誰が描いても同じ?
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荻上直子さん監督作品は多分ほとんど見ているので、本作もその流れで見ました。
もちろん、主演が堂本剛さんというのも大きなポイント。
美大を卒業したもののアートで成功できず、
人気現代芸術家のアシスタントとして働く沢田(堂本剛)。
とうに夢も希望も忘れはて、言われたことを淡々とこなすだけの日々を送っています。
ある日、自転車の事故で腕に怪我をした沢田は、あっさりと職を失うことに。
やむなくコンビニでバイトを始めた沢田。
ある日、部屋に帰ると床に一匹の蟻がいて、その蟻に導かれるようにして思わず描いた○。
とにかくお金になれば良いと、骨董品屋で適当に「○」にサインを入れた絵(?)を売ったのですが、
それが知らぬ間にSNSで拡散。
沢田は本人の預かり知らぬ間に、正体不明の「さわだ」として、
一躍有名人になっていたのでした。
そんなところに、沢田のことを探し当てた者が訪ねて来て、
一枚100万円で買うので、もっと○を描いてほしいと言います。
さてところが、そう言われて意識すると、あの時のような○が描けない・・・。
どんどんユニークな展開になっていきます。
沢田の○は一人歩きして、平和の象徴だとか、無我の境地だとか、
有識者が適当なことを言うのでさらに箔がついていく。
芸術の評価なんてそんなものかも知れません。
でも確かに、蟻の歩みにつられてまったく無心に描いた○は、
何やら美しいのですよね。
芸術の本質に迫りながらも、そう重くはない。
さらりと軽く見られるところが魅力です。
さて、そこに沢田の隣室の住人登場。
こちらは漫画家を目指す横山(綾野剛)ですが、完全にいかれたヤツ。
それを綾野剛さんがやるからもう、これは無敵です。
この2人のやりとりを永遠に見ていたくなります。
あと、沢田の元同僚、格差社会にもの申そうという矢島(吉岡里帆)、
正体不明の謎のおじさん(柄本明)、
コンビニの先輩バイトくん(森崎ウィン)等々、
ユニークな人物が登場。
沢田と特別親しくなるというほどでもないのだけれど、
いろいろな考え方を示唆する大事な人々。
人と仲良くしようと努めているわけでもないのに、
決して孤独ではない沢田の生活環境がなんか良いなあと思います。
そして、そんな中で生きる方向性を見出していく、というのもまた、よきかな。
私は好きです。こういうの。
<TOHOシネマズ札幌にて>
「まる」
2024年/日本/117分
監督・脚本:荻上直子
出演:堂本剛、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、吉田鋼太郎、柄本明
不可思議度★★★☆☆
芸術を考える度★★★★☆
満足度★★★★★
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