生き残るために
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戊辰戦争時を舞台とするストーリー。
私、かねてからの会津贔屓ですので、賊軍の話、大歓迎と思って見始めましたが、
これはそういうものとはまた別の話。
1868年、旧幕府軍と新政府軍(官軍)が争いを繰り広げていたわけですが、
越後の新発田(しばた)藩は、どちらにつくべきか、決断がつかずにいたのです。
奥羽越列藩同盟に加わっていた長岡藩は、
当然新発田藩も加わるもはずとして圧力をかけてきますが、
冷静に状況を見れば官軍の方が有利。
そのため、官軍と通じようとしているところへ、
長岡藩士がこちらの決断を確かめに来る・・・。
切羽詰まった溝口内匠(阿部サダヲ)は、ある計画を立てます。
さて一方、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害し、
死罪を言い渡された政(山田孝之)やその他の罪人たちは、
新発田藩士・入江(野村周平)や鷲尾(仲野太賀)から、こんな話を持ちかけられます。
これからやってくる官軍から砦を守り抜けば、無罪放免とする、と。
どうせこのままなら死罪で終わり。
それならば、なんとかやってみよう、と決意する罪人たち。
官軍につくか、それとも旧幕府軍か・・・という話、
少し前にも見たなあ・・・と思い起こせば、
それは長岡藩の内情を描く「峠 最後のサムライ」という作品でした。
役所広司さん演ずる藩士が状況は官軍に有利だけれど、
奥羽越列藩同盟の義理の方を重んじ、立派に戦って死んでいく・・・と、
武士の滅びの美を描いたものでしたが、
その時にいみじくも私は
「どんなにみっともなくても、生き残る人間くささも嫌いじゃない」
と書き記していました・・・。
で、本作はまさに、何が何でも生き残ってやろうともがく者たちの物語なのです。
彼ら咎人たちは、つまり新発田藩家老にとって使い捨てのコマにしか過ぎません。
そうした真実を知った彼らは、もう官軍も賊軍も、正義も、何も関係ない。
とにかく生き抜こうともがくのです。
死罪を申し受けた罪人は政ら11人。
でもうち一人は女性で、実際に戦闘に加わるわけではありません。
では本当の11人目は誰なのか?
そこがミソであります。
武士ではない罪人たち(武士も含まれてはいますが)の戦いぶりは
決してカッコ良くはないのですが、何しろ迫力があります。
血みどろ、汗みどろ・・・。
一人、また一人と倒れていきます・・・。
壮絶。
とにかく息を潜めて見入るのみ・・・。
話は変わりますが、この日は久しぶりにサツゲキにて鑑賞。
でも、どうしてこの頃ここに足が遠のいていたのか分った気がしました。
あまりにも空いているので、居心地が悪いのです・・・。
だいじょうぶなのか、サツゲキさん・・・。
<サツゲキにて>
「十一人の賊軍」
2024年/日本/155分
監督:白石和彌
原案:笠原和夫
脚本:池上純哉
出演:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、岡山天音、一ノ瀬颯、野村周平、玉木宏、阿部サダヲ
血まみれ度★★★★☆
迫力度★★★★☆
満足度★★★★★