いざ、ロシア文学の世界へ
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青春小説にして異色のロシア文学入門!
「この授業では、あなたという読者を主体とし、
ロシア文学を素材として体験することによって、社会とは、愛とは何かを考えます」
山を思わせる初老の教授が、学生たちをいっぷう変わった「体験型」の授業へといざなう。
小説を読み出すと没頭して周りが見えなくなる湯浦葵(ゆうら・あおい)、
中性的でミステリアス、洞察力の光る新名翠(にいな・みどり)、
発言に躊躇のない天才型の入谷陸(いりや・りく)。
「ユーラ、ニーナ、イリヤ」と呼ばれる三人が参加する授業で取り上げられるのは、
ゴーゴリ『ネフスキイ大通り』、ドストエフスキー『白夜』、トルストイ『復活』など
才能が花開いた19世紀のロシア文学だ。
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ロシア文学者、奈倉有里さんの最新刊。
すぐに読みました!
名高い19世紀のロシア文学者について、その人、その作品等について
述べられているのですが、それが「小説」の形で表わされているというユニークな作品です。
小説愛が強く、小説を読み出すと没頭して周りが見えなくなってしまう学生・湯浦葵が、
枚下教授によるロシア文学の授業を記録するという体裁になっています。
湯浦と同じ授業を受ける友人に、中性的で洞察力のある新名翠、発言に躊躇のない入谷陸。
すなわち、ユーラ、ニーナ、イリヤという
ロシアでもそのまま親しみを持って受け入れられそうな名前の3人。
(実は、著者・奈倉有里さんもロシア留学時には「ユーリ」と
親しみを込めて呼ばれていたそうです。)
枚下先生はすなわちマイスターということなのですが、まるで魔法使いのよう・・・。
というのも、なぜかこの授業の時に湯浦くんは、
現実を離れて小説の世界に引き込まれて行き、小説世界を体感してしまうのです。
しかもそれは、どうやら湯浦くんだけのことではなく、他の皆もそうなっているらしい・・・。
これを称して「体験型」授業とは・・・!
授業で取り上げられるのは、プーシキン、ドストエフスキー、ツルゲーネフ、
チェーホフ、ゴーリキー、トルストイ、等々。
正直言うと、私は先日トルストイの「復活」を読んだくらいで、
ロシア文学については全く知らないのですが、
そんな私でもこれらの名前だけは聞いたことがある。
今さらですが知らないということの壁の厚さに、呆然としてしまいますね。
でも本作を読んで、かなり興味が湧いてきて、
そしてこれまでの「難しい」という勝手な思い込みも薄れて来ましたので、
ぼちぼちと読んでみたいと思いました。
むしろ未知の世界に誘っていただいたようで、感謝です。
それと本作のラストは、これも先日読んだ「ソフィーの世界」と似ている気がします。
作中の人物とそれを操るもの(つまり作者)の関係。
そこがまた興味深い。
「ロシア文学の教室」奈倉有里 文春新書
満足度★★★★☆
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