北極星が輝くところ
* * * * * * * *
三浦しをんさんの恋愛短編集。
人が人を好きになるとはどういうことなのか。
様々な人を思う気持ちの形がこの本に凝縮されています。
私が好きだったのは・・・
「森を歩く」
同棲中の"うはね"と"捨松"。
(なんてユニークなネーミング!)
捨松は風来坊で、ふらりと何日もいなくなったと思えばまたふらりと戻ってくる。
そんな彼が婚姻届けを「これ、書いて出しといて」と差し出して、
また消えてしまったりする。
冗談じゃない。
こんな何をやっているかも解らないヤツと結婚なんかするもんか。
実はうはねは、彼が麻薬の売人か何かではないかと疑っている。
ある日、誰かの電話を受けてまたふらりと出ていってしまった捨松の後を、
うはねは尾行するのです。
すると思いがけず電車はどんどん田舎の方へ向かい、
無人駅を降りてからは山に向かって歩き始める。
・・・さて、彼の目的は?
長く一緒に住んでいながら、相手の職業もよくわかっていなかった、うはね。
でもこの冒険で「でも、まあいいか。」とうはねは思うのです。
「この先どうなるかなんてだれにもわからないんだから、
捨松と行けるところまでは一緒に、
道もない森のなかを進んでみるのもいいだろう。」
ある人が大事にしていることを共感できること。
結婚という共同生活ではそれが一番大事なことかもしれません。
「優雅な生活」
こちらも同棲中の二人。
さよりと俊明。
さよりは職場仲間に影響され、玄米食やヨガなど「ロハス的」な生活を目指したいと思う。
俊明は全く乗り気ではなかったのですが、
ある日感情が爆発したサヨリの言葉に考えを改め、
以後は彼の方が積極的にロハス生活に取り組んでいく。
それがまた半端ではない。
暖房なし。
朝は乾布摩擦。
肉類は食べず、無農薬野菜に無添加調味料・・・。
あまりにも極端なので嫌になってきたさよりだけれど、
自分からいい出したことなので止めてとも言い出せず・・・。
これは別にロハス生活の勧めでも、それはダメという話しでもないのです。
ただ二人で共に暮らし、
毎日が生活の中に埋没していくことはちっとも悪いことでも怖いことでもない、
という気づきの物語なのですね。
この二作とも、男性キャラがすごくいいです。
三浦しをん作品には少女漫画に登場しそうな男子像が多くあるんですよね。
そういうツボを押さえているので、私は実に楽しく読ませていただいています。
ところで、こういう男子像を男性が見てどうなのかとは少し気になるところ。
「こんな奴、いるわけねえよ」なのか、
「うん、あるある、そういうこと・・・」なのか、
是非聞いてみたいところです。
よく少年漫画のオンナノコ像にも、
あまりにも男性から見ての理想像というのが見え見えのことがありますよねえ・・・。
それから、以前別のアンソロジーの中に収録されていた
「春太の毎日」がここにも収録されていますが、
これもやはりいい。
それから冒頭「永遠に完成しない二通の手紙」と
巻末「永遠につづく手紙の最初の一文」は
同じ登場人物、岡田と寺島のストーリーで、この配置もオシャレ。
いやはや、「恋愛短編集」の始めと終わりがこれですかい。
いえ。
別に意義はありませんが。
さてところでこの本の表題「きみはポラリス」という肝心の短編がないじゃありませんか。
このことは解説の中村うさぎさんもふれていますが、
「冬の一等星」という作品の中に、その秘密が隠されています。
ある少女が車の中で寝込んでいるときに、
それと知らずに車を盗んでしまった青年がいた。
二人は不思議な共感に結ばれて、しばらくそのまま同行するのですが・・・・・・・・。
八歳のそのときの経験が胸の中で一等星のように輝き続けている。
そんな「私」の物語。
はい、これはとてもいい作品です。
「きみはポラリス」三浦しをん 新潮文庫
満足度★★★★☆
きみはポラリス (新潮文庫) | |
三浦 しをん | |
新潮社 |
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三浦しをんさんの恋愛短編集。
人が人を好きになるとはどういうことなのか。
様々な人を思う気持ちの形がこの本に凝縮されています。
私が好きだったのは・・・
「森を歩く」
同棲中の"うはね"と"捨松"。
(なんてユニークなネーミング!)
