萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

光陰、輪郭 act.2―another,side story「陽はまた昇る」

2011-10-26 22:20:45 | 陽はまた昇るanother,side story

照らしてくれる、光のもとで




光陰、輪郭 act.2―another,side story「陽はまた昇る」

約束の時間に20分ほど遅れた。
関根と瀬尾は先に呑んでくれている。
楽しそうな雰囲気に、なんだか周太は安心した。

「おう、久しぶり」

相変わらず快活に笑いながら、関根が瀬尾の隣へと移動した。
なんでわざわざ席を動くのだろう。
そう思っていたら、宮田に奥の席へと座らせられた。
それから当然という顔で、隣に宮田が座ってくれた。

「元気そうだな、二人とも」
「ああ、お前らも元気そうだな」

笑いながら、関根がメニューを渡してくれた。

「なに飲む?注文するよ」
「あ、ありがとう、」

メールや電話はするけれど、二人に会うのは卒業式以来だった。
そして、隣と、こうなってから、会うのは初めてだった。
ただでさえ緊張するのに、さっきあんなことをされたばかり。
なんとなく二人の顔を見られない。

「じゃ、コロナビール2つ」

勝手に宮田が注文してしまった。まだ考えていたのに。
でも、本当は、それ飲んでみようと思っていたけれど。
どうしていつも解るのだろう。ライムも好きだって、知っているのだろうか。

「おう、あと食いもん頼もうよ」
「あ、俺、すごい食うけど、いい?」

そんな会話を関根と宮田が交わしている。
そう、ほんと、宮田は最近すごい食べるよ。
そんなこと独りごとみたいに、心で呟く自分がいる。
こういうのは、なんだか幸せだなと思う。

「じゃ、とりあえずこんだけ注文するから。足りなかったらまた言って」

気軽に店員に声かけて、関根が注文してくれる。
関根はこういう所が偉いなと思う。
それから、相変わらずの優しい笑顔で、瀬尾が話しかけてくれた。

「相変わらず仲良しだね、宮田くんと湯原くん」

どきんと心が跳ね上がる。
仲良いけれど、でも、相変わらずと言えるのだろうか。
純真そうな瀬尾の笑顔が、余計に緊張させてくれる。
けれど隣は、きれいに笑って答えた。

「ああ。卒業前より仲良いよ」

もうきっと赤くなっている。
それを隣はきっと喜んでいるだろう。
どうしていつもこうなのだろう、それもこんな場所で。

「仲良いのは嬉しいよね、」

相変わらず優しい笑顔で、瀬尾が答えてくれた。
なんだかそれも、逆に気恥ずかしい。
おかげで何を話していいのか、全然頭に浮かばない。
話したいこと、聞きたいこと、色々あったはずなのに。
そんなこと考えていたら、笑顔で関根が言った。

「なんかさ、湯原すっかり、きれいになっちゃったな」
「…は、?」

呆気にとられた声が出た。
どうしてそんなこと言うのだろう。
なんだかよく解らなくていたら、前から瀬尾が微笑んでくれた。

「うん、湯原くん雰囲気良い。すごく、きれいになった」

髪型が変わったのもあるけど。なんて、笑顔で瀬尾が言ってくる。
無垢な瀬尾の笑顔にまで、こんなこと言われるなんて。
そして隣がなに考えているのか、解ってしまうのが今は嫌だ。
それなのに、きれいに笑って隣は言った。

「ずっと俺が一緒にいるんだから、当然だろ」

ほら、言った。
たぶん言うのだろうなと思ってはいた。
けれど本当に言うなんて。
やっぱりみやたはばかなんだ。

「そっかあ、」
「へえ、なんだか男前だなあ、宮田」
「だって俺、男前じゃん?」

瀬尾は素直に笑顔で返事するし。
関根もなんだか感心して見ているし。
なんだか3人みんなして、俺を肴にしていない?

もう早く、飲むものでも来てほしい。
なにも言えずに3人を眺めていたら、瀬尾が話しかけてくれた。

「湯原くん、服の趣味も変ったね。前よりずっと似合ってる」
「…あ、これは」

言いかけて、隣がさらっと口を挟んだ。

「だって俺が選んだのだから、似合うの当たり前だろ」

確かに本当のこと。
でも待って、ちょっと恥ずかしい。こういうの慣れていない。

「あ、通りでね。なんか垢抜けたって俺も思った」
「すごく似合ってるよ。宮田くんて、湯原くんの事、よく見てるんだね」

二人ともあまり、宮田の話に乗らないで。
そう言いたいけれど、口を挟む勇気なんて無い。
そろそろきっと、また、隣が何か言いだしてしまう。
なんて思っている傍から、きれいな口許を綻ばせた。

「うん、いちばん俺が、周太のこと見ているよ」

もうきっといま、真っ赤になっている。

宮田は思ったことしか言わないし、やらない。
だからいつも素直で、健やかな心のままに笑ってくれる。
そういうところが、好きだ。
けれど、こんなところで、こんなふうに言われたら。

お願い二人とも、もうこれ以上は勘弁して。
宮田の言うことは、ちょっと横に置いて他の話をしてほしい。

それなのに関根は、快活に笑って言ってしまった。

「ほんと宮田、湯原のこと大好きだよな」
「ああ、大好きだけど?」

きれいな笑顔で、宮田が笑う。
本当はこの顔、大好きなんだけど。今はちょっと憎たらしい。

こういうことになるなんて、もうどういうことなのだろう。
そう思っていたら、コロナビール?がやってきた。
相変わらずの快活な笑顔で、関根が手渡してくれた。

「はい、湯原」
「あ、ありがと」

受取ろうと右腕を伸ばしたら、袖がすこし下がってしまった。
あわい水色のシャツから、赤い色がかすかに覗く。
あれ?と瀬尾が見て、訊かれてしまった。

「湯原くん、腕に痣なんてあったっけ?」
「…あ、」

打ち身、って言おうと思った。
けれどさっきの宮田の怒った姿に、口の動きを封じられる。
どうしようと思っていたら、隣に顔を覗きこまれた。

「最近だよな、その痣できたの」
「…え、あ、」

こんなのって酷い。
さっきの事をそんなにも、怒っているのだろうか。
それが心配になって、あんまり強気に出られない。
それなのに、きれいに笑って宮田は言ってくれた。

「俺はその痣、すごくきれいで好きだな」

それはそうだろうあたりまえだなんてこというんだ。
もう本当に、勘弁してほしい。

でも、そんなふうに、堂々と言われるのは、本当は嬉しい。
胸張っていいんだと、いつもそうして笑ってくれる。
この隣が好きだと、幸せだと思える。

けれどやっぱり、この場は恥ずかしい。
今夜はずっとこんなだろうか。
そう思うと居たたまれなくて、思わず一気に飲み干してしまった。

「あ、一気飲みしちゃったね。湯原くん」

のど乾くよねと優しく瀬尾が笑って、関根に追加注文をお願いしてくれる。
瀬尾のこういうところは、和めていいなと思う。
隣はすこし驚いている。それがなんだか小気味いい。

それから、ちょっと気分が良くなった。
なんとなく話しやすくなって、緊張がすこし楽になっている。

瀬尾は、似顔絵捜査官の講習をずっと続けていた。
スケッチブックをとりだして、今も描きながら話してくれる。
関根は、白バイ隊を目指している。
狭き門が余計に、チャレンジしがいあるよなと、相変わらず前向きで明るい。

それから松岡と上野と内山の近況も、関根は話してくれた。
優等生で東大出の内山と、元ヤンキーで走り屋だった関根は仲が良い。
最初の外泊日に居残り組をした、それがきっかけで仲良くなっている。
自分と関根もそうだった。

宮田が最初に隣に来て、それから関根や瀬尾と仲良くなれた。
こんなふうに、友達と呼べる存在と、他愛ない話をする。
普通の事なのだろうけれど、周太には得難くて、そして嬉しかった。

