映画と本の『たんぽぽ館』

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静かな情熱 エミリ・ディキンスン

2024年10月16日 | 映画(さ行)

深い思索の中で生きた1人の女性

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1800年代を生きたアメリカの女性詩人、エミリ・ディキンスンの生涯を描きます。
正直、私は存じませんでしたが・・・。

エミリ・ディキンスンは、北米の小さな屋敷から出ることなく、
生前にわずか10編ほどの詩を発表したのみで、無名のまま生涯を終えました。
しかしその死後に、1800編もの詩が発見され、
繊細な感性と深い思索の中で綴られた詩の数々は、
後世の芸術家に大きな影響を与えたのです。

本作中のエミリは、気性が荒く、偏屈。
人と気安く打ち解けるような人物ではありません。
若い頃に寄宿学校へ入っていたのですが、
自分の信条と合わずに、戻って来てしまいました。
以後、ほとんど実家に籠もりきり。
思いを寄せる人は既婚者で、もちろん自分の思いを伝えることはしない。
逆に、彼女に思いを寄せる相手もいたのに(希少価値!)
そちらには手ひどく冷たい仕打ち。

ただ夜な夜な詩を書くときのみが彼女の安らぎの時。
しかしその詩は、当時「女が書く詩なんて・・・」と編集者に軽んじられて、
まともな評価を受けることができなかった訳です。

ただ1人の親友は結婚で離れて行ってしまい、
彼女の詩作を許してくれた父も亡くなり・・・、
いよいよ孤独の淵に立つ彼女を、さらにまた難病が襲います。

当時としては結婚もせず実家にいて、
自分のやりたいこと、詩を書くことだけをして生きていたというのは、
女性の生き方としてはまことに希有でありましょう。
つまり実家は並以上には裕福であったということで、
病気のことを除けば実は幸福であったのかも知れません。

彼女を見守る妹や兄、兄嫁もいて、
これで孤独だなどと言ったらバチが当たる。

逆に言うと、こういう境遇だからこそできた多数の詩編。
人生のままならなさは、そのままならなさから生まれる何かもある、
ということですね。

ちょっと退屈な作品かな・・・などと思いながら見ていたのですが、
今思えば、女性の生き方を考える上では意義深い作品のようです。

 

<Amazon prime videoにて>

「静かな情熱 エミリ・ディキンスン」

2016年/イギリス/125分

監督・脚本:テレンス・デイビス

出演:シンシア・ミクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン、
   ジョディ・メイ、ダンカン・ダフ

頑迷度★★★★☆

満足度★★★☆☆



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