正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説
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大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――
戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた
大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。
だが夫は軍医として出征することになり、
一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。
戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。
危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を?
正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!
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芦辺拓さん作品、私は久しぶりかもです。
著者は本作をこう説明しています。
「正調お屋敷一家一族連続殺人本格探偵小説」
そう、いかにもなそういうミステリをたまに読みたくなってしまう、
もと本格ミステリファンなのでありました。
本作の舞台は昭和18年、大阪の船場という商人文化の中心地にある大店に
中久世美禰子が嫁いで来るあたりから。
でも冒頭に、不可思議な1人の青年の消失事件が語られています。
実はこのことが後々の事件の大きなもととなっているのですが・・・。
一家の主の不可解な縊死事件。
そして長女の流血事件。
主の妻の奇怪な溺死事件。
そして、自称名探偵の哀れな殺人事件・・・。
そうなんですよ、本作に、「名探偵」が登場するのですが、
まったく頼りにならないあげくに、殺されてしまうという。
しかも昭和20年の大阪大空襲で、屋敷も何もかもすっかり焼けてしまい、
証拠もあとかたなく失われてしまうのです。
しかし本当の「名探偵」役は最後の最後に登場します。
残された関係者の語るピースをきっちりとハメ合わせていく、名探偵が。
本格ミステリをたっぷりと楽しませてもらいました。
「大鞠家殺人事件」芦辺拓 東京創元社
満足度★★★★☆