映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

よこがお

2019年08月26日 | 映画(や行)

見えていない「半面」

* * * * * * * * * *


訪問介護師の市子(筒井真理子)は、周囲からの信頼も厚く、
充実した毎日を送っていました。
介護に通っている大石家では、その家の長女・基子(市川実日子)に
介護福祉士になるための勉強を見てやったりもしています。
ある日、基子の妹・サキ(小川未祐)が失踪。
一週間後にサキは無事に戻りましたが、
誘拐犯として逮捕されたのはなんと、市子の甥・辰男だったのです。
基子はそのことを知り、
「市子さんにはなんの責任もないのだから、家の他の者には何も言う必要はない」
と言っていたのですが、
まもなく市子が結婚すると聞いてから、態度が一変していきます。
それと同時に市子は苦境に立たされ、これまで築き上げた生活も崩壊してゆく・・・。

なんとも、グサグサと胸に刺さり込んでくる作品です。
タイトルの「よこがお」について考える。
つまりは、人の横顔というのは半面だけ見えて残りの半面が見えていない。
そんなふうに、人は人の一面だけを見て、もう片方の別な面を見落としている・・・、
あるいはあえて隠している。
そんなことを表しているようです。

作品は、市子が「リサ」と名乗り、ある美容師の青年(池松壮亮)につきまとい、
さり気なさを装いながら、絡め取ってしまおうという意図を感じさせるシーンから始まります。
そしてそれ以前の出来事と思われるシーン(市子が大石家に通うシーン)と、
交互に語られていくのです。
すると、どうやらこの青年は基子の恋人らしい事がわかってきます。
市子と基子の関係がどうしてこんなふうになってしまうのか・・・?と、
謎を秘めながら、その真相を描いていくわけです。

物語の最大の鍵は基子の心にあるわけですね。
彼女には恋人がいながらも、市子への信頼や尊敬の念が
いつしかそれ以上のものになっていたようなのです。
しかしそんな気持ちとは裏腹に、湧き上がる負の思いもある。
それこそが彼女のもう半面なのでした。
しかし、市子もまた自身の生活の崩壊のために、
負の半面が浮かび上がってくる。

見ごたえのある作品でした。

<シアターキノにて>
「よこがお」
2019年/日本・フランス/111分
監督・脚本:深田晃司
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐
負の半面度★★★★★
満足度★★★★☆



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