萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第37話 凍嶺act.3―side story「陽はまた昇る」

2012-03-22 23:38:10 | 陽はまた昇るside story
青と銀、凍れる世界で



第37話 凍嶺act.3―side story「陽はまた昇る」

北岳の夜空は銀砂の色だった。
透明な紺青の天球は白銀の煌きに隙間ない。
凍てつく静謐には星々が共鳴している、そんな感覚がごく自然に湧いた。
遠近感が狂うほど眩い星輝きに酔いそうで、英二は真白な息と微笑んだ。

「…すごい、星が近いな?」
「だろ?北岳の冬はさ、ほんと星が綺麗なんだ。ちょっと待ってくれな?」

ザックを背負ったまま国村はカメラを北岳へと向けた。
星灯かがやく白銀の雪嶺は、濃い藍の空から浮かびあがって瞳に迫る。
青銀の星ひしめく輝度の高い闇は、中天はるかな透明に意識が吸いこまれてしまう。
空見あげている吐息は厳しい山夜の寒気に白く凍っていく、気温は零下何十度だろう?
ネックゲイターを引きあげたとき、国村もカメラをザックに収めた。

「お待たせ、じゃ、行こっか」
「うん。星の雪山ってさ、ほんと…きれいだな」
「だろ?冬の山はね、そりゃ厳しいよ。でもさ、いちばん綺麗だって、俺は思うね」

ヘッドライトで歩きながら嬉しげに話す国村に英二は微笑んだ。
今日の一年前、英二は大学4年生で卒業式を待つばかりだった。
あのときも、この空がここにはあったのだろう。そう思うと知らないでいたことが勿体無かった。
もっと早く知ればよかった、昔の自分への後悔と一緒に英二は口を開いた。

「こんな世界があるなんて俺、去年まで何も知らなかった。もっと早く知ればよかった、
あの頃から真面目に、適性や進路を考えればよかった。努力もしないでいた、あの頃の自分が憎たらしくなるよ。
もっと俺が早くから、山の技術を身に付けられていたら…今シーズン、もう少し国村の歩調に合わせれたかもしれないのに」

もし自分が早くこの世界に向き合えていたなら?

この「時間のリミット」を英二はクライマー任官が決って考え始めた。
任官によって8,000m峰14座の踏破が現実になった、この実感が自分の現実を見つめさせた。
それまでは自分の幸運を単純に喜んで努力してきた、けれど現実となった今は自分の決定的な不足を思い知らされる。
この不足は今からの努力で補えるものじゃない、後悔への素直な想いに英二は口を開いた。

「今シーズンは国内で終わる、8,000m峰は早くても俺の初任科総合が終わった後だ。
その頃にはもう、俺たちは24歳になっている…14座踏破をしていくなら、今シーズンも8,000m峰、登りたかったよな。
俺、もっと早く、自分に正直に生きていたら良かった。そしたら『山』の世界にもっと早く出会えていたかもしれない。
もっと早く俺が山ヤになって、最初からクライマーとして任官できていたら。今頃は国村と、8,000m峰に立てたかもしれない」

いま自分たちは23歳、14座制覇を目指すなら、既に8,000m峰に幾つか登頂しておきたい年齢だろう。
6,000m峰なら大学時代に踏破する者も多い、せめて6,000m峰にでも今シーズンに登ることが出来るべきだった。
もっと早く自分が「山」の世界に立っていたのなら、今この時間に立っている場所は違っていた。
ちいさく笑って英二は言葉を続けた。

「後藤副隊長は警視庁随一の山ヤだ、それでも50歳を過ぎて国村とアンザイレンを組めなくなった。だろ?」
「うん、そうだね。後藤のおじさん、50歳までは俺と組んでいたからね」

からり笑って国村は頷いてくれる。
国村は高校1年生の春から後藤とアンザイレンパートナーを組んでいた。
そして任官2年目までは国村と後藤は一緒に海外遠征で8,000m峰の登頂にも参加したと聴いている。
そのあと任官3年目からの国村は、国内の単独行だけだった。
明るい笑顔で隣は笑っている、けれど英二は心が軋んでしまう。それでも英二は言葉を出した。

「国村はパートナー不在になった、だから副隊長は国村をハイリスクな海外遠征には出したがらなかった、だろ?」
「まあね、後藤のおじさんもさ、心配性なんだよね」

後藤副隊長の気持ちが英二には解る、また深く心が軋むのが痛い。
自分の友人だった国村の両親と同じ遭難死の轍を踏ませたくなくて、後藤は待っていたのだろう。
自分の大切な友人の遺児が、アンザイレンパートナーを見つけてリスクを減らすことを後藤は期待していた。
その期待に自分は少しでも応えられるのだろうか?心に覚悟と痛みを見つめながら英二は口を開いた。

「おまえのパートナーは若いヤツが良い、って副隊長は言っただろ?副隊長自身が年齢で国村と組めなくなったから」
「そうだね。パートナー解消する時にさ、おじさんに言われたな」

ふっと底抜けに明るい目が、すこし寂しげでも温かく笑んだ。
どこか懐かしく、心から謝意を示すような温かい貌で国村は教えてくれた。

「後藤のおじさん『俺も爺さんになってしまったよ、済まないなあ』って笑ってさ、涙ひとつ零してくれた。
唯でさえ俺、体もでかい上にさ、気難しいだろ?で、後藤のおじさん以外で組める人、もういなかったんだよね」

後藤の涙はきっと、無念な想いと精一杯の達成感だったろう。
やっぱり自分はあの生粋の山ヤが大好きで尊敬してしまう、英二は敬愛する上官の笑顔を心に微笑んだ。

「そうだな、後藤副隊長より立派な山ヤはさ、そう滅多にいないよな?」
「だろ?あとは田中のじいさんだけどさ、じいさんはモット年だったしね。中学までで精一杯だったんだ、」

後藤も田中も一流の山ヤだった、それでも年齢は誤魔化せなかった。
こんなふうに、山ヤとして山岳救助隊として過ごす日々に、山の活動能力と年齢の関係が思い知らされる。
そして今、この北岳の峻厳な世界に身を置くと尚更「山ヤの自由と時間」について切実に感じられてしまう。
この「時間」について英二は国村に謝りたいことがある、ゆっくり瞬いて言葉を続けた。

「どんなに優れた山ヤでもピークがある、技術力で補えない体力と生命力がある。
これが人間の現実だ。それは俺たちだって同じだ、この体力のリミットがある、時間なんてない。
本当は今のこの体力で8,000峰に登った方が良かったんだ。今のこの体力なら、より低いリスクで登れたんだ。
もっと俺が意気地なしじゃなかったら、もっと早く自分に素直に向き合えたら、正直な生き方を選べたら?
きっと俺はもっと早く山ヤになっていた…今もう8,000m峰に登れていたかもしれない。なのに俺は、それが出来なかったんだ」

どうせ自分は外見しか認められない。
そんな言い訳に隠れて要領よく生きていた、けれど本当は自分が弱虫なだけだった。
いま隣を歩く国村も英二と同じように外見と内面が大きく違う面が多い、それでも国村は真直ぐ自分に正直に生きてきた。
かなしい孤独にも国村は14年間周太を待ち続けた一途な強さがある、両親の死も父のレンズを継いで向き合う強靭な精神がある。
自分は弱かっただけ、孤独が怖いから適当に周りに合わせて要領良くしていた。心を見てくれない周囲の所為にしていた。
こんな自分の弱さと逃げが悔しい、だからもう逃げたくない。今の想いを英二は率直に言った。

「俺のスタートが遅かった所為で、国村もスタートが遅れることになった。
遅れた分だけ山はリスクが高くなる…俺がいい加減に生きたツケ、おまえに負わせることになる。
だから俺は、おまえの最高のレスキューに絶対になるよ。俺が負わせたツケの分、俺は国村を援けるべきだ。
待っていてくれ、必ず秋には8,000m峰でも国村をサポート出来る俺になる。だから…こんな俺でも待っていてほしい」

フードの翳で涙ひとつこぼれて頬に小さな氷が落ちた。
その頬に登山グローブの指先がそっと伸ばされて、涙の氷は国村の掌におちた。

「きれいな涙の氷だね、宮田?」

登山グローブの掌で涙の氷がヘッドライトに煌いている。
自分の涙が氷になったのは初めて見た、すこし驚いて見つめている英二に細い目が温かく笑んだ。

「おまえの『山』への後悔と愛情がさ、結晶されているな。宮田、これはね、俺がもらうよ?」

底抜けに明るい目が笑うと、国村は登山グローブの掌に唇をつけた。
そして唇から掌が離れた時には、英二の涙の氷は消えていた。

「さて、これで俺はね、おまえの想いは受けとったよ?だからもう気にするな、過ぎた時間は仕方ないだろ、」

ほんとうに国村が言う通りだな?
すこし笑って頷いた英二に国村は笑って続けた。

「それにさ?俺と出会う前に、下手に山を歩き出して、変な癖つけちゃうよりもね?
俺と出会ったのが『お初』で手垢が付いていないから、おまえ、正しい良い歩き方とか身に付けられたかもしれないだろ?」

たしかに国村が英二にとって最初についた身近な先生だった。
学ぶ点でも要領がいい英二は真似て身に付けることが得意でいる。
しかも国村と英二は体格もよく似ているから真似やすい、だから英二の登山技術は国村の写しだった。
最初に川苔山に登ったときが懐かしいな?記憶に素直に笑って英二は頷いた。

「そっか、それはそうかもな?」
「だろ?やっぱりさ、俺と出会ってから始めて良かったんだって。おかげでね、おまえの初体験をさ、俺はいっぱい貰えるし」

また可笑しい言い回しで国村は笑ってくれる。
こんなふうに国村は明るい大らかな優しさがある。
こういう友人が好きだ、素直に英二も一緒に笑った。

「その言い方、好きだな?国村、」
「ああ、大好きだね?なんか愉しいだろ。でさ、俺は体力自信あるから。1年やそこら遅くなったって平気だね」
「そっか…じゃあ俺もさ、体力の維持に頑張るな」

笑いながら広々とした間ノ岳の山頂へと登りあげた。
標高3,189.3m、間ノ岳は南アルプス第2峰。日本第4峰になる。
名前の由来は北岳・農鳥岳と合わせて呼称される「白峰三山」の中間に位置するとの説がある。
昏い4時の空は夜明けが遠い、それでも雪覆う間ノ岳山頂は青く闇に輝いている。
国村は三角点の雪に登山グローブの掌を押し込んで、満足げに笑った。

「うん、俺が一番乗りだね。に、してもさ、宮田?これ、温かくて良いな」

いま雪に入れた右掌の手首を、左手でふれながら底抜けに明るい目が笑ってくれる。
国村と英二はアンダーグローブの手首に、低温薄手のカイロを貼ってからアウターグローブをはめてきた。
この案は結構良かったかな、三角点の手形に自分の手形を重ねて抜くと英二は微笑んだ。

「簡単な対処法だけどね、末端は凍傷とか怖いだろ?
ここ北岳では死亡原因が凍死が一番だし、凍傷で切断した話もたくさん読んでさ。
だから吉村先生にも相談したんだ。それで、このカイロなら低温火傷も起こし難いし薄手で良いだろう、って教えて貰ったんだ」

「薄手なのが良いよ、手首の稼働を邪魔しない。足首にも入れてくれたけどさ、爪先まで温かいよ」

うれしそうに笑って国村は南方を指さして「行こう?」と促してくれる。
かるく頷いて歩き出しながら英二は凍傷予防の話をした。

「うん、『首』って言われるところを保温すると良いんだ。
だから首もネックゲイターで保温して体幹温度を保つ、背骨に沿った部位をカイロ保温すると効果あるよ。
でさ、特に手足の末端は血流が悪くなりやすい、それで凍傷が起きる。だから関節部分『首』を温めて血流を保てば凍傷が防げる」

雪山で身の安全を守るには「体温の保持」は重要になる。
低体温症の防止と凍傷の防止、この2つがクリアできないと生命の危険に直面する。
簡単な処置だけれど貼るカイロによる温湿布は効果が高い。ヘッドライトの下で細い目を笑ませながら国村は頷いた。

「そう考えるとさ、貼るカイロ考えた人って偉いよな?やっぱり山ヤなら、凍傷は避けたいからね」

「ほんとうにそうだよ。あとはね、水分と塩分の不足が怖いよ。
冬山はトイレが少ないから水分補給をしない、それが原因で血流を悪くして凍傷になるケースが多いんだ。
富士山でもちょっと話したけどさ、温かい飲み物をこまめに取るのが、凍傷予防には本当に効果的なんだよ。
体内から熱を入れられるし、水分補給も出来る。紅茶とかの発酵茶やスープなんか良いんだ、日本茶は冷えるからダメ」

凍傷で指を失ったクライマーは何人もいる。
それはヒマラヤなどではなく、国内の3,000m峰で普通に起きていることだった。
もし雪や悪天候などで濡れてしまえば冷えきって、末端は血流不足を起こして凍傷に繋がる。
そんな悪天候になったらどう対処するべきか?ほんとうは天候不順は避けた方が良い。
それでも当ってしまえば、それこそ命懸けになるだろう。そんな時の遭難救助に国村が首傾げた。

「ほんとにさ、凍傷も凍死も起きるよな?
唯でさえ冬山はさ、ちょっと天気を読み違えれば即、死になりやすい。
自己責任で、って言ってもさ?俺たち山岳救助隊は呼ばれたら行くしかないもんね?この間の雲取とか酷いよなあ」

奥多摩は降雪も多い、それを調べもせずに都心から気軽に訪れるハイカーも多い。
雪山の美しさにひかれて登ったはいいけれど、吹雪で下山できないケースも多くある。
この間の雲取山での救助を英二も想いだして、困り顔で微笑んだ。

「うん、凍傷が危なかったな。冬山はグローブ2枚重ねにしないとね?
でも間に合ったから、切断ってことは無かったし。よかったよ、次からは気を付けるって約束してくれたしさ」