捨松は風来坊で、ふらりと何日もいなくなったと思えばまたふらりと戻ってくる。
そんな彼が婚姻届けを「これ、書いて出しといて」と差し出して、
また消えてしまったりする。
冗談じゃない。
こんな何をやっているかも解らないヤツと結婚なんかするもんか。
実はうはねは、彼が麻薬の売人か何かではないかと疑っている。
ある日、誰かの電話を受けてまたふらりと出ていってしまった捨松の後を、
うはねは尾行するのです。
すると思いがけず電車はどんどん田舎の方へ向かい、
無人駅を降りてからは山に向かって歩き始める。
・・・さて、彼の目的は?
長く一緒に住んでいながら、相手の職業もよくわかっていなかった、うはね。
でもこの冒険で「でも、まあいいか。」とうはねは思うのです。
「この先どうなるかなんてだれにもわからないんだから、
捨松と行けるところまでは一緒に、
道もない森のなかを進んでみるのもいいだろう。」
ある人が大事にしていることを共感できること。
結婚という共同生活ではそれが一番大事なことかもしれません。
「優雅な生活」
こちらも同棲中の二人。
さよりと俊明。
さよりは職場仲間に影響され、玄米食やヨガなど「ロハス的」な生活を目指したいと思う。
俊明は全く乗り気ではなかったのですが、
ある日感情が爆発したサヨリの言葉に考えを改め、
以後は彼の方が積極的にロハス生活に取り組んでいく。
それがまた半端ではない。
暖房なし。
朝は乾布摩擦。
肉類は食べず、無農薬野菜に無添加調味料・・・。
あまりにも極端なので嫌になってきたさよりだけれど、
自分からいい出したことなので止めてとも言い出せず・・・。
これは別にロハス生活の勧めでも、それはダメという話しでもないのです。
ただ二人で共に暮らし、
毎日が生活の中に埋没していくことはちっとも悪いことでも怖いことでもない、
という気づきの物語なのですね。
この二作とも、男性キャラがすごくいいです。
三浦しをん作品には少女漫画に登場しそうな男子像が多くあるんですよね。
そういうツボを押さえているので、私は実に楽しく読ませていただいています。
ところで、こういう男子像を男性が見てどうなのかとは少し気になるところ。
「こんな奴、いるわけねえよ」なのか、
「うん、あるある、そういうこと・・・」なのか、
是非聞いてみたいところです。
よく少年漫画のオンナノコ像にも、
あまりにも男性から見ての理想像というのが見え見えのことがありますよねえ・・・。
それから、以前別のアンソロジーの中に収録されていた
「春太の毎日」がここにも収録されていますが、
これもやはりいい。
それから冒頭「永遠に完成しない二通の手紙」と
巻末「永遠につづく手紙の最初の一文」は
同じ登場人物、岡田と寺島のストーリーで、この配置もオシャレ。
いやはや、「恋愛短編集」の始めと終わりがこれですかい。
いえ。
別に意義はありませんが。
さてところでこの本の表題「きみはポラリス」という肝心の短編がないじゃありませんか。
このことは解説の中村うさぎさんもふれていますが、
「冬の一等星」という作品の中に、その秘密が隠されています。
ある少女が車の中で寝込んでいるときに、
それと知らずに車を盗んでしまった青年がいた。
二人は不思議な共感に結ばれて、しばらくそのまま同行するのですが・・・・・・・・。
八歳のそのときの経験が胸の中で一等星のように輝き続けている。
そんな「私」の物語。
はい、これはとてもいい作品です。
「きみはポラリス」三浦しをん 新潮文庫
満足度★★★★☆
自然の前に、人は無力です。物理的だけでなく、精神的にもこんなに大きなダメージを受けるのですね。
本屋さんが再開したら、この本を探してみます。「人を思う気持ち」を探しに。
仙台にお住まいだったんですか!!
でも、ご無事で何よりでした。
テレビのニュースなどを見るにつけ、つい共に涙ぐんだり、何もできない自分を歯がゆく思ったり、そういう毎日でした。
ライフラインが通じたということでしたら、少しは気持ちも楽になりますね。
まずは「自分自身に元気をつけよう」と、ある人は言っています。
(明日24日の記事を見てくださいね。)
どうか、まずは楽しい本でも読んでリラックスしてくださいね。
日常の生活ができるというのはとても幸せなことなのだと、つくづく思うこのごろです。
不満はあっても安易に同棲を解消せず、互いの距離を縮めようと努力するところが見られて好ましく読みました。
捨松の職業は、実は「神去」に近いものがありますね。
一年半前に読んだもので、通常短編なら、なおさらストーなど忘れ去っていくものですが、こうしてちょっぴりストーリーを書き残しておくと、思い出せるものだなあ・・・と、自分で感心してしまいました。