに、自分の本当にかかえている問題点や、
実は密かに見えている解決策に気づくこともあるでしょう。
だから、これはなかなかほんのりしたストーリーなのかと思いきや! 
やはり、ミステリなので、そう単純な話ではありません。
人の秘密に触れれば、良くない考えも浮かぶもの・・・。
皆様、やはり相談事はきちんと守秘義務を持ったカウンセラーのところへ行きましょう!!


バラエティに富んだ、ステキな一冊であると思います。
私の中ですっかり有栖=窪田正孝、火村=斎藤工のイメージが定着していました。

「怪しい店」有栖川有栖 角川文庫
満足度★★★★★


最新の画像もっと見る

コメントを投稿