見て見ぬふり、臭いものには蓋、近寄りたくない!ってのあるよなぁ。できれば気付かぬままでやり過ごしたい。田んぼ、畑やってると、そんなのばっかだぜ。手、回らんもの。
それでも、今年はよくやった。頑張った。収穫終わって草に覆われたイチゴもブルーベリーも、手遅れになる前に救出した。
そうなんだ、収穫とか一段落した後ってのが、危ないんだ。目的達しちまうと、ついつい頭も目も次の作物に移って行く。なんとも身勝手な話しじゃないか。正しき百姓は、実りの後でこそ、優しく行き届いた手当てをする。今の苦労が来年の喜びに繋がるって知ってるから。
いや、俺だって知ってるよ、そんなこと。ただな、常に前しか見ない、前のめり人間の俺としちゃあ、終われば放ったらかしの知らんぷり、となっちまうわけだ。しかも一度見過ごした作物、畑は、あっという間に、取り返し付かない惨状に陥って、その、手を付けられない度、見て見ぬ振りレベルはぐんぐん上昇して行くことになる。
今年そのレベルマックスなのが、アスパラガスだ。春先、。冬枯れの地面から元気に顔を出して来る。そいつをポキポキ折り取っちゃ、ありがたくいただく。時期が過ぎればお礼の堆肥播きで次に備える。そこまではいい。そこまでは気配りできる。が、問題はその後だ。
言い訳させてもらえば、その季節、次から次と作業が押し寄せてくるんだよ、畑も田んぼ。収穫終わったアスパラガスのことなんて、気にしちゃおれんのさ。で、いつの間にか、見て見ぬ振り、臭いものには蓋、状態に引き込まれていくことになる。
その繰り返しを続けてすでに十数年。かつて、余所様に上げるほど取れたものが、今じゃ、辛うじて数本!これは、いかん!来年あたり消滅するやもしれん。ここは、なんとしても蓋を開け、じっくり見据えて、対策を講じなくてはならん。
わかっていても踏み切れない荒れ具合。草刈るったって、アスパラ切らぬよう1本1本だ。こりゃ滅入る作業だぜ。
で、見つけたのが、農業資材店「トマト」で売ってたアスパラガスの苗!そうか、新たに苗を導入して畑の再整備に取り組めばいいんだ。わざわざ買ったた苗となりゃ、疎かにするわけはない。大切に育てるに決まってる。なんだって新しいものはかわいがる、それが人間の性てもんだ。芽生えたばかりの恋と同じだぜ。
購入苗は6本。しみったれてる!うーん、根っこで増やすもんだ、って意識が抜けないんだよな。残っている株とこの6本を大切に守って、以前のような豪勢なアスパラ畑にしていこう。
と、心決まれば、1本ずつの手取り草刈りも苦にならない。間違ってアスパラ刈らぬよう、丁寧にかつ大胆に畑の整備を断行した。
ほおーれ、清々しい畑が再現したじゃないか。堆肥を播き、肥料もやって、さっ、周りの邪魔ものは取っ払ったんだ、元気に育つんだぞ。来年はまた、忘れずに新参者を連れてきてやるからな。アスパラの楽園目指して、頑張ろうぜ、お互いに!