端的に言ってモード・バーロウ著「ウォータービジネス」の言いたいこと以下のような内容ではないかと思われる。
つまり、
1.人類は経済活動をするな。
2.国家間の借款では、貸した方の国はタダでくれてやったと思わねばならず、借りた方の国は借金は踏み倒しても構わない。
3.大企業は全て悪だ。
4.大企業ばかりではなく私企業は全て悪で、市民団体、労働組合は全て善だ。
以上のことを総合すると、本書は「左巻き」とうことになる。
たしかに資本主義は悪で共産主義は善のような構図が見えてきて、
「本書は水資源問題にからめた左巻き思想の入門書か」
と思わせるものが全編に漂っている。
事実、そんな雰囲気がみっちりと漂っているので、著者の近影が書籍に掲載されているにも関わらず、読み進んでいるうちに作者の顔に福島瑞穂の顔のイメージが重なってくるという、非常に持って不愉快な体験をすることになった。
それはともかく、そういう不愉快で不可解な部分を除くと、本書が提起している水資源の問題は本当に深刻的だ。
「日本は水に困らないから、どうでもいいや」
という考え方も改めねばならないことに気付くことになる。
日本が大量に輸入をしている食料品は海外の水資源を使って栽培されており、これらを食べることは、その国の、そして地域の水資源を日本人が大量に消費していることにほかならない。
その大量の水資源に巨大企業が群がって利益をむさぼるという構図は、本左巻き書籍が提示する通りなのである。
考えてみれば小さなペットボトル一本のエビアンが100円以上もするのだ。
300mlくらいで100円なので、ガソリン価格の3倍はしている計算になってしまう。
ぼったくりなのだ。
タダの水なのに、それをフランスかどっかで汲み上げ、石油資源をタンマリ使ったペットボトルに詰め込んで、これまた遠路はるばる日本まで海上輸送。
健康に良いかどうかは知らないが、そのために大量のCO2を排出しているのであれば、ある意味、エビアンだとかボルビックは人類の敵以外の何ものでもない。
公営水道の水が1番健康に良くって環境にも優しいのだ。
私の住む大阪府では「公営水道の水」を缶詰めにして防災用や公営水道のPRに使用しており、私も某市の水道局の方から一缶頂戴したことがあるが、正直言って、冷やせばエビアンやボルビックとちっとも変わらない味なのであった。
ということで、本書では数々の問題が提起されているが、それを非難するばかりで解決策がほとんど明記されていないところがいかにも「左巻き」でははあるものの、今、世界を取り巻く水問題、とりわけ上下水道の問題を知るには、なかなかな良書であるといえる。
とりわけ朝日新聞的なものの考え方をおする人には良書に違いない。
ともかくお勧めしたくないが、お勧めしなければならない一冊だった。
~「ウォータービジネス」モード・バーロウ著 佐久間智子訳 作品社刊~
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