魂のふたご
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「お前の居場所は、俺が作るから。泣くな」
ピアノだけが友達の孤独な少女の夏子は、異彩の少年・月島と出会い、
振り回され、傷付きながらもその側にいようとする。
やがて月島は唐突に「バンドをやる」と言い出した。
彼は、夏子の人生の破壊者でも創造者でもあった。
大切な人を大切にすることが、こんなに苦しいなんて--。
異彩の少年に導かれた孤独な少女。
その苦悩の先に見つけた確かな光。
直木賞候補となったSEKAI NO OWARI Saori、鮮烈なデビュー小説。
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SEKAI NO OWARI のSaoriさんの著作、ということで。
フィクションには違いありません。
けれど、バンドをはじめる少年少女のストーリーは、
あまりにもSEKAI NO OWARIを彷彿とさせるので、どこまでか事実で、そうでないのか・・・
などと、しなくてもいい勘ぐりをしてしまうことが、
逆にこの本作にとってはマイナスになってしまっているのかもしれません。
夏子が出会い、いつも振り回されてしまう少年・月島は、
実にぐだぐだでいい加減。
学校へ行かなくなったと思えば、突然アメリカへ留学。
しかしすぐに挫折して戻ってきてしまう・・・。
「何で普通にきちんと頑張れないのか・・・」と、夏子はつい思ってしまうのだけれど、
「頑張れた方がいいに決まっているけど、それができない」のが月島。
夏子は、そんなだから自分がついていてあげなければならない、
などという母性本能を見せたりはしません。
ただそんな月島の中に自分にとって大切な何かを見て、
そばにいたいと思う・・・。
そんな気持ちとても、月島には届いているのやらいないのやら・・・。
「ふたご」というのはつまり、魂の形が「ふたご」のようなのでしょう。
本来の「愛」の物語なのかもしれません。
「ふたご」藤崎沙織 文春文庫
満足度★★★★☆
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