萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

Circuit of the mind ―English×日本語

2013-07-30 12:26:03 | 文学閑話散文系
Words,The force of this expression.


Circuit of the mind ―English×日本語

いわゆる隠れ家ちっくな場所に、雑誌とか自由に読めるカフェがあるんですけど。
そこでスープ飲みながらGARDENなんたらいうミニブックを読んでいたら、

茶道の茶会=tea ceremony 

って英訳にちょっと感動しました。
たぶん直訳英語なら茶=tea、会=partyで「tea party」ですけど、
ceremony=儀式・作法 っていう精神性の高い意味を含んだ言葉を遣ってるんですよね。
茶道の茶会が単なる茶飲み会じゃなくて「道」=精神性が高いってトコ理解して英訳されている。
この訳し方は言語×文化と双方の造詣が無いと出来ないなあと。
で、自分もコレ遣わせてもらおうって思いました、笑

この本は「GARDEN」と題名にある通り世界の名園をガイドしている本です。
日本の名園も幾つか取り上げられる中で、金閣寺か銀閣寺の解説に「tea ceremony」が出ていました。
この二寺は教科書やポスター等でも多く取り上げられる有名ドコですが、政治的背景も濃厚な寺です。
そこら辺の解説もキッチリ載せてる辺り、ガイドというよりも「庭物語」ってカンジの本だなと。



他に西芳寺の説明が印象的です。

苔のgreenが布みたいでmysteriousな空気感が神秘的で素敵、
ってカンジの庭自体を称える文章が4/5を占めて、寺史とかはホボ触れてないんですけどね。
けれど苔庭の空気感を表す文章は文語文としての英語が綺麗だなと思わせられました。

で、自分的には詩仙堂と醍醐寺三宝院の庭も載っけてほしいとこです、笑



The cataracts blow their trumpets from the steep;
No more shall grief of mine the season wrong;
I here the Echoes through the mountains throng,
The Winds come to me from the fields of sleep,
And all the earth is gay;

峻厳な崖ふる滝は、歓びの旋律と響き
この歓びの季節はもう、僕の深い哀しみに痛むことはない
連なる山々が木霊を廻らす歌が僕に聴こえる、
微睡む野から風は僕のもとへ駈けて来る、
そして世界の全ては高らかに明るく笑う

William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」IIIの抜粋です。
この一節は言葉の遣い方も言い回しが人間の五感を惹きだすようなカンジで綺麗だなって思います。
滝の水音に山の谺、風のやわらかさ、太陽の明るさ、聴覚から触覚に視覚へと展開する。
こういうのって、英語から日本語に訳すのに感覚的な言葉を充てたくなります。

この詩の想いは昨日から書き始めた「初陽の花、睦月」も同じ空気です。
昨日UPしたact.1だと前半部「The cataracts blow their trumpets from the steep」って感じですけど、
これから「I here the Echoes through the mountains throng」以降の光景が描かれていくかと思います。
ソンナこともあって載せてみました、自訳がちゃんとしてるかお恥ずかしいんですけどね、笑



昨日UPした「初陽の花、睦月act.1」と日付け変わる頃の短篇「secret talk13 夏霧月」は加筆校正終っています。
今夜は昨日予定だった第67話と「初陽の花」の続き、または「七彩の花」を掲載予定です。

休憩合間ですが取り急ぎ、


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secret talk13 夏霧月―dead of night

2013-07-30 00:25:01 | dead of night 陽はまた昇る
夏霧、風ゆく涯に



secret talk13 夏霧月―dead of night

夏の一日が果てる、その落日が雲に隠される。
雲興らす谷から風が頬撫でてゆく、ひるがえる前髪に額は涼む。
孟夏に濡れたTシャツが冷えてゆく夕の眺望、見遥かす涯に霧が生まれだす。

「…朝は雲海かな、」

独り風に微笑んで彼方を見つめる視界、大らかに光あふれゆく。
今日終わらす光芒は刻々色彩を変えて輝き、いま佇む山頂に黄金が充ちる。
ゆるやかな静謐が光に風に棚引かせ、いま単独に登ってきた稜線が夜に沈みだす。

―単独行って、こんな静かなんだな、

心呟く想い微笑んで、初めての空気に英二は腰下した。
いつもアンザイレンパートナーのセカンドとして登ってきた、けれど今日は独り山頂を踏んだ。
こうした経験も自分には必要になる、そうパートナーとも話し合い辿り着いた時間はただ、静謐が優しい。

「…いいな、」

ぽつり本音こぼれて風に声とけてゆく。
駈ける風ゆるやかに眼下の霧を流す、広がりゆく白い闇に黄昏が映りゆく。
黄金の霧は海になる、落日きらめく水蒸気の海は光の鏡になって天穹と呼応する。
黄金色の静謐の時間、そこに独り佇む安らぎは癖になりそうで、英二は微笑んで独り言に諌めた。

「でも単独は、公的立場からすると止めてほしいけどな、」

単独行は万が一の危険が怖い、それは「山」に生きるほど思い知らされる。
発病しても受傷しても援けなど来ない、これは山の静寂に在るリスクの現実的可能性。
この可能性に自分の任務は創設され今こうして訓練の時を過ごす、そんな廻りに思案は廻らす。

―きっと心配させてるんだろな、携帯も繋がらないし…ごめんな、

見つめる遥かな日没に遠い家を想う、そこに大切な人が自分を待っている。
自分の無事を祈りながら明日を想い、帰りを信じて明日の夕食を考えてくれている。
そんなふうに心配も心遣いも自分は与えて、それでも共に生きてくれる人が高峰の時間にも慕わしい。

「…必ず帰るよ、」

独り風に微笑んだ唇を左腕の時計によせて接吻ける、このキスを今、あのひとに届けたい。





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