スピルバーグの最新作、「タンタンの冒険 ユニコーンの秘密」は全編CGで製作された画面で、実写ではほとんど不可能なカメラワークの連続と超アップテンポな物語展開で、中1の私の娘は大ハシャギ。
しかし私と嫁さんはぐったりと疲れてしまったのであった。
レイトショーを見に行ったので、見終わったあとは激しいスポーツをした後のように良く眠れたのだが、かなり疲れる映画であったことは確かだ。
正直、IMAXで、しかも3Dで見るのは、かなりの体力が必要である。
最近の映画の傾向としてコンピューターグラフィックスを多用するものが少なくない。
一般のドラマでも従来は手書きで描いていた街並みや背景などのマットペインティングをコンピューター・グラフィックスで描くことが多く、ましてSF映画やファンタジーとなるとCGのオンパレード。
少々食傷気味の気配がある。
ピクサーが製作するようなアニメーションと今回の「タンタン」に見られるようなCGも、まったく異なったものだと私は考える。
ピクサーはやはりアニメの世界でのCGだが、タンタンや昨年公開された「クリスマスキャロル」のような映画は実写に限りなく近づけようとするCGであって、質感も表現様式も全く異なるものだ。
「まるで実写みたいや」
と見終わった娘は覚えたての「実写」ということばを使って喜びの感想を叫んだのだが、この「実写みたい」な表現が、私には気味が悪くて仕方がなかったのだ。
そこで思い出されたのが「不気味の谷」理論。
東京工業大学の森政弘先生が提唱された「ロボットがよりリアルになってくると人はそれを不気味と感じる谷がある」という理論だ。
「タンタン」は不気味の谷のまっただ中にある映像で、スピルバーグは随分な冒険をしたものだと驚きを感じたのであった。
きっと、この手の手法が完成されつつあり、それを使って最初の大作を監督するに相応しい人選として選ばれたのかも知れないが、こういう作り方をするのであれば、やはり「タンタン」は実写とCGの組み合わせか、実写のみでチャレンジしてほしかったと思う。
スピルバーグとILMがタッグを組めば、もっとタンタンの魅力を引き出す方法もあったのではないか、と残念でならない。
CGを駆使して最新テクノロジーによるスピード感のあるカメラワークとアクションでも、30年前にハリソン・フォードが演じたレイダースの「アナログアクション」には敵わないと思うこと仕切りなのであった。
馬に乗り、ナチスを追いかけ、走るトラックの下をかい潜り、相手をパンチで打ちのめす。
こんなハラハラドキドキ感は、今のスピルバーグの映画には、無い。
なお、タンタンの「Tin Tin」を「チンチン」とか「ティンティン」と呼ぶ人が多いが、あれは「タンタン」と呼ぶ。
映画でも「ティンティン」と呼んでいたが、タンタンの原本フランス語では「Tin Tin」と書いて「タンタン」と読むのだ。
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