演劇部の効用って言ったら、表現力!って答えが、まあ、一般的だよね。それはもちろん、言うまでもない。置農演劇部だって、こいつは最重点項目だ。だから、全員キャスト!を頑なに守っている。3年間一度も舞台を踏んだことがないって部員は絶対に作るまいと決意している。今のところ、この掟はしっかりと守られている。
でも、そればっかじゃないよ、演劇ってのは!手業だよ、手業!
衣装作りのミシンかけ、装置作りの大工仕事、装置仕上げの塗装作業、さらに、小道具作りのちまちまとした手作業。舞台一つ仕上げるには、うんざりするくらいの手業が待っているんだ。これをね、そんなの古くさいとか、すべて演技で表現なんて、知ったふうな口きくと、すかすかのお寒い舞台ができあがるんだ。て、言うか、すかすかですきま風があちこち吹き抜けても気が付かない奴がそんな舞台を作るんだ。高校生の表現は、肉体だけで、間口6間~8間の舞台を仕切れるほど強靱じゃないんだよ。
まっ、そういう理由もさることながら、お針子さんや大工さんの手仕事は、これは絶対に高校生に経験させておきたいものなんだ。今じゃ、パソコンの授業はがっぱり増えたけど、裁縫や工作なんて授業は、どんどん片隅に追いやられているからね。だから、金槌一つ握れない、釘一本打てない、ミシンの直線縫いもできない、そんなの当たり前って、これでほんとにいいんだろうかって、思うわけだ。
置農演劇部では、前回も書いたけど、敢えて、たくさんのパネルを作る。執拗に手作り衣装にこだわる。それは、部員たちにそういった手業をしっかりと習得してほしいと思うからなんだ。勉強やパソコンができるのもいい、自己表現も大切だ。でも、家のちょっとした修理とか、洋服の繕いなんてものが、ちょちょいのちょいでできるってのも悪くないじゃないだろうか。いやいや、これこそ、生きる力そのものなんじゃないのかな。
そんなものプロに任せりゃいい、買い換えればいい、って発想で今の不況時代に逢着しちまったわけだろう?だとすりゃ、これからは、金をかけず、手間をかけるって時代になるのは必定!なんだ。と、まあ、時代認識まで持ち出すことも無いんで、釘打ったり、鋸で木を切ったり、ミシンで自由に洋服作ったり、って楽しいじゃないか。そんなことでも、できれば自信につながるしね。それと、そういう作業をとことんやってると、働き方も違ってくるんだ。
昨日今日だって、朝の9時から夕方の6時まで、作業、作業のぶっ通しだったけど、誰一人として音を上げた奴はいなかったもの。今日なんか、炎天下の大工仕事だぜ!さすがに、お前ら、偉い!って感動してアイス奮発しちまったくらいだ。
だからね、演劇ってものは、こんな風にいろんな仕事がそっちこっちにごろごろと転がっているものなんだってことね。それは一つ一つ大切で、欠かせない仕事で、しかも、やってみりゃ、結構、楽しいもので、しかも、貴重な教育的価値のある作業なんだってことなんだ、言いたいことは。
演劇やってる高校生!ぜひぜひ、装置にこだわろうね!衣装に凝ろうね!芝居つまんなくっても、装置すげー!衣装まじ、やべー、ってこれだけでも嬉しいじゃないの。そいうこだわりをしっかりと見極める目を持とうぜ!で、こういう苦心の積み重ねが、正当に評価されるような高校演劇にしてこうじゃないの。って言っても、僕は今年限りだけどね。