セピア色の彼方
* * * * * * * * * * * *
大正時代の京都・東京を舞台として、実在の女優・長谷川泰子、詩人・中原中也、
そして文芸評論家・小林秀雄、男女3人の愛と青春を描く物語です。
京都。
20歳の新進女優・長谷川泰子(広瀬すず)は、17歳の学生・中原中也(木戸大聖)と出会い、
互いに虚勢を張りながらも惹かれ合い、一緒に暮らし始めます。
やがて2人は東京に移り住み、2人の家に中也の友人、小林秀雄(岡田将生)が出入りするようになります。
小林は詩人・中也の才能を認め、中也も小林に一目置かれることを誇りに思う。
互いを理解した2人の交友には割り込む隙がないようにも思え、
泰子は置き去りにされたような思いも。
しかしやがて小林も泰子の魅力に取り込まれていき、
複雑でいびつな三角関係となっていきます・・・。
3人それぞれ強烈な個性を持っていて、プライドが高い。
でもそれぞれが互いに持つリスペクトも愛も本物で、
でもムキになって争うほどばかでもない。
手が届かなければやせ我慢で、興味ないフリ。
しかしそのことがまた互いを傷つけ合う。
心のベクトルがぐちゃぐちゃにもつれてゆく、切ない物語。
大正ロマンのその雰囲気がスバラシイです。
特に、広瀬すずさんがその存在感を放っています。
「海街diary」の頃から見ている広瀬すずさんが、
こんな役をこなすまでに女優として成長したのだなあ・・・と、感慨にふけってしまいました。
映画女優(当時まだ無声映画ですが)という役柄のためか、
見たことのない着物の着こなし方をしていたのが、ステキでした!
和装であれ、洋装であれ、この時代のファッションはいいですよね。
中原中也の詩は、おそらく女性なら少女時代にちょっぴり憧れてしまう時期があるのではないかな?
かくいう私もそうでして・・・。
30歳で夭折。
であるからこそ、その才能が惜しまれてしまうのですね。
でも、中原中也自身のことについてはほとんど知らなかったので、
こんな三角関係があったなどということはこの度始めて知りました。
小林秀雄氏は1983年80歳没。
長谷川泰子さんは1993年88歳没。
お二人とも近年(と思うのは私のような年寄りだけかもだけど)まで生きていて、
中原中也だけがセピア色の歴史の彼方・・・という印象ですね。
<TOHOシネマズ札幌にて>
「ゆきてかへらぬ」
2025年/日本/128分
監督:根岸吉太郎
脚本:田中陽造
出演:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、柄本佑
大正ロマン度★★★★☆
三角関係度★★★★★
満足度★★★★☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます