前日の危機的状況、からくも突破した。時に行き詰まること数回、台詞をぶっ飛ばすことかなり、他の役者が台詞を代替えすること数知れず、舞台裏をばらせば、冷や汗ものの公演だったが、まずは、観客の皆さんにはそこそこ面白いお芝居と好意的に見ていただけたようだ。
人生初の晴れ舞台、思ってもみなかったスポットライトを浴び、お客さんの暖かい手拍子、拍手に包まれて、ともかく1時間40分を演じ通せた満足感、シニア4期生メンバーにとっては、感激!感動!嬉しさ大爆発の素晴らしい体験だった。おそらく一生の宝物になるだろう。
直前までとことん苦しんだ。頭真っ白病の蔓延に、メンバーはみなパニック状態、前日のゲネなど、ラストシーンで1ページ近くもすっ飛ばして、ストーリーが繋がらない有様だったから、さすがに開演前の休憩時間も全員が必死の形相で台本とにらめっこしていた。とりわけ重篤な一人には、シニア1期生の先輩がつきっきりでお相手して、台詞の注入に頑張った。お助け役の事務局役者など、他のメンバーが詰まる台詞きっかけをすべて手のひら書き込んで本番に備えていたほどだった。
そんな薄氷を踏み、綱渡りしてやり遂げた舞台だっただけに、公演後の打ち上げは目一杯盛り上がった。それぞれが苦労を語り、苦心惨憺を白状し、緊張しながらも、役者を存分に楽しめたことを感激の面持ちで話してくれた。わずか一年前には考えもしなかった演劇世界、そこに広がっていた目も眩むような別世界に、みんな魅せられ、引き寄せられて、何人かは来春からの菜の花座入団の決意を語ってくれた。
初舞台を踏むシニアたち、彼らに達成感を思う存分味わわせる、それが講師たる僕の仕事、僕の力量。今回もその難事を無事成し遂げることができた。感激に熱く語り合い、美酒を傾けあうシニアたちを横に見ながら、一人ノンアルワインを美味しくいただくことができた。そんな深い充足感を与えてくれたシニア4期生の役者たち、裏方としてサポートしてくれた菜の花座メンバーたち、感謝だな。