実は、スタッフが決まっていなかった。なんと、本番4日前に!
今回の舞台は菜の花プラザシニア団、シニア演劇学校出身者はもちろん、菜の花座生抜きの50代以上のメンバーも全員がキャスト、スタッフは若手がバックアップすることにしてあった。そのうち、古参若手は3人、舞台監督、照明、早着替えメイク担当それぞれ1名を割り振り、残り、舞台スタッフ2、音響1、ピンスポット1、これは新たに入団を希望していた若手で賄うことにしていた。
まあ、中心の3人がしっかり仕事してくれてれば、後のスタッフは直前合流でも大丈夫、と甘く見てたのが大間違い。仕事の都合やら体調不良やらで、頼みの綱がすべて切れ落ちてしまった。それが判明したのが、本番10日前!これはヤバイよ。
と、言っても責任感じて焦りまくったのは、N。照明担当だけど、舞台監督や制作のカバーもして、今回大活躍。彼女を通して他のスタッフと連絡をとってもらうことになっていたから、すべて自分で背負い込んでしまうことに゜なった。置農演劇部現顧問の立場をフルに活用して、OB・OGに電話をかけまくってくれた。
まず応じてくれたのは、6年前、7年前の卒業生。1人は以前菜の花座に在籍してた女性なので、役者キャリアも十分。もう一人はその弟分?置農時代はコミカルな役どころで大いに笑いを引き出していた奴。うん、この二人なら、舞台スタッフできる。今回は場転を準キャストとして、キャバレーのボーイに扮して行う仕掛けにしてたからだ。いいメンバーを見つけてくれた。
さて、あとの音響とピンは?一時は他劇団から応援を頼むか、って話まで出たが、なんと、昨晩、助っ人が顔を出してくれた。これまた、置農演劇部2年前と4年前の卒業生。思いがけない顔ぶれだった。僕としてはまったく予期せぬ人選だった。
一人は、演劇部時代、思い屈すること多き日々を送った生徒であったし、もう一人は学力優秀ながらも、コミュニケーションは苦手な男だったからだ。どちらも、演劇部ではスタッフ中心で3年間過ごした。
高校演劇部てのはどうしても、キャスト中心になりやすい。華のある子、演技力に秀でた子は目立つし、舞台を作る時はおのずと彼らを軸に考えてしまう。音響や照明も重要だし、難しい役割なのだが、顧問や先輩がカバーすれば、なんとかなる仕事でもある。過去の演劇部の思い出も、ついつい目だった役者生徒を中心に形成されてしまう。
そこだ、意表を突かれたのは。今回のスタッフを頼むとき、僕の頭にあったのは、かつての主力メンバーだった。主役を張った生徒、部長やリーダーを務めた生徒、そんな連中が頭にあった。そこに、地道なスタッフ上がりの二人が駆けつけてくれたんだ。これは、驚きだった。感激だった。何年かぶりの突如の依頼を快く引き受けてくれた。ありがたい!感謝だな。
そうか、音響とピンだったら、彼ら以上に適任者はいないよな。3年間、ほぼ裏方一筋で頑張ってきた二人なんだから。しかも、どちらも役者には不向きだったが、スタッフとしての能力は高い。そう、学校の成績も優秀だった。彼らなら、短い稽古期間でも十分対応してくれるだろう。
それにしても、迂闊だった。人を見る目、演劇部を見渡す力、まったく足りなかった。華やかに演劇部生活をエンジョイした子らと同じように、あるいはそれ以上に、地味な持ち場を黙々と支え続けた子たちだって、演劇部員として充実の高校3年間を過ごしてたんだってことに、思い至らなかった。無意識のうちに、目立つ子たちに引き寄せられていたってことだ。いかんな、これは顧問失格だ。
最強の4人を得られたこの公演、きっと上手く行く!絶対、成功する!さあさあ、後は、シニアの皆さん、頭と体を全開にしてぶつかって行きましょうよ。