これは「救い」なのか?
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とある民家で、老人と訪問介護センター所長の死体が発見されます。
死んだ所長が勤める介護センター介護士の斯波(松山ケンイチ)が
殺人の容疑者として浮上。
しかし斯波は、介護家族からも、介護センターの同僚からも
信頼される心優しい青年なのです。
検事・大友(長澤まさみ)は、この介護センターで、
老人の死亡率が異様に高いことをつきとめます。
取調室で、斯波は、多くの老人の命を奪ったことを認めますが、
自分は「命を奪った」のではなく「救った」のだと主張します・・・。
ひとたび家族が介護が必要な常態になったら、どうなってしまうのか。
特に要介護者の体が動かないばかりでなく認知が進むなどして、
うまく気持ちが通じ合わなくなったときに、
介護する家族の苦しみ、そして当の介護される者の苦しみはいかばかりか。
斯波は自身で、その上に収入もほとんど途絶えてしまった経験があって、
介護状態が長引くことは双方の苦痛が長引くだけ、
という思いに駆られるようになったのでしょう。
正直、私も無理な延命には納得がいかないけれど・・・。
かといってあえて命を損なうことはどうなのか。
そこのところが本作の一番の問題で、
そしてそれにはやはり答えはないのだと思います。
それぞれが考えていくほかない。
場合によっては自分の意志で安楽死を選ぶことができる国さえある。
大友は極力冷静に、法に基づいて事に当たろうとしますが、
実は彼女の中では揺らぎがあるのです。
果たして、斯波は多くの人を救ったのか?
それとも単に思い込みの強い狂人なのか。
ラストで、大友と斯波が面会するシーンがあって、
その時、斯波が大友を見る「目」が忘れられません。
迷える子羊を見守る慈愛に満ちた目のような・・・。
ということで、この松山ケンイチさんの演技がスバラシイ!!
それに対する長澤まさみさんと、
アシストする鈴鹿央士さんのコンビネーションもバッチリ。
実に、見応えのある作品です。
<シネマフロンティアにて>
「ロストケア」
2023年/日本/114分
監督:前田哲
原作:葉真中顕
出演:松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、柄本明
介護問題度★★★★★
満足度★★★★☆
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