楽園にて、

睦月三日、福寿草―Eden
黄色い陽だまり、春が咲く。
「おじいさん、ここにも咲きましたよ?」
ほら君が呼ぶ、いつからその呼び名だろう?
おだやかな春の声に考えながら微笑んだ。
「よく咲いてるな、だが、おじいさんじゃないだろう?」
「あら?」
陽だまり黄金色、おだやかな声が振り返る。
かすかに甘い空気ゆれる庭、花のたもと笑いかけた。
「おまえにとっての僕は、お祖父さんじゃないだろ?齢もそんなに離れているわけじゃない、」
こんなこと今更だろう?
それでも言ってみたい春の午後、銀髪の妻が笑った。
「そうですねえ?じゃあ、あなた?って呼べばいいかしら、」
「うん、それでいい、」
微笑んで庭下駄からり、足もと黄金の花が咲く。
いつのまに花こんなに増えたろう、あざやかな春の色に妻が言った。
「でもね?私も、おまえじゃないわよ?」
呼び名に妻が笑いだす、黒目がちの瞳ほろり和ませる。
こんなふう黙ってなんかいない妻に可笑しくて笑った。
「そうだなあ、じゃあ…ヒサコサン?」
ああほらくすぐったい、笑いたくなる。
ほらほら名前で呼ぶなんて?
「あら?ひさしぶりに呼ばれたわ、」
ほらほらほら妻が笑いだす、黒目がちの瞳くるり可笑しがる。
この仕草ずっと好きだった、この重ねこんだ幸せに頭つい掻いた。
「そんな笑うなよ?照れくさくなるだろ、」
「あら、私こそ照れくさいわよ、」
ああほらほら君が言い返す、黒目がちの瞳くるり僕を見る。
見あげてくれる睫まだ霜はおりない、このままと願う眼ざし春を見て。

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1月3日誕生花フクジュソウ

睦月三日、福寿草―Eden
黄色い陽だまり、春が咲く。
「おじいさん、ここにも咲きましたよ?」
ほら君が呼ぶ、いつからその呼び名だろう?
おだやかな春の声に考えながら微笑んだ。
「よく咲いてるな、だが、おじいさんじゃないだろう?」
「あら?」
陽だまり黄金色、おだやかな声が振り返る。
かすかに甘い空気ゆれる庭、花のたもと笑いかけた。
「おまえにとっての僕は、お祖父さんじゃないだろ?齢もそんなに離れているわけじゃない、」
こんなこと今更だろう?
それでも言ってみたい春の午後、銀髪の妻が笑った。
「そうですねえ?じゃあ、あなた?って呼べばいいかしら、」
「うん、それでいい、」
微笑んで庭下駄からり、足もと黄金の花が咲く。
いつのまに花こんなに増えたろう、あざやかな春の色に妻が言った。
「でもね?私も、おまえじゃないわよ?」
呼び名に妻が笑いだす、黒目がちの瞳ほろり和ませる。
こんなふう黙ってなんかいない妻に可笑しくて笑った。
「そうだなあ、じゃあ…ヒサコサン?」
ああほらくすぐったい、笑いたくなる。
ほらほら名前で呼ぶなんて?
「あら?ひさしぶりに呼ばれたわ、」
ほらほらほら妻が笑いだす、黒目がちの瞳くるり可笑しがる。
この仕草ずっと好きだった、この重ねこんだ幸せに頭つい掻いた。
「そんな笑うなよ?照れくさくなるだろ、」
「あら、私こそ照れくさいわよ、」
ああほらほら君が言い返す、黒目がちの瞳くるり僕を見る。
見あげてくれる睫まだ霜はおりない、このままと願う眼ざし春を見て。

福寿草:フクジュソウ、花言葉「幸せを招く、永久の幸福、最上の愛、悲しい思い出」
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