「ほんと宮田、やさしいよな?その笑顔も反則だし。おまえに掛るとさ、大概の悪人でも改心しそうだね?」

半分呆れながら国村は褒めてくれる。
そんなに立派なもんじゃないのに?すこし首傾げて英二は綺麗に微笑んだ。

「そうかな?そうだと良いな。でも俺こそね、大切な人にいっぱい心配かけて、悪人だよ?」

雪山は美しい、けれど厳寒と雪氷の冷たさは生命の危険にそのまま直結していく。
それを周太はよく解っていて、いつも英二の心配をしてくれる。そんな心からの想いは幸せが温かい。
いまごろ周太はまだ眠っているだろう、どうか出来るだけ安心して眠っていてほしい。
遠い東の空に眠る大好きな面影を抱きながら、細い稜線と急登を辿って農鳥岳山頂に英二は立った。
ここもまだ今日の踏み跡はない、国村は三角点を掘り出すと満足げに微笑んだ。

「ここも俺が一番だね、」

農鳥岳の山頂は東西に分かれている。
南東側の農鳥岳は標高3,026 m、 北西側の西農鳥岳が3,051 mと西農鳥岳の方が高い。
けれど名称の上からは農鳥岳が本峰扱いされ、三角点も農鳥岳にしかない。
この三角点に国村はいつも通りに手形を付けて笑った。

「ほんとはさ、西農鳥にも三角点あるとイイのにな?ほら、宮田もやんなよ、」
「うん、ありがとう。なんで西農鳥には無いのかな?こっちが本峰扱いだからってことかな、」
「だな?まあ、名前の由来がさ、春に山頂の東面に白鳥の雪形が現れるからなんだよ。それに近い方が本峰扱いとか?」

話しながらクライマーウォッチの時刻を見ると5時過ぎだった。
途中の急登が時間かかるかなと思ったけれどなんとか予定通りのタイムで来れた。
少しほっとして辺りを見回すと、夜明をひかえた最も暗い黎明時に雪嶺も空も鎮みこんでいる。
夜明けを農取小屋から見たいと国村は言っていた、あと1時間半で戻ることになる。
いま往路で来た急登を今度は降ることになる、アイゼンワークに注意しないと滑落が危ないだろう。
そんな考えを巡らしていると、国村が今度は北を指して促した。

「さて、宮田?今度は復路だ、行きと帰りの山容の違いを見たいとこだけど、こう昏いんじゃねえ?」
「たしかに見えないな?でも体の感覚としての違いが解かるから」
「よし、解ってきたね?通常タイムで1時間10分、雪も締って歩きやすいから日の出には充分着けるね。じゃ行くよ」

からり笑うと国村は北へ向けて下り始めた。
そのトレースを英二は追っていく。国村みたいに先頭を行けるように自分も早く成れたらいい。
奥多摩の山にはこの5か月間でだいぶ慣れることが出来た。これからもっと多くの高峰を歩いて感覚を磨けたらいい。
かすかに明るみ始めた東の空を視界の端に感じながら、アンザイレンパートナーのトレースを英二は歩いた。



砂払に幕営したのは正午だった。
農鳥岳からの復路は農取小屋と間ノ岳で撮影に立ち止まり、その後も国村は歩を止めてはカメラを使った。
それから北岳山頂から昨日同様にバットレス第四尾根の往復をすると、昨日と同じ場所にテントを張って落ち着いた。
のんびり昼食の肉鍋をつつきながら、今後の予定について国村は口を開いた。

「明日の朝はね、また6時前にあのゲートを通過するわけさ。で、ここを2時に出るか。
それとも池山小屋まで今日のうちに戻って3時に出る、あとは、今日の夜中にゲート越えちゃうかなんだよね」

夜叉神ゲートの監視ボックス。
あの場所の通過時間が、行動にあたっての1つのポイントになってしまう。
いろんな事情が冬山には起きるから、あの監視ボックスも仕方ないのだろう。それでも困ってしまうのも事実だ。
どの方法が一番良いかな?考えながら英二は微笑んだ。

「今日明日まで天気は大丈夫だよな?だったら、明日は1時起きでいいんじゃないかな、寒いだろうけど雪も凍って歩きやすいし」
「よし、さすが俺の可愛いパートナーだね?じゃ、これ食ったらさ、ボーコン沢ノ頭にまた行こうよ。北岳を撮りたいんだ」

英二の答えに満足げに細い目を笑ませて今日の予定を楽しげに国村は決めていく。
国村もそうだけれど、英二もせっかく来て天候も大丈夫なら北岳をもう少し楽しみたい。頷いて英二は笑った。

「うん、いいよ。明日は1時起きで夜間登山になるからさ、今夜は6時には寝るからな?」
「いいけどさ、俺、夕方は富士山と北岳を撮りたいね。日没は17時20分位だろ?そのあと夕飯だけどイイ?」
「食ってすぐ寝る感じだね?でもいいよ、また写真見せてくれな」

そんなふうに決めた予定どおり午後はのんびり雪山を楽しんで、結局シュラフに入ったのは7時だった。
ちゃんと今夜は自分のシュラフに潜るかなと思ったけれど、やっぱり国村は英二の背中にくっついている。
なんだってこんな物好きなのだろう?理由は解かっていても徹底ぶりが可笑しくて英二は笑った。

