深い思索の中で生きた1人の女性
* * * * * * * * * * * *
1800年代を生きたアメリカの女性詩人、エミリ・ディキンスンの生涯を描きます。
正直、私は存じませんでしたが・・・。
エミリ・ディキンスンは、北米の小さな屋敷から出ることなく、
生前にわずか10編ほどの詩を発表したのみで、無名のまま生涯を終えました。
しかしその死後に、1800編もの詩が発見され、
繊細な感性と深い思索の中で綴られた詩の数々は、
後世の芸術家に大きな影響を与えたのです。
本作中のエミリは、気性が荒く、偏屈。
人と気安く打ち解けるような人物ではありません。
若い頃に寄宿学校へ入っていたのですが、
自分の信条と合わずに、戻って来てしまいました。
以後、ほとんど実家に籠もりきり。
思いを寄せる人は既婚者で、もちろん自分の思いを伝えることはしない。
逆に、彼女に思いを寄せる相手もいたのに(希少価値!)
そちらには手ひどく冷たい仕打ち。
ただ夜な夜な詩を書くときのみが彼女の安らぎの時。
しかしその詩は、当時「女が書く詩なんて・・・」と編集者に軽んじられて、
まともな評価を受けることができなかった訳です。
ただ1人の親友は結婚で離れて行ってしまい、
彼女の詩作を許してくれた父も亡くなり・・・、
いよいよ孤独の淵に立つ彼女を、さらにまた難病が襲います。
当時としては結婚もせず実家にいて、
自分のやりたいこと、詩を書くことだけをして生きていたというのは、
女性の生き方としてはまことに希有でありましょう。
つまり実家は並以上には裕福であったということで、
病気のことを除けば実は幸福であったのかも知れません。
彼女を見守る妹や兄、兄嫁もいて、
これで孤独だなどと言ったらバチが当たる。
逆に言うと、こういう境遇だからこそできた多数の詩編。
人生のままならなさは、そのままならなさから生まれる何かもある、
ということですね。
ちょっと退屈な作品かな・・・などと思いながら見ていたのですが、
今思えば、女性の生き方を考える上では意義深い作品のようです。
<Amazon prime videoにて>
「静かな情熱 エミリ・ディキンスン」
2016年/イギリス/125分
監督・脚本:テレンス・デイビス
出演:シンシア・ミクソン、ジェニファー・イーリー、キース・キャラダイン、
ジョディ・メイ、ダンカン・ダフ
頑迷度★★★★☆
満足度★★★☆☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます