映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

雪の花 ともに在りて

2025年01月29日 | 映画(や行)

医師としての使命に燃えて

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江戸時代末期。

疱瘡(天然痘)は、有効な治療法がなく多くの命を奪ってきました。
福井藩の町医者、笠原良策(松坂桃李)は、
疱瘡の流行の折、なすすべもなく何もできなかったことを悔しく思っていたのです。
ある時、疱瘡に有効な「種痘」という予防法が異国から伝わったことを知ります。

笠原は、京都の蘭方医・日野(役所広司)に教えを請い、
私財をなげうって必要な種痘の苗を福井に持ち込みます。
しかし、天然痘の膿をあえて体内に植え込むという種痘の普及には、様々な困難が・・・。

天然痘の予防法というのはまさに世界を変える画期的なものですね。
でも、それが人々の間で当たり前に受け入れられるまでには、
様々な困難があったことは想像に難くありません。

この時代、種痘はすでにヨーロッパや隣国・唐で普及していたのですが、
鎖国のため日本に入るのが遅れていたわけです。
外国との窓口は長崎のみ。
種痘の苗を入手するにも、まず幕府の許可が必要だし、
実際の輸入と、国内移動にも困難が山ほど・・・。
なにしろ“苗”は生ものなので、普通に物品を運搬するのとは別なのです。

それにしても、役人の事なかれ主義とやる気のなさが第一の障害とはなんともはや・・・。

それでもようやく、福井まで苗を持ち込むことに成功。
しかし今度は、誰も接種しようとしない。
無理解、というよりほとんど恐怖なのは分かる気もしますが。

これらの困難に立ち向かう笠原の物語。
その強い意志こそが美しい。

妻・千穂(芳根京子)は、ただ貞淑な妻ではなくて、
ちょっと強くてカワイイところも気に入りました。

全体を通すと、あまりにも正しくて良作なのが逆に物足りなかったりする・・・。

 

<シネマフロンティアにて>

「雪の花 ともに在りて」

2024年/日本/117分

監督:小泉尭史

原作:吉村昭

出演:松坂桃李、芳根京子、三浦貴大、宇野祥平、坂東龍汰、吉岡秀隆、役所広司

困難度★★★★☆

達成度★★★★☆

満足度★★★☆☆



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