「なあ、今夜もやっぱりさ、くっつくんだ?」
「そりゃそうだろ?凍死も凍傷も困るからね、」

涼しい顔と声で国村は答えてくれる。
ひとりっこで両親を早く亡くした国村は寂しがりなところがある、そんな素顔も今は見せてくれている。
それだけの信頼を持ってくれているのは嬉しい、ちょっと困りながらも英二は微笑んだ。

「うん、凍死も凍傷も困るな?でもさ、ちょっとさすがに狭いよ?」
「そうだね、じゃあさ、こんど家族用のシュラフ買おっかな。2.5人用とかってあるよね」
「そこまでして、俺と一緒に寝たいわけ?」

なんだか可笑しくて英二は笑ってしまった。
そんな英二の笑顔を肩から覗きこんで、愉しげに国村が言った。

「ああ、寝たいね?可愛い俺のアンザイレンパートナー。今夜も好きにさせて貰っちゃって、いいんだろ?」
「そういえばさ、昨夜も同じこと言っていたよな?好きにする、ってどういうことなんだ?」

昨夜、眠りにおちる最後の瞬間に抱いた疑問を想い出して、英二は訊いてみた。
その問いかけに、覗きこんでくる雪白の貌が悪戯っ子に笑いだして口を開いた。

「昨夜はね、ちょっと口さみしかったんだよね?で、ドラキュラさせてもらったよ、」
「ドラキュラ?あの吸血鬼の?」

どういうことだろう?
よく解らないまま見つめ返した細い目は、さも愉しいと悪戯に笑んだ。

「そ、吸血鬼だよ?気分だけ、だけどね。み・や・た、」

言いながら国村は白い指で首筋をすっと撫でた。
そんな動きに首傾げて英二は、すぐ気がついて自分の首筋に掌を当てた。

「…おまえ、首筋にキスマーク付けた?」
「おや、今頃気づいたんだね?ま、鏡見る機会も殆どなかったか。ね、宮田?明日これが周太に見つかったら、どうなるかな?」

やられた。
しっかり国村の悪戯に嵌められて、英二は笑ってしまった。

「明日はさ、川崎の家で泊まりだろ?絶対に見つかるよ俺、困るよ、お母さんと周太に説明しないと」
「ふうん、俺にキスされました、って言うんだね?そういうの、周太のおふくろさんって大丈夫なワケ?」

きっと見つかれば笑われて困るだろう、けれど見つかってしまう。
困りながらも可笑しくて、英二は笑いながら口を開いた。

「うん、聡明で真面目だけど、ユーモア好きな愉しいひとなんだ。だからこれ、すごい笑われると思うよ?」
「なるほど、素敵な感じのひとだね?なあ、周太のおふくろさんのこと、ちょっと話せよ」

背中から抱きついたまま国村が訊いてくれる。
ゆるやかな体温の温もりに微笑んで、英二は穏やかな黒目がちの瞳を想いながら口を開いた。

「見た雰囲気はね、周太によく似ているよ。周太ね、眉と口もとはお父さん似だけど、他はお母さん似。
睫が長い黒目がちの瞳とかそっくりだ。でも、お母さんの方が黒目の色が深いかな。穏やかで静かな雰囲気とかも似てる。
年齢より若い感じなのも似ているな、周太って高校生みたいだけど、お母さんもね、まだ40代前半って感じで、きれいなひとだよ」

「周太の将来図で女性バージョンって感じか、そりゃ別嬪で可愛いだろね。おまえ、おふくろさんのことも大好きだろ?」

国村の言い回しが面白い、けれどその通りかなと納得しながら英二は笑った。
笑っている英二を覗きこんで「ほら話せよ、白状しな」と底抜けに明るい目が笑ってくる。
そんな友人がまた愉しくて英二は笑いながら頷いた。

「うん。俺、お母さんのこと大好きだよ?昨日もすこし話した通りだ、穏かで静かで温かくってさ。寛げるんだ」
「家や庭もそんな感じだって言ってたな?やさしい想いと気配で充ちていて、安心するって。いいな、そういうひと」

一緒に笑いながら国村も頷いてくれる。
自分の顔のすぐ横にいる友人に笑って、すこし身じろぎすると英二は国村に向き直った。

「今回の任官書類もさ、湯原のお母さんが俺の第一身元引受人になってくれただろ?
あれも俺、すごい嬉しいんだ。本当に俺のことを、なにがあっても受けとめてくれる人がいるんだな、って嬉しかったんだ」

「あれな、家族や親族以外で認可されるって、珍しいよね?おふくろさん、なんて言ってくれたんだよ」

底抜けに明るい目が温かに笑んで「聴かせろよ」と促してくれる。
後藤副隊長と蒔田地域部長からクライマー任官の内定を承けた、射撃大会の日。
あの後、周太の母が帰宅する頃を見計らって英二は電話を架けた。
そのときの記憶をなぞるよう英二は口を開いた。

「書類のことで電話した時、最初にお母さんに訊かれたんだ。『絶対に私より、周太より先には死なないって約束出来る?』
もちろん俺はね、はい、って返事した。このことは周太と付き合う時からの約束なんだ、絶対に周太を独りぼっちにしないって」

山岳レスキューの人間にとって「死なない」ことは任務の完遂に繋がる。
もし山岳救助隊員が殉職すれば要救助者も共に死ぬ危険が高い、だから「死なない」意志が大切だと後藤もよく言う。
それでも危険が高いことには変わりない、現実に他県警の山岳警備隊では殉職者も出ている。
山岳レスキューに奉職する警察官なら誰もが危険を覚悟する、それでも生きる意志は捨ててはいけない。
それは英二も国村も同じことだった、細い目が温かに笑んでテノールの声がやわらかに微笑んだ。

「うん、…良い約束だな。俺たちにはさ、必要な約束だよ。俺もね、じいさん、ばあちゃんと、美代と約束した。
後藤のおじさんもね、じいさん達に言ってくれたんだ。絶対に死なせないって。だから俺、パートナー居ない間は国内だけだったんだ」

後藤が国村の祖父母に頭を下げに行ったことが、ごく納得が出来てしまう。
国村の祖父母は息子夫婦を山の事故で失っている、本当は大切なひとりきりの孫を同じ場所に行かせたくないだろう。
それでも孫を「山っ子だ」と笑って篤実に受けとめている、その笑顔を英二も見たけれど明るく愉しい勁さがあった。
この約束の為に後藤はきっと、アンザイレンパートナーが不在の期間は8,000m峰に国村を行かせなかったのだろう。
そんな温かな切なさを想いながら見る底抜けに明るい目が笑って、国村は英二に言ってくれた。

「ほんとに周太のおふくろさん、おまえと家族なんだな」

家族になりたい。
昨日の昼に英二は国村にその話をした、それを覚えて言ってくれている。素直に頷いて英二は微笑んだ。

「俺もね、そう思えて嬉しかったんだ。そしたら、お母さん言ってくれたんだ。
『約束は絶対よ?それでも万が一の時は、私があなたの骨を拾って我が家の墓に納めます』って言ってくれた。
『だから安心して自分の夢を生きなさい。私がすべて責任を負います、後の心配はいらないから』そう言って…くれて」

こみあげる想いが心から瞳の奥へと迫り上げていく。
あたたかな熱を瞳に感じながら、英二は迫り上げる想いに微笑んだ。

「お母さん、俺に湯原の印鑑を預けてくれてるんだ、今回も書類を捺印した印鑑だよ。
婚約を申し込んで承けてもらった時に渡してくれたんだ、何かあった時に遣えるようにって。
でさ、印鑑を渡してくれる時も言ってくれたんだ『あなたは、もうひとりの息子だから、持っていて』って。
『私に何かあった時、あなたが私の骨を拾うのよ?そして周太を支えてほしい、家を守ってほしい』そう言ってくれた印鑑なんだ。
家の鍵も同じだよ、お父さんの大切な遺品の鍵を俺にくれたんだ、いつでも帰ってきてって…だから明日も俺、帰るんだ。ただいまって」

頬を横切って涙ひとつこぼれた。
その涙を見つめてくれる友人の温かい笑顔に、英二は綺麗に笑った。

「あの家は俺の家だよ、お母さんは俺の大切な家族なんだ。ありのまま素顔の俺を受けとめてくれる。
あのひとは俺と支え合おうと本気で思ってくれる、家族だって心から笑ってくれるんだ。だから俺の居場所だよ?
俺はね、やっと帰れたんだよ、俺の本当の居場所に。だから国村?おまえと周太が恋仲になってもね、家は譲らないよ?」

自分の家族と家は譲れない。
ずっと探していた大切な居場所は渡せない、やっと帰れた「家」なのだから。
率直な想いに笑った英二に国村は、大らかな笑顔で笑ってくれた。

「うん…いい家だな、大切にしなね。でさ、たまには俺にも遊びに行かせてくれな?」
「もちろん。おまえは俺のアンザイレンパートナーだからね、遊びに来てほしいよ」

嬉しくて英二は友人に幸せに笑いかけた。
そんな英二の貌を見て国村は半分呆れて、けれど底抜けに優しい笑顔で笑ってくれた。

「ほら、その笑顔がさ、反則だよ?そんな顔するからね、美代も周太もさ、おまえに惚れるんだよな」
「え…普通に笑っただけだよ?ダメか?」

すこし驚きながら英二は訊いてみた。
訊かれて国村は、底抜けに優しい眼差しのまま英二の額を白い指で小突いた。

「時と場合に寄っちゃ、ダメかもね?でも俺もその貌は好きだよ。でさ、宮田?
おまえ、さっき俺と周太が恋仲になってもって言ったけどさ?確かに周太、俺に恋はしてくれているんだろね。
でも周太、おまえの方が一緒にいて安心なんだってさ。俺とはたまに一緒にいられたら満足で、おまえはずっと一緒にいたいんだ」

それは周太の態度からも英二自身が感じていた事だった。
このことは多分2つか3つの理由があると英二には解かっている、そのうち話せるものだけに英二は口を開いた。

「周太はね、お父さんが大好きなんだよ。でさ、俺、お父さんと少しだけ似ているんだ。
だからね、周太にとって俺は、父親代わりでもあるんだ。だから全面的に安心も出来るみたいだよ、甘えやすいんだと思う」

「それ、後藤のおじさんも言ってたね。おまえが似てるって。父親代わりね?こればっかりは俺、勝てない、どうしようもないね」

からり笑って国村は英二に抱きついている。
こんな国村も、どこか英二に父親か兄の代わりを求めている節がある。
俺って「お父さん」キャラなのかな?ちょっと可笑しくて笑うと英二は言葉を続けた。

「周太は甘えん坊でわがままで、繊細すぎる。繊細で純粋すぎて、周太は自分の世界が強いんだ。
その分だけ周太は優しいけれど傷つきやすいよ。だから周太、女性を守って生きていくことが難しいんだ。
周太、年上の女の人に憧れたりはするんだよ。でも恋にはならない、それって『男として女性を守る』図太さが無いせいだと思う」

女性と男性では考え方が違う、これは脳と体の構造からもう違っている。
この「違い」を許容できるかが男女の恋愛には大切だろう、数だけは多い経験から英二はそう思う。
ある意味その点で似ている国村はどう思うだろう?そう見た先で自分と似た友人も頷いた。

「うん、たしかにね。周太、子供の頃も中性的でほんと可愛かったんだ。
男の図太さがなくって、ただ繊細で透明感がきれいでさ、浮世離れした雰囲気でね。
マジで俺は女の子だって思ってたよ。ほんとにさ、周太がお父さんになって旦那様になってるのって、想像つかないよな?」

やっぱり同じように想うんだな?
思ったように同じ見解に頷いて英二は言葉を続けた。

「でも周太はプライドが高くってね、男としてのプライドも高いんだよ。
だから同じ男に女みたいに抱かれることもね、たぶん難しいんだ。合意なら良いけど、無理強いされたら本気で傷つくよ。
だから1月の時、俺は周太に嫌われたし、体のことを拒絶したんだ…恥ずかしいけれど、気づけたのは本当に、国村のおかげだよ」

あのとき、英二を諌めるために国村は狂言で英二を強姦しようとした。
あのときの恐怖は「プライドの崩壊」だったと今ならよく解る、男にとってそれは死にも等しいことだろう。
周太を対等な男として見ることを忘れかけていた、そんな自分の迂闊さが悔やまれてしまう。
後悔と羞恥に唇を噛みかけた英二に、からり国村は笑って言ってくれた。

「男が男に無理矢理で手籠めにされたらさ、プライドずたぼろだよな?
だからさ、周太が俺に威嚇発砲したのだってね?単に体についちゃう手垢が問題だったんじゃないよ。
宮田の誇り高さを知っているから、それも含めて守ってやりたかったんだ。同じ男だからこそ、辛いって解るからね」

「うん。俺ね…周太のこと、どこかで女の子みたいに扱っていたなって気づいたんだ。
確かに周太は優しくて繊細で、母性みたいな懐も持ってる。でも、男なんだよな。
誇りある1人の男なんだ。それを忘れたから俺、あのとき…無理にでも抱いちゃえば、解決できるように思ったんだ。
女のひとが相手だとさ、抱けばこっち向いてくれたし、色々と有耶無耶にも出来ていたから。でも、男はそんなの無理だ」

どれだけ自分は周太のプライドを傷つけてきたのだろう?
きっと自分が気づかぬうちに「男」として周太を傷つけてきた、無神経な事を他にもしていないだろうか?
そういう自分の無神経さが周太を尚更に追いつめて、威嚇発砲に繋がったのではないだろうか?
あの周太が拳銃を使った真意の哀しみに、ふっと憂い顔になった英二にテノールの声が低く透った。

「男のプライドと繊細な優しさ、か。この矛盾はね…ほんとは周太、疲れているよ。
だから周太、あんなコトしたんだ。威嚇発砲で処分されて、警察の道を絶たれても良いって想ってた。
俺に返り討ちされても良い、そう思ってたよね?死んでも構わない、終わればいい。そんな顔だったんだ。
だから俺、余計に哀しかった。俺のことを宮田の為に殺してもいい、って想われたことも、周太が死にたがったことも、嫌だよ」

―…俺の掌は、夏が来たらもう…きっと、今と変わって…
 どんな罪に堕ちても俺を捨てないで?…穢れても、愛して?心も体も愛して?
 どんなに穢れても、罪に堕ちても、傍にいて…英二の全てで、俺を受けとめてよ?

