生きにくい事情のある2人
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PMS(月経前症候群)のため、月に一度イライラが抑えられなくなり、
人に攻撃的になってしまう藤沢(上白石萌音)。
ある時、会社の同僚、山添(松村北斗)に対して、
怒りを爆発させてしまいます。
山添は転職してきたばかりなのに、
炭酸水を飲んでばかりでいかにもやる気がなさそうなのです。
実は、そんな山添はパニック障害を抱えていて、
そのため転職せざるを得なくなってここに来て、
生きがいも気力も失ってしまっているのでした。
2人は互いにそのことを打ち明けあい、
しだいに自分の症状は改善できなくても、相手を助けることはできるのではないか
と考えるようになります。
恋人でも友達でもない、いわば同士の2人。
生きにくさを抱える人々がほんの少し寄り添って支え合う。
そういうドラマです。
私も実はPMSのことはよくわかっていませんでした。
症状や程度はもちろん人それぞれなのでしょうが、
この藤沢さんのようなケースもあるということですね。
確かに、普段控えめで大人しい人がある時突然切れて怒鳴り始めたら
大抵は引いてしまって、変な人というレッテルを貼られてしまう。
藤沢さんもそのためこれまでずいぶん職を変えているのです。
2人のいるこの職場は子供向けの光学機器を組み立てるような
小さな会社なのですがアットホーム。
皆は2人のこの症状のことを聞いてはいないのですが、
2人の症状が出たときにも実にさりげなく対処して、
その後もわだかまりがありません。
実はこっそり聞かされていた・・・?と思うほどなのですが、
こんな風に、いろいろな人がいていろいろなことがあるよねえ・・・と、
さらりと受け止められたらいいですね・・・。
それであれば逆にカミングアウトももっと気安くできるのかも知れません。
そしてまた、2人が仕事でプラネタリウムの解説文を考えていくという
サイドストーリーがいいのです。
果てしない宇宙のことと、このちっぽけな地球上の人々の暮らしのこと。
そんな中でささやかに生きていることの意味を思ってしまいます。
ここで2人には特に恋愛感情は芽生えません。
朝ドラ「カムカムエブリバディ」では夫婦を演じていたお二人。
でも本作は、男女に関わりなく、人と人としてわかり合い支え合うことを
あくまでも伝えたかったのでしょう。
良き物語でした。
松村北斗さんは、先の「キリエのうた」もそうでしたが、
良い役に就きますよねえ。
実は私は、目黒蓮さんにもこういう役をしてほしいのです。
彼の力量を十分に発揮できる作品に・・・。
<シネマフロンティアにて>
「夜明けのすべて」
2024年/日本/119分
監督:三宅唱
原作:瀬尾まいこ
出演:松村北斗、上白石萌音、渋川清彦、芋生悠、りょう、光石研
生きにくさ★★★★☆
満足度★★★★★
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