5月になりました。臨時休業は5月も続きます。COVID-19への対応として、小学校1年生、6年生、中学校3年生から学校再開や、「9月入学」が話題です。
前者はともかく、後者には一つ間違い or 勘違いがあります。注意すべきは「9月入学」がカッコ付きということです。あらためて言うまでもないことですが、小学校、中学校、高等学校の1年生は先月「入学」済です。彼ら彼女たちを含めて、全ての在校生の修業年限は、それぞれ6年3年3年*です。現下の状況に鑑み、学習の遅れ等を配慮、実質的に9月入学と同じ(一斉スタート)になるようにする。
言いたいことはわかります。でも、それと9月入学は別ものです。
9月入学ということになれば、卒業は6月頃です。
現在の児童生徒たちの卒業も入試も就職も、各種検定試験、国家試験も全部ちゃんと相当の時期にずれるのでしょうか。これができないから大学秋入学が頓挫したのです。
来年度新入生からとしても、現在の学校が3月末で区切りなのを変更しなければ、少なくとも初年度は3月卒業、9月入学というギャップ(無学校期間)ができます。現在の児童生徒も全部「9月入学」「9月始業」として学校年度のスタートをずらす。結果として、卒業の時期が全部ずれる。それを一度にしなければ、「9月入学」にはなりません。最上級学年だけ、卒業を3ヶ月ほど後ろにずらしますか。義務教育のスタートを動かすことだという認識を持たないのは危険です。
物事を決めるとき、勢いが必要です。でも、勢いで動かしたものは、必ず後々何か不具合が起こります。そしてその時には、往々にして勢いの元はこの世にはいないものです。
よかれと思い、制度設計(変更や新設)する。ひとたびそれが動き始めると色々でてくる。21世紀、教育分野は様々なことを実行しました。
・学校設置会社による特区での学校設置(’04年度)
・薬学部6年制に移行開始(’06年度)
・専門職大学設置(’19年度)
・専門職大学院設置(’03年度)
・法科大学院設置(’04年度)
・教職大学院設置(’08年度)
・義務教育学校設置(’16年度)
中等教育学校の設置は1999年度
・大学入試制度変更(変更中止,延期)
枚挙にいとまがないとまでは言いませんが。
だから制度をいじるなとは言っていませんよ。
僕はもうすぐ元先生になる人間です。9月入学でも秋入学でも名称はかまいません。決まれば公立学校(公務員組織)も、私立学校もきちんと対応します。是非、落ち着いた議論にしてほしいと思います。
現下の状況は「(第三次世界)大戦なみ」とも表されています。死者数を比較すれば、少なくとも日本国では、明らかに誇張です。起きていない世界大戦になぞらえるのは、如何なものかと思います。亡くなられた方の数を比べても、違うことはわかります。誇張が誤認につながり、社会の判断をミスリード。意図していても結果的にでもです。
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1日にこんなニュースがありました。
経団連 連休明けに“9月入学”議論を開始(日テレNEWS24)
新型コロナウイルスの影響で休校が長引き、「9月入学」について政府でも検討が進む中、経団連が、大型連休明けに9月入学の推進に向けて議論を開始することがわかりました。
経団連では、かねてより、グローバル人材の育成や受け入れなどの観点から9月入学の導入を提言してきました。ただ、大学の入学時期を変えるには、企業の採用時期や国家試験の日程など社会全体で変わらなければ支障が出ることが課題となっています。
一方で、大企業ではすでに4月一括採用以外にも、9月や通年での採用を取り入れる動きが進んでいて、経団連ではグローバルスタンダードに合わせるために入社時期の多様化が必要だとしています。
経団連は、大型連休明けに経営者と大学の代表者らからなる協議会で、9月入学導入の実現や課題について議論していく方向です。(下線は僕が引いた。)
大学入試にかかることのようです。義務教育をどうするかについての視座がない議論は、ダメですよ。
どうなることか。
あの時から社会情勢はどのように(どんな方向に,どれくらいの幅で)変化したのでしょう。繰り返しになりますが、伝染病対策と綯い交ぜの議論は、やめるべきです。
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*高校の在学年数は3年以上です。定時制課程はおもに4年、通信制は無学年(在籍年数3年以上とだけ規定)もあります。
大学秋入学について、その歴史的経緯を含め、’12-01-23、「東京大学、秋入学に全面移行」でまとめたことがあります。
東大の秋入学にかかわるエントリ(その後の動き)は、’13-06-19、「東大、秋入学見送り」でさかのぼれます。