「ゴジラ」第1作(60周年記念デジタルリマスター版)を見てきました。 (左は映画サイトスクリーンショットから作成。) |
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僕は同作を映画館はもちろんTVでも見たことがない。少なくとも見た記憶がない。なぜ第1作が現在でも評価されるのか。SFファンとして、それが知りたい。もちろんゴジラという存在のユニークさ、力強さは理解しているつもりである。第1作のストーリーも知っている。でも、現在まで続くものになり得た理由は、第1作を見ないと実感できない。そんな気がしていた。
その作品が映画館で見ることができる。行かない理由はない。オリジナルのデジタルリマスター版がオリジナルと言えるかどうかわからないけど、とにかく第1作を映画館で見ることにした。
「もはや『戦後』ではない」とは、教科書にも出てくることば。出典は1956(昭和31)年7月発表の経済白書の副題である。
「ゴジラ」は1954*(昭和29)年11月公開。戦後10年未満。戦後復興期の日本が舞台であり、映画館に来た人たちは、その戦後を生きていた。公開60周年の2014年に生きている僕とは、明らかに違う見方、感じ方をしたことが想像できる。外形的には戦争と同様に破壊をもたらす「怪獣」、それがゴジラである。でも、それだけではない。それ以上の何かがあるはずだ。それは何だろう。映画という娯楽の位置づけも、現代とは違う。950万を超える観客動員の映画である。
---【雑感】---
本作はモノクロ映画である。出だし数分で慣れた。
僕が予備知識・印象として持っていた「ゴジラ」という作品は、どうしても怪獣と人間のたたかいの部分が強くでてくる映画である。断片的に見たことのあるシーン。映画評などで自分の頭の中にすり込まれた知識の範囲から、僕は出ることができないのだと感じていた。
資料によれば、ゴジラは「核の落とし子」、「人間が生み出した恐怖の象徴」としてえがかれたとある。なるほどという感じがするが、これもわかったつもりかもしれない。今回劇場で見て、これは怪獣と人とのたたかいを描くすぐれたエンタテインメントであると同時に、科学への疑念、不信のメッセージを放つ作品であると感じた。サイエンスフィクション+政治、人間ドラマ。それが「ゴジラ」かもしれない。
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『長崎原爆を逃れたのに。。。
『原子雨、放射能汚染の魚。怪獣。。。
『また、疎開か。。。
ゴジラ襲来を不安に思うシーン。通勤電車内のサラリーマンの会話である。同時の人はどう感じただろう。
ゴジラによる被災者が担ぎ込まれる救護所。何かヒロシマ・ナガサキ関連の記録映画で見たシーンに酷似している。
これもどう感じただろう。
ゴジラを倒す兵器(知識)を完成させ、その製法を守るために自らの命を絶つ科学者。
当時の人と、現代に生きる僕では感じ方は違うだろう。でも、どんな気持ちになったのだろう。
一つ一つが気になる。
事前のイメージよりも日常感が目についた。反核のメッセージ性も説教くさいものではない。淡々とである。
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メインキャスト
山根博士:志村喬
山根博士の娘、恵美子:河内桃子
芹沢大介:平田昭彦
志村さん、平田さんは僕が物心ついた頃にはベテラン俳優。志村さんはいかにもまじめな古生物学者。平田さんは自らの発見、発明品の影響に一人悩む天才化学者。公開当時志村さんは50歳ちょっと前、平田さんは26、7歳。二人ともカッコいい。なお、志村さんの出演した「七人の侍」も1954年公開。
河内さんは申し訳ないけど、映画・TV等たくさん出演されているが、映像作品で見た記憶はない。本作出演当時22歳。かわいい感じの美人さんである。
お三方とも鬼籍に入られて久しい。
恵美子と惹かれあう、主役(南海サルベージ)尾形秀人は宝田明さん。
宝田さんはミス・ユニバース日本大会司会者としての印象が強い。これまでも「ゴジラ」でのシーンは何カットか見たことがあったが、全編はもちろん初めて見た。撮影当時19歳から20歳。ものすごく大人びている。そして大柄である。明らかに周りのキャストより頭半分以上背が高く。肩幅も広い。当時の日本人の体型としては規格外ではないか。いかにも「東宝ニューフェイス」、新時代のスターさんという感じである。今年のアメリカ映画「GODZILLA 3D」にも出演されている。
なお、OPクレジットで菅井きんさんを見つけた。作品中盤で国会議員として登場している。ゴジラの情報を隠そうとする与党(?)議員を、舌鋒鋭く追求する「婦人代議士」である。
全体を通して映像を補強している劇伴、音響効果はすごい。伊福部昭作曲のテーマ曲は、もはや古典である。
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一部敬称略
*1950(昭和25)年朝鮮戦争勃発、'53年休戦。1954年7月1日に、保安隊が改組され、自衛隊が発足している。
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仕事が忙しい中、出かけてよかった。大満足の映画鑑賞。★はあえてつけない。でも、◎である。