『自壊する欧米』内藤正典・三牧聖子、集英社新書
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イスラムの研究者とアメリカに視座を据える政治学者の対談だ。
どうしたんだ?アメリカ。どうなっちゃったのヨーロッパ!
世界の構造は大きく変わりつつある、うすうす感じていたことを数々のエピソードで突きつけてくれた。
イスラエルのガザ虐殺の進行、未だに欧米がイスラエルの尻押しして、自衛戦争だって叫んでる異常。
ついさっき、イスラエルがパレスチナ市民に行った非道の数々、もし逆の立場で行われたらという陳述として、哀しみ怒りを抑えつつ静かに、それだけに心に迫る訴えの動画を見た。ここで語られている残虐はこの先世界の歴史の暗黒として語り継がれて行くに違いない。必見!
この本は、聞いてはいたが、アメリカじゃ驚くような言論弾圧、イスラエル支援が繰り広げられてるのかって、実態を様々伝えてくれている。
例えば、
・ハーバードやコロンビアなど著名大学で、イスラエル支持表明が不十分って理由で学長が更迭されている。その圧力をかけたのはユダヤ系の財団だ、とか、
・パレスチナ系の民主党議員ラシダ・タリープ が停戦を主張しただけで問責決議が可決 された、とか、
・イラク、アフガニスタンと反テロ戦争以降、たしかに外国勢力によるテロは起きていないが、国内でのテロ、ドメスティックテロは増加している、とか、
・それら戦争から戻った元兵士たちの精神の揺らぎや極右化が止まらない、とか、
・バイデンはユダヤ系ロビー団体からかなりの額の資金、議員では最高額、を得ている、とか、
・ヨルダン川西岸にはアメリカ人の入植者も6万人にもいて、国内の福音派が支援している、とか、
・それらの人たちにはイスラエルによるパレスチナ入植が、西部開拓時代への郷愁として感じられている、とか、
切りないなぁ、度を越したイスラエルへの肩入れ!と、マッカーシー旋風・赤狩りさえ思い出させる民主主義の崩壊過程、これがアメリカなのか?自由の女神がトーチを掲げる自由の国の今なのか?
一方、知らなかったことは、イスラム圏の方がはるかに多い。イスラムから見たガザ虐殺、これはとても大切な視点だし情報の数々だ。
これは!と目を開かされることが多々あった。
・パレスチナ側がなぜ子どもたちの虐殺写真や動画を発信するのか?それは、イスラムにとって、女と子どもは非戦闘員、守るべき存在との強い意識があるからだ、とか、
・イスラムは基本商売人だから、原理原則で他者を分け隔てなどしないとか、不法は別だが、物の売り買いに善悪判断は不要ってこと。
・トルコのエルドアンはウクライナとロシア間の穀物輸出仲介をしたし、トルコ側にユダヤ人への差別意識はないと宣言したり、とか、
トルコやエルドアンに対する偏見は西欧からのプロパガンダ、とか、
ただし、クルドの問題は触れられていなかった。
・イスラム教徒に反ユダヤ主義はない、あるのはシオニズムやイスラエルの暴力的パレスチナ支配への反発だけ、とか、
・イスラム教の前身としてのキリスト教、あるいはユダヤ教への親近感さえあるんだとか、それは聖人たちの名を自身に付けていることからもわかるとか、
イスラム圏をなにか理解不能の人たちと見做して来た感覚がずいぶん誤ったものだったと正してくれる。
危うきは欧米、押し付けて来た自由、寛容、人権、デモクラシーすべてにおいてダブルスタンダード 、自らを正しいと信じることが、世界の混乱をもたらしているってことだ。
もはや、アメリカが世界の秩序を保ているなどと信じる国々は少ない。国連でのガザ停戦決議に反対したのは、わずか10か国。イスラエルのガザ虐殺が「自壊する欧米」をあぶり出したってことだ。イスラエルの歴史的蛮行は、世界の転換点となると思う。
未だその幻想に縋る日本は、石破もトランプのご機嫌取りに終始した。金の兜を捧げ持って、右手にゃ防衛力増強、左手には対米投資1兆ドル、見返りは、トランプのしたり顔のみ。ふぇ~、お怒りを買わずに済んでよかった!って。
トルコやインドネシア、マレーシアのように、米中どちらとも適当な距離を保ちつつ、核廃絶や平和構築に発言していく時期が来ている。そのことがまるでわかっていない日本を動かしている者たち、政界、財界の首脳たち。欧米の自壊に付き合うひつようなんて、さらさらないんだからな。
目を覆うアメリカの惨状にも希望はある。
若い世代ではパレスチナを支持する動きが半数を超え、バイデン政権時には、彼のイスラエル支援の政策に異を唱えて連邦職員が意見書を提出し、職を投げうったりもしたって事実だ。
民主党内左派、オカシオ・コルテス等の動きもある。身の程知った隣人として再登場するかもしれない。
で、日本は・・・