映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ウィンター・ビート」サラ・パレツキー 

2011年11月25日 | 本(その他)
ヴィクの“体当たり捜査”にドッキリ!!

ウィンター・ビート (ハヤカワ・ミステリ文庫)))
山本 やよい
早川書房


           * * * * * * * *

前作「ミッドナイト・ララバイ」から早くも1年ほどでこの巻が出ました。
女性探偵、V・I・ウォーショースキー(通称ヴィク)のストーリー。
前作では夏だったシカゴは、そのまま秋が来て冬に突入。
そこで、前作でも登場した従妹のペトラやヴィクの隣人ジェイクが登場。
記憶もまだ新しいところで、すんなりと入りやすくなっています。


事件は、ペトラのバイト先であるナイトクラブで起こります。
そこでは前衛的なボディペインティングのショーが行われているのですが、
その店を訪れたヴィクは、なにやら不穏な空気を感じるのです。
不安は的中。
常連客の女性が店の裏で射殺され、
同じく常連のイラクからの帰還兵である若者が容疑者として逮捕されます。
息子の無実を信じる父親からの依頼で、ヴィクは捜査に乗り出しますが・・・。


いつものことながら、きっかけは小さなことでありながら、
実は巨大な敵に対峙することになり、
自らを危険にさらすことになってしまう・・・というのがパターン。
そうではあっても後には引けない。
依頼人を守るため、大企業の巨悪を暴くため、ヴィクは突き進む!!


この炎のように熱くて無鉄砲なヴィクも、
実はまもなく50歳になるという設定です。
第一作の頃は30代だったと思います。
さすがに疲れやすくなったようには思いますが、それにしてもタフです。
特に今作、ラスト付近であっと驚くシーンがあるのです。
うーん、この年でこれができるというのは・・・。
常に体を鍛えているのでありましょう。
少なくともメタボとは無縁ですね。
いやほんと、すごい・・・。


現代アメリカが舞台ですから、イラクとの戦争の話題なども避けられません。
ここに登場するチャドという若者は、
戦地から帰還したものの、PTSDで心を病んでいます。
そしてまた、この戦争を食い物にした企業の陰謀が暴露されます。
ヴィクシリーズの第一作「サマータイム・ブルース」が描かれたのは1982年。
とすればこのシリーズを順に読んでいけば、アメリカの世相の移り変わりもよくわかりますね。
今作で好きなのは、ヴィクを助けてくれるメンバーの勢揃い。
皆犯罪などとは縁の遠い、ドシロウトですが、
なんだか暖かくていい持ち味があり、大好きです。
ちょっとわがままですが、元気いっぱいの従妹のペトラ。
いつもヴィクを心配し、あれこれ世話を焼く隣人のミスタ・コントレーラス。
今回頼りになったのは、チャドの友人ティムとマーティ。
そして、愛すべき二匹のレトリーバー、ミッチとペピー! 
&ヴィクの心のオアシス、ジェイク。
彼とはなるべく長続きしてほしいです・・・。


さて、ところでこのヴィクが、この事件の後かなり落ち込むのです。
それは事件が手放しで喜べるようなハッピーエンドにはならなかったこともあるのですが、
ペトラの言葉。
「ヴィクがすっごくタフでクールなのを見て、
あたしがヴィクの年になったとき、そんな風になりたくないって思ったの。
つまりね、ヴィクは一人で暮らしてて、
とっても強くて、暴力なんかへっちゃらって感じでしょ」

実は平凡な結婚生活を意識して避けているわけではないヴィクにとっては、
そのように言われるのは、ちょっぴりつらいんですよね。
そういうリアルな女としての感情が見えるあたりが、結構好きです。
でも、ヴィクはやっぱり気高い勇気を持った女性。
そううでなくては。
つかの間の休息の後は、また元気になってまい進してほしい。
次作、待ってます。


「ウィンター・ビート」サラ・パレツキー ハヤカワ文庫
満足度★★★★☆


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