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「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン

2022年01月25日 | 本(ミステリ)

危険すぎる自由研究

 

 

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イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と並行して
“自由研究で得られる資格(EPQ)"に取り組んでいた。
題材は5年前の少女失踪事件。
交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が少女を殺害して自殺したと発表した。
少年と親交があったピップは彼の無実を証明するため、
自由研究を隠れ蓑に真相を探る。
調査と推理で次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。
ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、
イギリスで大ベストセラーとなった謎解き青春ミステリ!

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本国英国はもちろん、日本でも評価の高い本作。
楽しみに手に取りました。

イギリスの小さな街に住むピップは、「自由研究」の題材として
この町で5年前に起きた少女失踪事件に取り組むことにします。

自由研究といっても夏休みの宿題のアレではなくて、
「EPQ」という資格を得るためのものなんですね。
まず、こういう内容で研究を行いたいという申請を学校に出して、
承認を得てから始めるもののようです。

5年前の事件とは、当時美人で人気のあったジェイソン・ベルという少女が突然に失踪。
その数日後に彼女のボーイフレンドだったサリル・シンが
「僕がやった」というメッセージを残して自殺。
ということで、ジェイソン・ベルの遺体が見つかったわけでもないのに、
すっかり死んだことになり、サリルがその殺人犯という認識が
町中に広がってしまったのです。

そのために今もサリルの家族は町の人々から冷たい視線をあびせられ、
ほとんど村八分のような状態になっているのです。

ピップは当時サリルとは顔見知り、というか
むしろ彼女にとっては、いじめから救ってくれたヒーロー的な存在であったため、
今も彼が殺人犯だったとはとても信じられないのです。
だからこそ、本当は5年前に何があったのかを突き止めようとしたわけです。
この調査に当たっては、サリルの弟・ラヴィの協力を仰ぐことになります。

 

ピップは聡明で行動力に富んだ明るい少女。
この暗いトーンの事件に救いをもたらしています。
そしてラヴィも、町では差別待遇を受けてはいますが、
本来はユーモアに満ちた明るい性格なのです。
ピップのことを「部長刑事」と呼び、何かと応援、援助をしてくれます。
この二人の魅力が本作の魅力の半分くらいを占めているかもしれません。

でもそれにしても、この事件は確かに「自由研究」には向かない。
まさしく、サリルは犯人ではなく、
真犯人は素知らぬ顔をしてすぐ近くにいるわけですから・・・。

ピップは「調査をやめろ」という脅迫を受けることになるし、
真実を求めようとする余り、麻薬の売人の家に単身乗り込んだり、
とある家に不法侵入をしたり・・・。
全くハラハラさせられます。

 

そして、ようやく突き止めた真実のあとに、また別の秘密が現れたりする。
とにかくノンストップで読みふけりたくなってしまう作品であります。

 

「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン 服部京子訳 創元推理文庫

満足度★★★★★

 

 



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