もしこの隣と出会えなかったら、自分は今きっと、孤独の底で泣いている。
脱走の夜からずっと、きれいな笑顔でいつも、隣にいてくれた。
そして今はもう、この隣だけが自分の居場所と、周太も思っている。
本当に大切で、好きだ。たまに本当に困らされるけれど。

ちょっと先輩から電話と笑って、宮田がすこし席を外した。
その背中を見送って、関根が微笑んだ。

「宮田さ、なんか背中が格好よくなったな」
「うん、僕も思った」

瀬尾も頷いて、ふたりして宮田の背中を見送っている。
なんだか気恥ずかしい。周太はグラスに口をつけた。
さっき宮田が選んでくれた、オレンジ色のこれは、おいしい。
オレンジブロッサム?とか言っていた。

「湯原くん、どのくらい宮田くんと会ってるの?」

あやうく吹きかけた。
呑みこんだ後で良かった。でもこの質問どうしよう。
仕事の職務質問は、最近すっかり上手くなったのに。
こういうことは本当に、言葉がちっとも浮かばない。

とりあえず何か言わないと。
そう思っていたら、急に横から抱きつかれた。

「ほんとうに湯原くんだ、嬉しい。元気?」

見たら、宮田の姉だった。
隣とそっくりの、きれいな切長い目が明るい。
懐かしくて、そして嬉しい。周太は微笑んだ。

「お久しぶりです。会えて、俺も嬉しいです」

宮田と少し似ている、率直な雰囲気が好きだなと思う。
自分達のことも、真直ぐ見つめて肯定してくれたと聞いている。
今の態度からもそれが解って、周太は嬉しかった。

「姉ちゃん、そこは俺の席だからどいて」

ちょっと不機嫌な声が、上から降ってきた。
見上げると、声は低いのに、宮田は笑っている。

「なによケチ。ちょっと位いいでしょ、小さい男ね」
「小さい男でいいから早く代って。ほら、勝手に触んないでよ」

お互い言葉はきついのに、二人とも笑顔はきれいだった。
ほんとうに絵になる、きれいな姉弟だなと改めて思う。
でもどうしてお姉さんが、ここにいるのだろう?

「ちょうど近くで、軽く飲んでたの」
「遠くで飲んでいたら、良かったのに」

笑顔で宮田が憎まれ口を言う。
きれいな長い指で弟を小突いて、彼女は二人に会釈した。

「ほら英二、早く紹介してよ」
「あ、うちの姉。俺らの一歳上」

仕方ないなという顔で、笑いながら宮田が言った。
はじめましてと穏やかに瀬尾は微笑んだ。
けれど関根は、びっくりした顔で彼女を見つめている。

どうしたのだろう。
普段は快活な関根らしくない様子に、みんな関根の顔を見た。

「あら、」

彼女は小首を傾げて、それから笑った。

「いつもの、おまわりさんですね」

言われて、関根が笑った。

「やっぱり、いつもの方でしたか」

答える関根の笑顔が、なんだかいつもと少し違う。
快活な雰囲気はいつもと同じだけれど。
すこし仕事の雰囲気の、凛々しい顔になっている。

「英二のお友達だったんですね」
「宮田のお姉さんだとは、驚きました」

そういえば関根は電話のたびに話してくれた。
最初は、落し物を届けてくれた人が、きれいだった。
次は、落し物を届けてくれた、きれいな人に、偶然に道であった。
それから次は、買物に行ったコンビニで、彼女とまた会った。
そんな話をもう何回、聞いたかちょっと覚えていない。

そういえばと周太は関根に訊いた。
たしか関根の卒配先は、世田谷区だった。

「そういえば関根、第三方面だったよな」
「おう、成城署だけど」

聞いて宮田が呆れたような声を出した。

「なんだ、うちの実家の辺りか。どこの交番?」
「ああ、成城交番」
「なんだ、駅前か」

そうかあと宮田が驚いている。
同じ世田谷出身の瀬尾は知っていた。実家へ帰るたびに声をかけるらしい。
けれど、宮田は卒配後、まだ一度も実家へ帰っていない。
その理由は自分だと解っている。それが周太は悲しい。
少し俯けた顔に、宮田の姉が笑いかけてくれた

「湯原くん、風に当たるのつき合って?」

一緒に店のデッキへと出た。
11月の夜は風が冷たい、けれど宮田に贈られたマフラーが、温かかった。
ストールを風に遊ばせながら、宮田の姉が笑う。

「湯原くん、きれいになったね」
「え、あの」

さっきも皆に言われて困った。
また彼女にも言われてしまった、そんなに自分は変わったのだろうか。
でも、変わったと本当は、自分でも思う。
鏡の中の顔は前より明るい、子供の頃の顔を想いださせる。

「英二のお蔭って、思っても良いのかな」

真直ぐ目を見つめて、彼女が訊いてくれる。
このひとには嘘をつきたくない。
恥ずかしかったけれど、微笑んで周太は答えた。

「はい。俺を幸せにしてくれる、そのお蔭です」
「良かった、」

嬉しそうに彼女が笑う。
そんなふうに笑ってもらえて、周太は嬉しかった。

けれど、と周太は思う。
彼女の母親を、傷つけているのも自分。
それを謝りたい、周太は口を開いた。

「でも、俺の為に、ごめんなさい」

上手く言えない。なんて言えば伝わるのだろう。
けれど彼女は笑って言ってくれた。

「母のことは気にしないで。私も父も大丈夫、湯原くんのこと好きよ」
「そう言ってもらえるのは、嬉しいです。でも、お母さん…」

いいのよと微笑んで、彼女が訊いてくれる。

「じゃあ、英二と離れられるの?」
「できません、」

即答してしまって、周太は自分で驚いた。
けれどそれは本音。きっともう離されたら、自分は壊れてしまうと知っている。
こんな自分は身勝手で、狡い。
それなのに宮田の姉は、とてもきれいに笑って、言ってくれた。

「それって、とても素敵なことよ。だからお願い、胸張ってほしい」
「…でも、」
「ほんとうのことよ。唯一つの居場所を見つけられる。とてもきれいで、素敵な事よ」

ほんとうにそうだと思う。
大切な場所だった父、それを失った自分には、その意味が解る。
ちょと座ろうかとデッキのベンチに腰掛けて、彼女は話し始めた。

「英二はね、見た目があんなでしょ?だから女の子にも恋愛にも不自由しなかったわ。
 けれどそれが、逆に孤独になっていたの。
 お洒落で自慢のできるイケメンで、とりあえず優しい男。それだけが彼女達の目的だったのね。
 ほんとうの英二を見つめて、それで好きになってくれる。そういう人に英二は、ずっと会えなかったの」

なんだか解るなと周太は思った。
出会った頃の宮田は、端正な顔で自分を隠して、気楽なフリをしていた。
周太自身、それが最初は嫌いで、宮田をそういう人間なのだと思っていた。

「でもほんとうの英二は、そうじゃないでしょう?
 直情的で一途で物堅くて、いい加減なことが出来ない。
 きれいで素直で健やかな心は、繊細で、人の気持ちが解りすぎる。
 思ったことしか言えないし、思った通りにしか行動できない。穏やかで静かな空気が好き。
 けれど、それは少し生き難くて。だから英二は、要領良く生きるフリをするようになっていったの、」

彼女が話してくれる、あの隣。
それは周太も思う事だった。

「でも気づいたのね。自分を偽る方が、人間は生き難いって。
 そして素直に、英二は生きるようになったわ。それからすごく、佳い男になっていってる。
 それは全て湯原くんのお蔭だってね、きれいに笑って胸張って、英二は私達家族に言ってくれたわ」

