母がなくなってから父が実家で一人暮らしをしているので週に二度ほど面倒を見に出かけている。
母が無くなったあとの一ヶ月ぐらいは何だが寂しげにしていたのだが、もうすぐ一周忌をむかえる最近になると結構気楽に生活しているのでなんとなく安心だ。
そんな父。
4ヶ月ほど前に、
「この薬を買ってほしいんじゃ」
と新聞広告を差し出した。
なんだなんだと見てみると北陸にある通販薬の会社の広告で節々の痛みや体調改善に役立つという薬を売っている。
仮にこの薬を「KW薬」と呼ぶことにしよう。
1瓶の価格は約5000円。
毎日2錠づつ飲んで1瓶が約1ヶ月分になっている。
「高っかい薬やな〜」
と私が言うと、
「でも効くんじゃ」
と父。
父は昨年暮れに体調を崩して一時入院。
その後も年齢が年齢なので体調は完全には回復しないが、自分で生活するには支障はないくらい元気さと憎まれ口をきくようになってきているのだが、それでも年寄らしくあちこちに痛みや不調を訴える。
病院から処方される薬ではなく市販薬の方が効くというので多分プラシーボ効果も手伝っているのだろう。
主治医の先生に相談すると、
「市販薬は大した薬害はないのでいいですよ」
とのことで大手を振って飲んでいるというところだ。
それにして一ヶ月5000円はいささか高価だ。
件の「KW薬」は調べてみると通販だけで売られているようで3ヶ月分まとめて買って、しかもその後自動的に毎月送られてくるシステムに加入すると3本あたり1000円ほど安くなるという。
15000円が14000円になるのだそうだ。
バカにしている。
正直そう思った。
念の為近くのドラッグストアで探してみたもののやはりない。
このまま諦めると悔しいので調査力を評価されている私の本業スピリッツで動くことにした。
で、本気で調べてみると同じ成分同じ質量、ただし別の製薬会社の製品があることを発見。
しかも市井のドラッグストアで売られているらしいので早速いつも利用している大手チェーン店に出向くと、ありました。
瓶のサイズもほとんど同じ。
錠剤の数も一緒。
箱に記載されている成分表をチェックすると、やはり成分、量が全く同じ。
で、価格は2500円で少しお釣りがあるような金額なのであった。
北陸の通販製品は市井で売られているものを倍以上の価格で販売している疑いが生じた瞬間なのであった。
さらにこの倍額販売を証明する広告も発見。
父に送られてきた通販カタログを見てみると、膝サポータが売られていた。
価格2500円ちょっと。
写真を見る限り私が使っている大手ドラッグストアチェーンで買ったものとまったく同じ。
私はカタログ価格2500円ちょっとの製品をいつも980円で購入している。
もう間違いない。
膨大な広告費。
電話応対。
積極的な販売活動。
そのために市販のものを倍額で販売して粗利を稼いでいる会社なのであった。
ちなみにドラッグストアで購入した薬でも効果は変わらないと父は言う。
薬通販ボッタクリを暴いた瞬間なのであった。