前回の安倍政権時のことと思うのだが、『現行制度の高等学校商業科、工業科を、修業年限5年制のあらたな職業校に再編』という動きがあった。その後の経緯は詳しくはないが、これとは別に、大学の制度を変更する動きがあるようだ。
2月15日(日)朝、日経サイトを見たところ、表記のタイトルの記事が出ていた。ウェブでは記事一部分のみが読める状態なので、お散歩がてら近所のコンビニで購入して、しっかり読んでみた。
月曜日から「プロフェッショナル大学」を検索語で、後追い記事を探したがなさそうだ。日経のスクープなのか、それとも他紙にとってニュースバリューがないのかわからないけど、感想をまとめる。
「新しい制度(かたち)」の大学を作る。その目的は、記事によれば、『企業の即戦力になる人材を育てるため、簿記や金属加工など専門的な技能を習得する新たな大学の制度をつくる。』である。
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この新たな制度の大学は、『現在の専門学校(専修学校の専門課程・高校卒業生を対象とするもの)、高専(高等専門学校)、私立大学などが移行できるようにする。中央教育審議会で議論し、早ければ来年の通常国会に学校教育法など関連法の改正案を出す。新大学に移行する候補を募集し、2017年度にも開設する見通し。』と書かれていた。
2年後である。入学者選抜を考えると2年ない。ずいぶん急いでいる。
赤字部分の「など」が、どんな技能を含むかわからないのでなんとも言えないが、どの程度の人数(入学定員合計)になるのかに注目である。
制度として、『大学制度に新たな区分として「プロフェッショナル大学」を設ける。修学年限は2年~4年。4年間就学した場合、現在の4年制大学の学士と同等の資格を与えるよう検討する。』とのことだ。
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学校の場合「修業」だと思うけど、まあ、ここは目をつぶろう。
学位は「専門職学士(技能名称)」だろうか。2年と3年の修学年限の場合は、「専門職準学士(技能名称)」かな。
この大学(制度・区分名称)、法律施行時、まさかプロフェッショナル大学はないだろう。現実に制度化されたら、「専門職大学院」にならい、「高度専門職大学」とか「専門職大学」になりそうな気がする。
なぜ、「学士」の資格(「学位」だろう)を授与するかも記事に書かれていた。『専門学校や短大卒業生は4大卒に比べると待遇の低い企業が多い。』からだという。
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でも、これは日経さんおかしいと思う。
短期大学、専門学校は基本的には修学年限は2年である。3年間学ぶ短期大学、4年間学ぶ専門学校も存在する。でも、4年間学んだもの(のみ)が現在の4年制大学の学士と同等の資格を授与されるのでは、何が変わることになるのだろう。やや突っ込み不足である。
青字部分の原因は二つ考えられる。
①学習年数分の知識、技能を、卒業生が持っているという前提
②少なくなったとはいえ、年功序列の影響
(異なる最終学歴で、同賃金では人を集めにくい。)
もしも4年間学ばない者(修学年限が2年、3年の者)が、現行制度下で修学年限の専門学校や短大卒業生が、『4大卒に比べると待遇の低い』とされる状態を脱するには、20歳、21歳段階で「専門性の高い知識・技能を修得済み」と、社会に認知される教育課程(の大学)とならなくてはいけない。そうでなくては待遇改善につながらないのではないか。準学士(短大卒業)、専門士(専門学校卒業)との違いは何か、明確化する必要があるだろう。
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わからないことがまだある。
専門学校や大学、短期大学が移行する場合は、いずれも18歳からの2年間から4年間である。高専の制度設計はどうするのだろう。金属加工などの専門的な技能というのならば、まず何よりも高専の制度変更を考えなければならないだろう。
現在高専は基本的に5年制。中学校卒業生が5年間(高校生年齢の3年+2年)学ぶ。これを「プロフェッショナル大学」に移行するとして、やはり4年目の段階から選択制にするのだろうか。『18歳からの4年間で、「プロフェッショナル」と見なされるレベルに持っていけるのか』そんな考え方、危惧はないだろうか。
高専1年~3年
①高専2年(4年目5年目)=高専卒業
②プロフェッショナル大学2年間
③プロフェッショナル大学4年間
これだけの分類を各高専で備えるのは難しそうだ。やはり学校ごとに①②③のどれかに移行することになると思う。
なお、国立の高専は2004年度から、「独立行政法人国立高等専門学校機構」の元に運営されている。「プロフェッショナル大学」に移行する場合、この法律も改正になる。また、専門学校から移行の場合、いわゆる1条校になるのだろう。
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記事には以下のような記述もあった。
『教員は産業界からの登用を重視する。会計士やエンジニアなど、新設する大学の特徴に合わせて専門家を雇う。各地の有力企業を退職する人も積極的に講師として招き、地元の企業で必要な能力を得やすくする。
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これはあえて書かなくてはいけないのがつらいところだが、誰でも先生になれるわけではない。そんなにたくさん人がいるものだろうかと思う。
『設置基準はいまの大学制度より緩和する。グラウンドなどの敷地がなくても新設できるようにする。駅前のビルなどを校舎に利用すれば、夜間コースなどをつかって社会人でも学び直しに活用しやすくなる。
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易きに流れると、評価も高くはならない危険性を常に心にとどめるべきだ。新たな制度の大学が「P大」とか言われないように高みを目指すべきである。
「新たな制度の大学」として、専門学校とも、工業系大学学部とも違うものを作る。制度設計、関連法規の改正。設置認可申請の受付と可否の審査。認可後は各プロフェッショナル大学の学生募集活動。くどいようだが、もしも2017年スタートならば、下線部は2015年度内しか時間がない。それ以外を、向こう2年以内に済ませなくてはダメなのである。
・・・できるのかな。
学校制度や入試制度は過去の例を見ても、ひとたび制度を新設・改廃すると、微調整はともかく、なかなか大きく変えたり、やめたりできないのだ。
・・・覚悟は、あるんだろうなぁ。