静謐に寛いで、
1月25日誕生花ツバキ
睦月二十五日、椿ーModest love
…ことん、
障子戸かすかに透かす音、それから縁側ひそやかに消える音。
古い木あわく軋んで遠退いてゆく、もうじき角を曲がるだろう。
ほら?茶が香る。
「うん…」
微笑んで腕を伸ばして、かたり雪見障子ひらく。
ふわり清々しい馥郁かすめ紅色が映る、艶やかな常緑あわい紅が咲く。
凛と冴えた空気まばゆい花の縁側に盆ひとつ、ダークブラウン深い艶の床から取り上げた。
「お…めずらしいな?」
盆のうえ一掬と一皿、湯呑と菓子皿に茶が香る。
やわらかな馥郁に皿の上、艶やかな餡餅くるむ常緑の葉がなつかしい。
「よく見つけたなあ…作ったのかな?」
白磁やさしい皿の上、古伝の菓子あまく匂う。
万葉の頃はるかに伝わる古い菓子、そんな一皿しずかな心に微笑んだ。
「いつも声もかけないなあ…君は?」
盆に茶と菓子を運ぶ、それすら妨げまいと気遣う君。
その祈り支えられて座る文机、資料ひろげた原稿用紙そのまま湯呑とった。
「あったかいなあ…」
ほら、清雅やわらかに香る。
椿:ツバキ、花言葉「敬愛、ひかえめな愛、誇り、謙虚な美徳」
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