今年も頼まれた認知症サポートコント、テーマは何にしようかな?まずは、参考に本など読んで。
おお!絶賛販売中のこれ、『ボケ日和』著:長谷川嘉哉、刊:かんき出版、いいんじゃないか?読み易そうだし。神さんお気に入りの梅沢富美男が夫婦で帯コメント書いてるし。何より、ブックデザインが長閑でいい。
著者は老人医療、中でも認知症患者の医療や介護にかかわるお医者さんだ。病院でどしっと座って「どうしました?」って診断するばかりの専門医じゃない。介護施設の運営にも関わり、訪問診療で末期患者の看取りまで行っている。まっ、認知症なんでもござれのオールマイティドクターだ。もちろん、講演会にも引っ張りだこ、そんじょそこらのお笑い芸人より笑いを取ってるって、凄い鼻息だぜ。
たしかになぁ、認知症の人たちの行状って、どこか笑いを誘うものな、ネタにゃ困らないわけだ。そう、だから、菜の花座もコントを頼まれている。おっと、当人や家族にとっちゃ深刻な病状を、笑っていいのか?日々地獄の七転八倒の苦しみを笑い飛ばすなんて不謹慎な!
著者の立ち位置はそこなんだよ。患者も介護者も笑って過ごそうよ、ってところを一番の拠り所にしているんだ。おおらかな気持ちでボケに付き合っていきましょうや、それが一番ですよ、人間だれしもいつかは死ぬんだし、って考え方だ。
そのためには、まずは介護する側が苦しまない、これが大切だ。とことんまで責任を背負い込んだりしないで、できるなら複数で世話をする。利用できるサービスは躊躇せずできるだけ使う。中でも、デイサービスは、介護する人も患者も得るものが大きいよ。
本の構成は4っつの章からなっている。「ちょっと変な春」【認知症予備軍】、「かなり不安な夏」【初期・軽度】、「困惑の秋」【中期・中等度】、「決断の冬」【末期・重度】。この章分けといい、そのタイトルといい、見事なもんじゃないか。語り口も軽妙洒脱なんだけどね。症状の進み具合と介護する人の気持ちが的確に表現されている。
それぞれの章で、その期の症状と対応の仕方が述べられていて、とても参考になる。って言うか、安心する。第1章では、認知症の1歩手前、早期認知障害の話しで、この時期、症状の進み方をゆるやかにするには、運動とコミュニケーション、そして薬物療法だって。そうか、すぐ切れる高齢者、脳の反応を穏やかにする薬ってのもあるんだ。
第2章でためになるのは、いつでも患者に合わせる必要はない、場合によっては怒りをぶつけることも大切、これは介護側の精神衛生。反対に、質問で患者を試すようなのはダメってあたりだ。時刻を聞くとしても、今何時だと思ってるの?って、詰問するんじゃなく、4時過ぎたよね、と、いった具合に、聞く側から情報を提供して答えさせる、これをリアリティオリエンテーションって言うそうだ。これ、実行せずにずいぶん患者にとげとげしく当たってる家族、介護士、見ること多いよな。
困惑の秋での救いは、つらい時期も2年で終わるって、これは大きな福音だよな。それと、風呂嫌ったり、寝なかったしても心配ないってところかな。あと、異常性欲亢進は薬物で押さえる、なんてことも役に立つ。一番重要なのは、施設を積極的に利用するってこと。
いよいよ、終末、看取りのアドバイス。グループホームか特養か。入院か自宅で看取るか。どういう場合にどれを選ぶのが適切なのか、わかりやすく情報提供してくれている。ここは、認知症かどうか関係なく役立つ知識だ。忘れずに、って言うよりこの本をなくすことなく、人生最後の参考書として身近に置いておきたいところだな。
うーん、なんか、身につまされて一気読みしてしまったぜ。夫婦ともどもボケ便りの季節じゃあるしな。死に支度だって、考えておかにゃならん。コントのネタもいただけたし、先々の杖ももらえたし、思いがけずいい勉強ができたってもんだぜ。