シニア演劇を作るようになって、一番心がけてることは、やってよかった!って思ってもらうことだ。舞台で輝いたと感じる瞬間をプレゼントすることだ。甘いかもなぁ、でも、60過ぎにもなって、まるで未知の分野に飛び込んで来ようっていうんだ、楽しい思いしてもらわなくっちゃ。
若いうちなら、自己鍛錬とか、自己研鑽とか、辛い修行も悪くはないが、シニアに下積みとか縁の下の力持ちなんて要求できない。先々短いんだから、せめて、華々しく引き立ってもらわなくっちゃ。冥途の土産?そこまでは言わないけど。少なくとも、芸術至上主義なんてのは違うと思う。まっ、それを必死で追い求める人がいたって全然悪かないんだが。
『追いかけぇて!追いかけぇて!』を書く時、一番に心がけたのが、出演者一人一人が目いっぱい輝いて欲しい!ってことだった。歌の上手な人には歌を、ダンスが踊れるならダンスを、手品が得意なら手品を、ギターが弾けるならギター、とことん持ち芸発揮のシーンを仕込んだ。持ちネタのない人はどうすんだ?それは、その人の個性が引き立つようなキャラクターとやり取りを書いた。
そんなの見てくれる人に失礼だろ?って考えもあるだろうな。でも、得意技なら自信がある。自信があれば、堂々と演じ切れる。なまじ、不足の演技力で勝負する方が、よっぽど見る方にもやる方にも酷いことなんじゃないかねぇ。
だから、この芝居の出来不出来は、作・演出の僕の力量に掛かっている。シニアの一人一人の持ち味をお話しに無理なく溶け込ませられたかどうか、ってことだ。まっ、パズルみたいなもんだ。
さっ、今日は仕込みとゲネプロ、最後のピースをかちっとはめ込めるかな。