Yomiuri Onlineが5日に報じたニュースである。それによれば、『複数の市町村からなる広域地区では同じ教科書を使うことを定めた共同採択制度について、市町村ごとの単独採択を容認する方向で検討に入った』とのこと。
(同じ教科書を使うじゃなくて、正しくは同じ教科書を採択するだろう。)
記事見だしにもあるとおり、これは法改正が必要になる。
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義務教育諸学校で用いられる教科書の採択権限は、市町村教育委員会にある。当該学校の先生にはない。これは、地方教育行政法による。
教科書は法律上、市町村単位で選べる。しかし、教科書無償措置法は、国が教科書を無償で提供する前提として、市や複数の市町村で採択区域を設定した上で、共同採択するように定めている。
(採択地区、埼玉県は10区域だったかな。)
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関連法律を読んでみることにしよう。まず、地方教育行政法は、正式には、地方教育行政の組織及び運営に関する法律という。
そこには、こう書いてある。
第3章(教育委員会の職務権限)
第23条
6 教科書その他の教材の取扱いに関すること。
次に、教科書無償措置法を読んでみる。この法律は、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律が正式名称である。
第3章(採択地区)
第12条
都道府県の教育委員会は、当該都道府県の区域について、市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域に、教科用図書採択地区(以下この章において「採択地区」という。)を設定しなければならない。
第3章・第10条が都道府県の教育委員会の任務の規定であり、同・第11条が教科用図書選定審議会の規定である。「行政法」には教科書採択権限が市町村教育委員会にあることを述べているが、「措置法」により、その権限が実質的に制限を受ける形になっている。
読売の記事によれば、『採択区域は今年の5月時点で582地区。横浜市、さいたま市等の大都市を除くと、大半は複数市町村で採択区域を構成している。』とあった。
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さて、何故こんな話しがでてきたのか。それは、沖縄県八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)で来年度から使われる中学校の公民の教科書が採択できない(決定できない、一本化できない)ことによる。新聞はこのことを「混乱」(が続いている)と書いている。これは読売だけではない。
この件については、
【沖縄 教科書】
で検索すれば、全国紙の記事がまだ読むことができる。
教科書無償措置法は、このような事態は起きない(だろう)という前提で書かれたことは否定できない。それが欠陥であると言うことはたやすい。
従来の採択区域は同法にもあるように、市単独、市プラス周辺町村(郡)単位からなることが前提である。後者は平易な言い方をすれば、隣近所の市町村(教育委員会や諮問を受ける審議会)である。それでも、意見の相違がでる可能性は考えておくべき事項だったと思う。
今回の沖縄県八重山地区の混乱(新聞により評価がわかれている)は、「沖縄県」「公民の教科書」ということで目立ってはいるが、日本のどこでも類似の問題は起こる可能性がある。平成の大合併は、従来の区域をまたいだ市町村合併も生んでいる。現に僕の住んでいるさいたま市と、合併前の旧岩槻市は、教科書採択区域は別々であった。社会環境(地域)の変化を考えれば、何か手を打っておくべきだったとされても、反論がしにくい状況である。だから法改正を検討することになったのだ。
法改正ができれば、これからは八重山地区のようなことに対応できるだろう。でも、それで一件落着とはならないのだ。忘れてはいけないのは、この件で文部科学省・沖縄県教委・関係市町村間で、すでにいろいろ起きてしまっていることだ。現在起きていることをどのようにハンドリングするか、すでにこじれている部分をどう解決するか。ここに力を注がなければならない。
沖縄県の基地問題は国際問題・政治問題として注目される。しかし、この問題も教育行政上の問題であると同時に、政治問題化している。非常に心配である。