書けない!進まない!アイディア浮かばない!締め切りは刻々と迫ってくる。もう練習日程も決めて、会場だって押さえてるある。出演者も今か今かと待ってることだろう。うーん、いかん!完全に手詰まり、行き止まり、糞詰まりだ。
米沢市の芸術文化協会からの演出・台本執筆の依頼。今年は米沢市のフェスティバルを越えて、山形県の芸文祭の開催記念フェスティバルなんだ。同じく請け負った過去2年より以上の仕上がりが期待されている。全体のプランはすでに出来て、芸文の各団体は本番に向けて打ち合わせやら稽古やらどんどん進んでいる。なのに、舞台をつなぐショートストーリーの台本ができていないのだ。
苦しい事情があった。昨年までは、子役と高校演劇部の生徒で進行してもらった。これ、ある意味ずるいやり方で、特に子役が出れば、そのめんごさでだいたいのところは笑って許してもらえる。高校生についても同じ、よく出てきてくれたね、頑張ってるね、と観客の反応は最初から好意的だ。もちろん、子役も高校生もそのアドバンテージに甘えることなく、素晴らしい演技をしてくれたので、ますます評価は高いものになった。
今回、その二つの貴重な持ち駒が使えなくなったんだ。まあ、マンネリを脱したいというこちらの意図もあったのだが、ともかく、青年と少女で進めようと構想した。傷心の旅の青年が不思議な少女と出会い、米沢を案内されながら、愛の町米沢に心惹かれていくというストーリーを考えた。配役には過去2年、ダンスで出演してくれている若者二人が適任だとイメージして思いついた設定だった。
ところが、この二人も本番当日都合がつかないことが判明した。ピンチ!どうする代役?やばやばやば、とかなり動転してあちらこちら当たった末、置農演劇部卒業生二人が快く引き受けてくれることになった。さすが置農演劇部!助かった!
でも、想定よりはちょっと、いやかなり?年上なんだなぁ。青年もセンチメンタルジャーニーの旅人にしては逞しすぎる。つまり、当初の役のイメージと実際の役者の持ち味とがかなり行き違ってしまったってことなんだ。と、なると台本書きは一気に辛くなった。思い浮かべていたせりふやシーンが使えなくなってしまった。無理矢理新しい二人にしゃべらせようとすると、つんつるてんの洋服着せたみたいに滑稽なものになってしまう。
さて、どうしたものか、少女を小野小町にしちゃおか、なんて究極の奇策さえ浮かんできた。となると、青年は深草少将か?えっ、あいつが?ありえないだろ!それに、小町は小野川温泉の守り神?米沢全体を代表はできないしなぁとか、イメージはあらぬ彼方へ飛び跳ねてまるっきり具体的なアイディアを結んで来ない。三日三晩?悩み抜いて、もう、書き始めるしかないと腹をくくって書き始めたのが昨日。
地図はもちろん道しるべもなし、先々の見通しもきかない、こんな状態で始めて上手く行ったためしはない。でも、ともかく二人の姿と持ち味を頭の片隅に置きつつ書き進めた。
と、これが、なんとしたことか!!思いがけず上手く転がるじゃないか。二人のコミカルなイメージからギャグも浮かんできたし、少女も優しくなよやかな感じではなく、逞しく溌剌とした女の子?いや、女性に変わって行った。と、どうだ。次々とせりふが出てくるじゃないか!二人の会話が面白くなって行くじゃないか!最初のイメージのメランコリックで詩的な男女から、ちょっとずっこけたお笑いコンビのような二人が生き生きと浮かび出てきた。
これだよな、これが当て書きってことなんだ。二人のユニークな人柄、見知った演技力、顔立ちから声から仕草からみな知ってるから、どんなやりとりが面白いか、どんなシーンだと感動を呼べるか、自然とわき出てくるんだ。ということで、まる一日かかったけど、10ページ程度、5つのシーンのショートストーリーが完成した。気軽に引き受けてくれたことといい、台本書きのエネルギーを与えてくれたことといい、二人には本当に感謝だ。
まだ、多少手直しは必要だが、基本はできた。さっ、いよいよ稽古に入るぞ!て、ことで、青年役の男には、旅先の九州で博多ラーメンなんかにうつつ抜かしてないで早く帰ってこい!ってFace Bookにコメントした。出来れば、おみやげ持ってな。