ほっと彼女がついた息が、夜に白くとける。
冷たい風のなか、温かく彼女は微笑んだ。

「英二ね、ほんとうに湯原くんを大切に想ってるわ。
 全てをかけて、湯原くんを大好きで、幸せにしたくて今を生きている。
 今日、顔を見て、それが私には解ったの。そして嬉しかった。英二は幸せなんだな、それが解って嬉しかったの」

嬉しそうに彼女が微笑んでくれる。
あの隣とそっくりで、けれど違う、きれいな切長い目が笑ってくれる。

「だからお願いよ、英二を大切にして頂戴。離れずに幸せにしてやって」

そんなふうに言われて、嬉しい。
あの隣は、自分を変えて幸せにしてくれた。
自分も同じように、あの隣を幸せに出来たらいい。
上手く言えないけれど、伝えたい。周太は唇を開いた。

「俺も、大好きです。もう、離れられないんです。そして幸せです。だから大切にします」

きれいな明るい笑顔が笑う。

「ありがとう、」

明るいきれいな声で、彼女は言った。

「会うのは今が2度目だけれど。あなたのこと、私は大好きよ。
 だからもう、湯原くんをもう一人の弟だと思ってるわ。
 だからいつでも、私の所にも帰ってきて。あなたの居場所はちゃんと、ここでも待っているから」

ほんとうに周太は嬉しかった。
自分がこんなふうに、受け入れてもらえるなんて、思っていなかった。
このひとも大切にしたい。そっと周太は彼女の幸せを祈りながら、微笑んだ。

「ありがとうございます。俺も、お姉さんのこと大好きです」

22時過ぎになって、帰路についた。
関根は宮田の姉を送って帰ると、一緒に私鉄の改札を通っていった。
瀬尾は別れ際、きれいなファイルを一つくれた。

「これね、プレゼントに」

開いてみると、きれいなペン画が現れた。瀬尾はまた上達している。
この隣と周太の穏やかで幸せそうな笑顔の肖像、二人寄り添う姿が優しい温かなタッチで描かれていた。
いつのまに描いてくれたのだろう?嬉しくて、周太は微笑んだ。

「ありがとう、瀬尾。大切にする」
「僕はね、ふたりの姿を描くの好きなんだ。今日は描かせてもらえて、嬉しかったよ」

そう言って優しく微笑んで、また描かせてねと瀬尾は帰っていった。
そう言えば宮田の誕生日にも、瀬尾はふたり並んだ姿を描いた。
ふたつ並べてみると、おもしろいのかもしれない。

周太は宮田を見送ろうとしたけれど、逆に寮の前まで送られてしまった。
別れ際、静かな木蔭でそっと唇を重ねて、宮田が微笑んだ。

「周太に約束してほしい」
「やくそく?」

そうと頷いて、きれいに宮田は笑った。

「もう何も、俺に隠さないでいて。隠してもきっと、俺は見つけてしまう。
 だからもう、最初から何も隠さないでほしい。そうして俺だけに甘えて、俺だけを見つめていて」

そんなふうに言ってもらえて、嬉しい。
素直に周太は頷いた。

「…ん、かくさない」
「ずっと俺だけの隣でいて、俺から離れていかないで」

もう自分こそ本当は、ずっと隣にいたいと願ってる。
そしてもう離れることなんかできない。
でもどうしたらそれを伝えられるのだろう。周太にはまだ、上手く言えなかった。
けれど少しでも伝えたくて、周太は笑って隣を見あげた。

「ん。ずっと隣がいい」

明日は当番勤務で夕方からの出勤になる。
そして明後日は当番明けで、そのまま術科センターで特練がある。
きっと午前中で終わるから、そうしたらこの隣にメールしよう。

たしか隣の明後日は、午前中は訓練だと言っていた。
この隣は、午後は疲れて眠っているかもしれない。けれど、メールなら眠りは妨げない。

でもきっと、声を聴きたくなって電話するだろう。
体を休ませてあげたいとも思う、けれどきっと、この隣は電話に喜んでくれるから。
そうしてまた、会いに来てくれたらいい。




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