いざ、イギリス縦断を徒歩で!
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レイチェル・ジョイスによる小説「ハロルド・フライの思いも寄らない巡礼の旅」の映画化。
私、本作のざっとしたあらすじを見て、あれ?前に見たことある?と思ったのです。
一人の老人がイギリス縦断の旅をする。
私が2年前に見たそれは「君を想い、バスに乗る」で、移動は主に路線バス。
妻を亡くした男性がイギリスの北から南へと旅をします。
でも、それとは違う本作は・・・
ビール会社を定年退職し、妻モーリーン(ペネロープ・ウィルトン)と平穏な日々を過ごしていた
ハロルド・フライ(ジム・ブロードベント)。
そんな彼の元に一通の手紙が届きます。
それはかつてビール工場で一緒に働いていた同僚、クイーニーからのもの。
ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ尽きるという、お別れの手紙でした。
近所のポストから返事を出そうと家を出たハロルド。
しかし途中で思い立って、800キロ離れた北の地にいるクイーニーの元を目指して、
そのまま手ぶらで歩き始めてしまいます。
ふだんろくに歩いたこともないハロルド。
あっという間に、足はボロボロ、体もヘロヘロ。
そんな時には過去のイヤな思いが蘇って、気持ちまでもが落ち込んでしまう・・・。
でも、救いの手を差し伸べてくれる人もいるものです。
そしてそんな彼のひとり旅のことがSNSで広まり、
道中を同行しようという人々が集まったりもするのですが・・・。
ということで、老人がイギリスを南から北へ徒歩で旅するロードムービー。
さて、でも本作は、取り残された妻の物語でもあるのです。
妻・モーリーンはいきなり手紙をよこしたクイーニーという女性のことを知りません。
夫はなんだか悩みながら返事を書いていて、そして手紙をポストに出しに行ったきり帰ってこない。
一体夫とどういう関係の人なのかと、疑ってしまいますよね。
そもそも、この夫婦、あまりしっくりいっていなかったようなのです。
電話で「クイーニーの所まで歩いて行く」と告げたきり帰ってこない夫。
もう自分のところには帰ってこないのではないか・・・。
1人家に取り残された彼女は、これまでの夫とのよそよそしい関係を後悔しはじめるのです・・・。
そして、2人がこのような冷えた関係になってしまった原因がありました。
それは2人のひとり息子のこと・・・。
長くつらい旅は、自分と家族の過去と向き合う旅。
それは1人残された妻にとっても同様だったのです。
感慨深い作品。
<シアターキノにて>
「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」
2022年/イギリス/108分
監督:へティ・マグドナルド
出演:ジム・ブロードベント、ペネロープ・ウィルトン、リンダ・バセット、アール・ケイブ
家族愛度★★★★☆
ロードムービー度★★★★☆
満足度★★★★★
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