dites-le-lui pour moi ―導きの燈
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華燈火―morceau by Dryad
庭の森に一輪、緋色の真紅が揺れて咲く。
木洩陽きらめく古樹の許に赤く一つ花ひらく、その場所は去年と同じ。
すぐ咲こうと蕾すっくり傍に並んで、あわい萌黄のラインは陽だまりの光の柱。
その先にはもう真紅が覗いている、きっともう明日には咲いて花の緋色あふれだす。
「…明日は一緒に観てもらえる、ね?」
独りそっと庭に呟いて、梢の風ゆるやかに鳴って風駈ける。
やわらかい木蔭の深緑に光ゆれて風は頬を撫でる、そんな朝は涼しくなった。
こんなふう風に季の移ろいを見上げた枝はもう、黄色あざやかに葉を染め変えていた。
今は秋、あの秋から時はどれだけ経たのだろう?
―あの秋が無かったら今、僕はどこに居たのかな、
独り心に廻らす秋の記憶、その数だけ時間と想いは降り募る。
あの秋も無く、あの夜も無く、この出逢いが無かったら今頃の自分は幸せだったろうか?
「ううん、…逢えたから今が幸せだね、ほんとうに…」
本当に今、幸せだと鼓動も深くから温かい。
この秋まで時は喜びだけじゃない、哀しみの方が多かったのかもしれない。
それでも、哀しみすら幸せの種に変えられたのは多分、あのひとに出逢ったからだろう。
「…早く逢いたい、ね、」
そっと零れた本音にほら、もう首すじ熱が逆上せだす。
きっともう紅くなってしまった、けれど朝早い庭は独り誰も見ていない。
そんな安心感に微笑んで素足の下駄を歩みだして袂に衿に、ふわり綿織の透らす風が涼ませる。
もう浴衣一枚で朝は寒くなってきた、この風の変化に微笑んで芝生の露をゆく背で門扉の音が軋んだ。
―こんな朝早く、誰?
まだ6時前、こんな刻限に誰が来るのだろう?
その不思議に見つめた樹林の向こう、知っている四駆がガレージに入った。
「…ほんと?」
予想外のこと、けれど信じたい、そんな祈る想いの真中でほら、運転席の扉が開かれる。
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庭の森に一輪、緋色の真紅が揺れて咲く。
木洩陽きらめく古樹の許に赤く一つ花ひらく、その場所は去年と同じ。
すぐ咲こうと蕾すっくり傍に並んで、あわい萌黄のラインは陽だまりの光の柱。
その先にはもう真紅が覗いている、きっともう明日には咲いて花の緋色あふれだす。
「…明日は一緒に観てもらえる、ね?」
独りそっと庭に呟いて、梢の風ゆるやかに鳴って風駈ける。
やわらかい木蔭の深緑に光ゆれて風は頬を撫でる、そんな朝は涼しくなった。
こんなふう風に季の移ろいを見上げた枝はもう、黄色あざやかに葉を染め変えていた。
今は秋、あの秋から時はどれだけ経たのだろう?
―あの秋が無かったら今、僕はどこに居たのかな、
独り心に廻らす秋の記憶、その数だけ時間と想いは降り募る。
あの秋も無く、あの夜も無く、この出逢いが無かったら今頃の自分は幸せだったろうか?
「ううん、…逢えたから今が幸せだね、ほんとうに…」
本当に今、幸せだと鼓動も深くから温かい。
この秋まで時は喜びだけじゃない、哀しみの方が多かったのかもしれない。
それでも、哀しみすら幸せの種に変えられたのは多分、あのひとに出逢ったからだろう。
「…早く逢いたい、ね、」
そっと零れた本音にほら、もう首すじ熱が逆上せだす。
きっともう紅くなってしまった、けれど朝早い庭は独り誰も見ていない。
そんな安心感に微笑んで素足の下駄を歩みだして袂に衿に、ふわり綿織の透らす風が涼ませる。
もう浴衣一枚で朝は寒くなってきた、この風の変化に微笑んで芝生の露をゆく背で門扉の音が軋んだ。
―こんな朝早く、誰?
まだ6時前、こんな刻限に誰が来るのだろう?
その不思議に見つめた樹林の向こう、知っている四駆がガレージに入った。
「…ほんと?」
予想外のこと、けれど信じたい、そんな祈る想いの真中でほら、運転席の扉が開かれる。
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