厳格な戒律は何のため?
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1960年代に開かれた第2バチカン公会議の史実を背景としています。
奨学金が出るということで、カトリック系の学校に入学したキャスリーン。
共に暮らす母は無宗教で、カトリックとはなんの関わりもありません。
けれどキャスリーンは学校でシスターなどと接するうちに、
次第に神に対して恋心を抱くようになっていきます。
そして、キリストの花嫁であるシスターを目指すため、17歳で修道院に入ります。
まずは見習いという立場ではありますが、
この外界から遮断された場所で、厳格な修道院長マザー・クレアのもと、
キャスリーンたちは実日決められた生活を繰り返します。
そしてやがて、院長は週に一度少女たちを閉ざされた部屋に集め、
ある儀式めいたことを始めます・・・。
後に9万人ものシスターが信仰を捨てたといわれる、
カトリック教会最大の事件といわれる出来事が背景となっています。
本作の修道院もそうなのですが、異常なほど厳しいしきたりに
修道女たちはがんじがらめのようにも見えます。
それをもっと緩やかに、開かれたものにしようというのが第2バチカン公会議の決定。
とすれば楽になるはずなのに、なぜ多くのシスターが信仰を捨ててしまったのか。
つまりですね、異常なほどの戒律にがんじがらめになればなるほど、
それに耐える使命感や達成感のようなものが芽生えるようなのです。
まあ、ほとんどマゾヒズム・・・。
その苦痛の毎日に入る前に、彼女たちは儀式でキリストの花嫁のあかしとして、
純白のウェディングドレスをまといます。
彼女らには至福の時。
そしてそれは彼女たちの誇りでもあるのです。
しかし、会議ではその「シスター」=「キリストの花嫁」という定義自体を否定してしまった。
この思いなくして、一体何のために長く苦渋の修道院生活に耐えなければならないのか・・・。
本作では、キリストの花嫁の立場に憧れ、
それだけを貫く覚悟でここへやって来たキャスリーンが、
カトリック教会の改革の波にさらされ目的を見失っていく様が描かれています。
キリストの花嫁・・・。
決して見返りがないと分っているそのような「愛」に一生を捧げるというのは、
まさに無宗教の私にとってはほとんど理解できないことではあるのですが。
でもそれで充足していたはずのキャスリーンも、
いつしか人の温もりこそに愛を見出すように変わっていくというのには納得。
<Amazon prime videoにて>
「クローズド・ガーデン」
2017年/アメリカ/105分
監督・脚本:マーガレット・ベッツ
出演:マーガレット・クアリー、ジュリアンヌ・ニコルソン、ダイアナ・アグロン、
モーガン・セイラー、メリッサ・レオ
閉鎖社会の怖さ度★★★★☆
信仰心度★★★★☆
満足度★★★☆☆
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