ブナの木の前で周太が話してくれたことに、国村は気がついている。
あの優しい掌が、周太が進む道に辿っていく運命を国村も知っている。そして周太が苦しんでいることも。
だからこそ国村はあの翌日に冬富士へと周太を連れて行ってくれたのだろう。
周太から聴いた国村のデートの話を想い出して英二は微笑んだ。

「最高峰の竜の涙を掌に貰った、そう言って喜んでいたよ、周太。自分の掌が信じられる、そう言ってた」

国村らしい純粋無垢な励ましは、同じように純粋な周太には嬉しかっただろう。
ほんとうに喜んでいたよ?そう目でも笑いかけると、すこし照れたように国村は唇の端をあげた。

「あれはね、おまえの頬の傷とさ、お揃いになれたら喜ぶだろうって思ったんだ。
周太さ、おまえのこと本当に好きなんだよな。悔しいけどね。ま、これから14年間分を俺も挽回するけどさ」

あの「竜の涙」でまた国村は挽回できただろう。
この大切な友人の願いを叶えてやってほしい、そんな想いの自分がいる。
普通なら恋人が他の人間と繋がることは嫌だろう、前の自分もそうだった。
けれど今はまた違う立場での自分に気づいている、想うままを英二は言葉に紡いだ。

「お揃いってね、俺にも教えてくれたよ?そんなふうに周太、俺にはいろいろ話せるんだ。
それってね、俺のこと父親みたいに見ている所もある所為なんだ。だから俺も敢えて、全部話すように言ってる。
何でも把握する方が周太のこと、守りやすいから。だから俺、国村との以外のことは大概は解かっていると思う。
だから思うんだけどさ。周太が俺には体を赦せるのって、父親に甘える感じでプライドも他より気にしなくていいからなんだ」

父親を求める想い、これが周太は大きいだろう。
13年間を肩肘張ってきた周太にとって庇護してくれる存在は大きくなってしまう。
けれどプライドが高い分だけ誰にでも甘えられる訳じゃない、そういう男っぽい誇り高さが周太にはある。
そういう誇り高さが入寮前に英二から「かわいい」と言われて腹を立てたし、髪もバッサリ切る潔癖さになった。
この周太の誇り高さを自分は二度と傷つけてはいけない、そんな誓いに微笑んだ英二に国村が笑いかけた、

「周太ってね、凛としてるよ?そこが俺、また惚れるとこなんだ。
だから俺、あのときも宮田が赦せなかったんだ。あのとき、いつも凛としている周太が萎れた花みたいだった。
しかも宮田に怯えていた。それですぐ気がついたんだ、おまえが何やったかってね。で、俺もさ、キレちゃったんだよね。
俺にとって周太は不可侵の存在だよ。マジで俺の『山の秘密』に関わるんだ、だから傷つけることは宮田でも赦せないね」

からり笑って底抜けに明るい目が宣戦布告をしてくれる。
いつもながら明るい恋敵宣言がうれしい、素直に英二は微笑んだ。

「ほんとうに俺、思うんだ。国村がいてくれて、俺にとっても周太にとっても幸せだよ?
俺きっと、おまえに気づかされなかったら周太のこと、どんどん女扱いして、ダメになったと思う。
周太は守らないといけない、そんな言い訳で俺ね、周太のこと籠の鳥にして独占したままでいたよ、きっと。
でも周太は男なんだ、俺たちと同じように。守られるばかりで良いなんて思っていない、誇りを懸けたいって願ってる。
だから俺は周太を信じることに決めたんだ。男として誇りを抱いて選んだ道を生き抜ける、そういう立派な男だって信じるよ」

唯ひとり愛するひと。
その全てを受けとめるなら、その強さと独立心も信じられなかったら嘘になる。
きっと周太は泣くだろう、苦しむだろう。それでも自分が支えればいい。
きっと泣いた先に苦しんだ先に、周太は誇りと一緒に掴むものがある。
そんな想いに微笑んだ英二に透明なテノールが微笑んだ。

「俺も信じてるよ?周太はね、純粋無垢な分だけ勁いから。で、おまえも信じてるよ、俺は」

こんな自分も信じてくれる友人がいる。
やっぱり自分は幸せだな?きれいに英二は笑った。

「ありがとう、俺もね、おまえを信じてるよ?俺のアンザイレンパートナー」

明日は川崎の家に、このパートナーと帰る。
どんなふうに、この最高の山ヤはあの家を見るのだろう?
それがなんだか楽しみに思いながら英二は、北岳の夜をゆったり友人と話に微笑んだ。



(to be continued)

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ

にほんブログ村 小説ブログへにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする