萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第85話 春鎮 act.2-another,side story「陽はまた昇る」

2016-10-22 22:05:21 | 陽はまた昇るanother,side story
別離の再会  
harushizume―周太24歳3下旬



第85話 春鎮 act.2-another,side story「陽はまた昇る」

記憶たどり歩く道、ちいさな扉が待っている。

街路樹ならんだ道のひとつ奥、ささやかな看板ちいさな病院。
知らないと見過ごしそうな小さな場所、たしかにここだった。
三ヶ月前と同じ扉を見あげて足元、見つけて周太は微笑んだ。

「ん…パンジー、」

ちいさな扉ちいさなスペース、その脇ちいさな花壇が咲く。
薄紅色に黄色に白紫、どれも明るい花色が陽だまり優しい。

―花壇があったんだね、気づかなかったな…僕、

立ち止まった春の花、見慣れた花びら見あげてくれる。
この花は今いる家もたくさん咲く、そして声ふれる。

『話しますよ、さあパンジーのところ暗唱して?』

The Pansy at my feet
Doth the same tale repeat:
Wither is fled the visionary gleam?
Where is it now, the glory and the dream?

『この詩、晉さんに教えてもらった最初よ…わたしの儚い夢で後悔です、』

大叔母が打ち明けてくれた祖父の記憶、真相、そしていま自分はここにいる。
あの詩みたいに今日ここで話せるだろうか、聴けるのだろうか、会えるだろうか?

あえるのだろうか“ほんとう”に。

―わからない、でも行かなくちゃ、

想い呼吸ひとつ扉を開く、かたん、軋んだ音に空気が変わる。
薬品の匂いそっと刺す、人がいたはずの気配ゆれて誰もいない。
すこし古びた小さな待合室は静かで、そして白衣姿が顔だした。

「来たわね、湯原くん?」

低めのアルト笑う眉が凛々しい。
この眉やっぱり似ているようで、なつかしさと恐縮に頭下げた。

「おじゃましてすみません、遠藤先生、」
「それ、洵子センセイがいいな?」

からり白衣の笑顔が告げる。
ショートカット涼やかな女医に周太は瞬いた。

「あの…おなまえで呼ぶってもうしわけなくないですか?」

そんなの恐縮してしまう、だって年上で目上で女性だ。
しかもそれだけじゃない相手は笑った。

「名字に先生なんてエラそうで嫌いなの、遠藤って呼び捨てでもいいよ?」

呼び捨てなんて無理、できるわけがない。
たった二つの選択肢に首すじ熱そっと昇る。

「じゃあ…じゅんこせんせいおじゃまします、」
「はいどうぞ、アイツ待ってるわよ?」

色白の頬さわやかに笑ってくれる、その向こう扉が開いた。

「湯原、こっちだ、」

低い響く声が呼ぶ、なつかしい声。
なつかしく想うほど信じる相手に頭下げた。

「おひさしぶりです…伊達さん、」

このひとに会えた、もういちど。

―もう会えないと思った、伊達さんとは…もう、

だってもう、住む世界が違う。

そういう世界に自分は住んでいた、この男の隣で。
その半年間どれだけ救われてきたろう、この男に。
ただ想い見つめる真中で、沈毅な瞳ふわり笑った。

「10日ぶりだな、」
「はい…いろいろすみません、」

うなずいて時間あの日から遠い。
雪ふる病院の駐車場、あの夜に叫んだ瞳が笑っている。

「上で話そう、話せることから、」

話せることから、

そんな言葉が今はうれしい、だって強要しないでくれる。
唯そこにある静かな瞳の温もりに素直に微笑んだ。

「はい、…伊達さんも話してくれますか?」
「そのために来たんだ、俺も、」

低い声やわらかに響いて温かい。
この声いつのまにか馴染んでしまった、その再会にアルトが呼んだ。

「そのまえに湯原くん、ちょっと診察させなさい?」

そんなにお世話になって良いのだろうか?
心配とふりむいた傍ら、沈毅な瞳がうなずいた。

「診せてやってくれ、診断書を書かせたい、」

なぜ必要なのだろう?
疑問と見つめた先、精悍な顔立ちは言った。

「湯原の退職は体調不良を表向きの理由にする、だから退職手続も本人は来られない、」

いつのまに?

「…伊達さんがそうしてくれたんですか?どうして、」

どうしてそこまでする必要あるのだろう?
解からなくて問いかけた前、上司でもある男は微笑んだ。

「この先、履歴書に職務経歴を書くだろ?一身上の都合でも理由はきちんとしているほうが良い、」
「そういう配慮はうれしいです、でも…手続きくらいは行けます、」

理由をそうすることは解かる、でも退職手続すら出向かないなんて?
そこまで自分の立場は危ういのだろうか?めぐらす想いに言われた。

「あのひとのサシガネだよ、湯原ならわかるだろ?」

さしがね?

「あの…おばあさまが?」

あの大叔母にそんな権力があるのだろうか?
わからなくて、ただ見つめた瞳が微笑んだ。

「もう二度と警察とは関わらせたくないそうだ、緊急措置も辞さないとな?」

そんなこと、あの大叔母が言ったんだ。

―ちがう、言わせてるんだ僕が…あの優しいおばあさまに、

やさしい優しい大叔母、外貌は華やかだけれど心やさしいひと。
それに自分は知っている、ほんとうの大叔母は泣虫だ、誰かさんそっくりに。

『これは晉さんの必死の告発よ、なのに私は勝手な勘違いをして喪って…私の恋は愚かね、』

後悔して泣いた大叔母、記憶つむぐ切長い瞳。
あの長い睫きらめいた涙は祖父への想い、遠い昔で終わらない大叔母の恋だ。
あんなふう泣いてしまう瞳は似ている、きっと心ふかくも似て純粋に温かい。

そんなひとに自分は何をさせているのだろう、男の自分なのに?

「おばあさまが…祖母が伊達さんにそう言ったんですか?緊急措置って、」

問いかけ見つめて哀しい、自分が情けなくなる。
そんな想いに沈毅な瞳すこし笑ってくれた。

「代理人からの伝言でな、あの駐車場にいたろ?」

答えてくれる低い声は温かい。
きっと察してくれている、そんなトーンに思考めぐりだす。

ああ、あのひとだ。

「祖母といた人ですね…黒いコートの、」

三十代くらいに見えた、賢そうな眼した黒いコートの男。
あの雪ふる駐車場に現れた大叔母、その隣に立っていた。

『ここにいる加田さんも起訴を保証してくれます、』

そうだ、そう彼は呼ばれていた。
彼はどういう人間なのだろう?どちらにしても情けない、悔しい。
だって自分だ、あの大叔母にこんなことさせてしまうのは自分だ。

『コンフェッション、告白や告悔という意味ね?なのに私は気づけなかったの、』

皺やさしい瞳は泣いていた、あざやかな睫いっぱい涙きらめいた。
あの涙ずっと何年どれほど流れたのだろう、きっと離れていた時間もずっと。

『十四年前こうするべきだったわ!あなたを引っ叩けてたら喪わないですんだのに、あなたも私も大事なものをっ!』

十四年前に父は死んだ、きっとそれより前から大叔母は泣いている。
きっと祖父の訃報が届いた瞬間から泣いて、それは何十年前だろう?

「湯原は会ったか、あのひとに?」

訊いてくれる声は低く静かに温かい。
その信頼にありのまま答えた。

「あのときだけです…ずっと寝ていたので、」
「そうか、」

うなずいて浅黒い精悍な顔がたたずむ。
いつものとおり言葉はすくない、この遮らない優しさが今ただ温かい。
この温もりが半年間を支えてくれた、その信頼に聲こぼれた。

「伊達さん、僕は…ずっと寝てただけなんです、祖母は泣いていたのに、」

大叔母は泣いていた、全てを背負って。

「僕が目を覚ますたび喜んで、だけどひとりのとき泣いてたんです…なにも悪くないのに、」

こんなこと情けない、悔しい、だって始まりは祖父であり大叔母は悪くない。
きっと父も同じ想いだ、祖父の分だけ父も選んで辿って、そして殉じて死んだ。
それなのに大叔母は後悔して泣いて、泣いて、そして遺された僕を必死に護る。

「どうしてなんでしょう伊達さん、僕がぜんぶ背負いたいのに…どうして、」

こんなこと情けない、悔しい、だって自分の歳月どこにいく?
幼い日ただひとり決めたこと、すべての痛みも自分が選んだ。
それなのに大叔母が背負ってしまう、そしてあなたもだ英二。

―あんな現場にまで追いかけてくれたね英二、おばあさまも…よく似てるんだね英二?

いまさらだけど血の濃さを想う、あなたと大叔母はそっくりだ。
ふたりとも独り背負いこんで護ろうとする、そんな二人に哀しい悔しい情けない。
だって選んで始めたのは自分、このまま終わらせて良いのだろうか?想い背中そっと敲かれた。

「まず診てもらえ湯原、あの医者も往診があるらしいからな?それからゆっくり話そう、」


(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood」】

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ブンガク雑談:ノーベル文学賞 traditional&lineage

2016-10-20 09:00:00 | 文学閑話散文系
今年のノーベル文学賞について、エラげバカの記事を見かけたのでナントナク書きます、笑

まず・作詞家が受賞することは、
イギリス文学ならシェークスピアにワーズワス、フランス文学ならロンサール、
を文学史の巨人に讃えるヨーロッパ文学界ってことを知っていれば、納得できるだろな・ってことです。

で・イキナリ毒舌ですけど、ロンサールがワカラナイってヒトは作詞家の受賞アレコレ批評する資格ありません、笑

ノーベル文学賞ってドンナのが受賞するのか?
って言うと「文学のアイデンティティ」にあるかなって思います。
どーゆーことかって言うと・これまでの受賞者×創作にある傾向性は、

①民族母国&母語のアイデンティティ
②その時代性の反映
③世界平和への貢献
④不変性×普遍性

とくに①は重要視されているのかなって思います。
アイデンティティ=オリジナリティ・個性につながるとこですから、ポイントたりえてアタリマエなんでしょうけど。
その国に生まれ、その言語を母語として世界を感じ・考え、そうして培った思考フィルターを通して生まれてくるものが文学。
ようするに「自分がいる世界と向きあっているのか?」が問われるのが文学です、だからこそ①と②が重要視されることはアタリマエ。
母語と母国への誇り、そこから伝統を追求して生まれる「その人にしか描けない文学」が文学のアイデンティティってコトです。

たとえば川端康成、
彼の有名なヤツといえば『伊豆の踊子』『雪国』など教科書にも載ってるアレですが、
彼の作品はどれも物語性は冒険活劇でもナンもなく、イワユル思想性も何もありません。
ただしココ↓はすごいかなと、

A.情景描写と心理描写は再現度が高い
B.日本の文化・風景を描ききっている
C.なんでもない人間のアリキタリ=「あるある」感=普遍性

Aは文学にあるべき要素です、
Bは①+②に該当します、
Cは人間だれにも該当する=④普遍性になるわけです、
って考えると③に該当するとこは彼に無いんですけど、笑

大江健三郎も同様です、
語り部=口承文芸の家系に生まれた特性が大江さんの文章は滲んでいる=①や④、
障害のあるお子さんとの対話から生まれたものが②や③ともなっています。

ここまで書くと気づかれた方もいると思いますが、
毎年バカ騒ぎされる日本人某氏はノーベル文学賞にちょっと遠いんじゃないかってことです。
日本人ならではのアイデンティティ×母国風土の美しさを描く、っていう①が希薄だからひっかかりっこない。
ちょっとキツイ言い方すれば・日本人が西洋文学のサルマネして翻訳版も出して欧米で著名になっても無理だよってことです。
日本人にしか描けない文学がある。

作詞家の受賞についても少し掘ると、そもそも歌謡が口承文芸に属する文学です。

口承文芸は「口伝=言い伝えられてきた文学」文字化されない文芸なんですけど、
いわゆる昔話・伝説など物語=散文もあり、たとえば祝詞・民謡など韻文もあります。
こうした口承文芸は文学研究テーマの一つなワケですが、歌謡いわゆる「ウタ」詩歌の原型もコレになります。

歌謡・詩歌で有名どころなら、
日本でたとえるなら『万葉集』にも詠う柿本人麻呂、遺した歌の文学性が讃えられる歌聖です。
短歌・長歌どちらも伝説や恋の物語など詠みこまれた物語性があり、当時は朗詠=節をつけて唄われていました。

アルチュール・ランボオ、早逝の天才と謳われるフランス詩人は解かりやすい例だと思います。
作詩当時のランボオは十代~二十代前半の青少年期まっただ中、その年齢と当時のフランス世相が現れた詩ばかりです。
日本では堀口大學が翻訳を紹介して有名になりましたが詩集『地獄の季節』などベストセラーになっています。
ランボオの作詩を上の①~④に当てはめると、

①フランス風土・伝説②フランス当時の倦怠感・退廃的空気③退廃から静穏への希求④青年期の煩悶→永遠性を太陽・海へ希求

ランボオの詩は反骨×繊細+聡明です、
イマドキの青少年にも受けるだろうし、どの時代の青少年にも受ける普遍性があります。
たぶんフランス文学を志す人だったら一度はランボオは通っているってくらいウケています、笑

詩は「くちずさむ」人麻呂もランボオも当時を生きた人々は口ずさみ親しんでいました。
それはシェークスピアも同じで戯曲の作中歌は流行歌となり歌われていたワケです、
この「くちずさむ」ために詩はくちずさみやすい「韻」を踏んで作ることが求められています。
漢詩の五言絶句・七言律詩などもコレと同じこと、語数をそろえ・音をそろえ・くちずさみ易く作られたものが「詩ウタ歌」です。
ようするに「旋律つき文学」が「ウタ」歌・詩、という定義になります。

「あなたのお国のシェークスピアは?」

ていう初対面挨拶が欧米ではあるくらい文学代表=シェークスピアです。
そんなシェークスピアは小説家ではありません、戯曲家&詩人としてイギリス文学を築いた巨人です。
それくらい戯曲や詩は文学としての地位が高いヨーロッパで授与されるノーベル文学賞が、詩人や作詞家に授与されても不思議はありません。

ノーベル文学賞「文学のアイデンティティ」+文学の一つ「ウタ」

ってコトらを解かっていると今回の作詞家受賞はナンも不思議はなく、おおいにありってコトです。
今回の受賞に「歌手がー」とか言うヤツはソコラヘン無知なクセにアレコレ言ってるだけなんだろうと、笑
ボブ・ディランの作詞は母国アメリカのアイデンティティを謳っている+①~④シッカリ踏襲、納得だと思うんですけども。

で、日本でノーベル文学賞を受賞する可能性ないの?っていうと研究者ならいます。
物理学賞は宇宙飛行士ではなく研究者、医学賞も臨床医ではなく研究者に与えられています。
それなら文学賞も研究者に与えられてしかるべきだと思うんですよね。
小説も作詞も研究時間から創作が生まれます、その過程に道しるべを建てる研究者も評価されるべきだろうと。
文学は分析力必須、ある意味で数学的・統計的だし数列思考を利用して創作される合理的客観的視点がナイとできません。

足し算ができても掛け算すっとばして因数分解は出来ない、それは文学も同じです。
詩歌なら韻をふむ技術が音律をつくります、それには名詩から言葉や文字の遣い方あれこれに作詩当時の社会文化を知る。
それは散文も同様だし外国文学の翻訳も同じこと、その創作物当時の言語から生活・事件・時代性など知るほど、作品世界を伝えてもらえる。
古典文学も・原文から読まず翻訳から読んだダケでは描かれる空気が解かりません、だから古文法や変体仮名を学ぶ必要もある。

小説も詩歌も漠然と生まれてくるものではない、その作り手が「書きたい」と綴った向こうの世界を受けとることが「読む」です。
そこらに「いんすぴれーしょんがー」とか言ってるヤツもいますけど、ソレダケで書いたモンは普遍性も不変性も生まれません。
だからこそ文学も学問研究の一環、その学問たる尊厳を知らない軽佻浮薄人が「いんすぴれーしょんがー」強調ぶろがーなわけですが、笑
学ぶ努力経験ないコンビニエント論は狭い了見バカにしかなれません、くだらない虚栄心で貶めたがる批評屋って多いけど。
努力しよーともせず論じたら・努力に生まれた作品に失礼だ。

前にも書いたことだけれど・
文学の定義もその文学賞の意味も知らない考えたことない無知が厚顔無恥しているブログ記事って多いです。
とことん突詰めてナイくせにエラソー批評とか公開すべきじゃない。

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秋夜雑談:ぐだぐだで

2016-10-19 22:18:40 | 雑談
風邪治りかけ×慌しかった今日、
おかげで眠くてタマランぐだぐだなので、トリアエズ悪戯坊主の幼少時ちびねこ写真、笑



踏み台がこんなに↑家みたいだったんだなーと懐かしく、
ずっと大きくなった時間の分だけ今こんなに愛しいなあ。

注※現在は踏み台の長さ=尻尾の長さくらいです。笑

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深夜雑談:北欧の空で

2016-10-18 23:58:33 | 雑談


深夜雑談:北欧の空で

なんとなく雑談します、笑

前に北欧へ行ったんですけど、何度か日本語で話しかけられました。

「こんにぃーちはー、」
「ありが・とーう、」

なんてカンジに地元らしき人や、同じく旅行客だというイギリス紳士など。
欧米人からすると東洋系はどこの国かワカラン言うけれど、
たしかに台湾人と間違えられている日本人もいた。
でも自分は一度も間違えられませんでした、

解かる人には解るんだなー?
or
日本人らしい特徴または空気がある?

はたしてドッチなんだろう?
なんて考えてみると多分、

A)眼が一重or二重
B)肌の色・髪の色
C)骨格・手足の長さバランス
D)服装

なんてアタリが見分けポイントなんだろう、
で、日本人な自分から見た北欧三ヵ国は、

a.プラチナブロンド×さらさらストレートが多い、細面、痩身(20代まで)長身
b.ブルネット×ストレートが多い、細面、細身長身
c.ブロンドクセっ毛が多い、四角丸顔、中肉

っていう違いがあるなーと見たけれど、
共通点は30代からの劇的びふぉーあふたーな体重変動で、

あーだから日本食ヘルシーって言われるんだなあ?

という納得して、
で、あらためて現地現場を歩かないとホントは解からないなあ?
なんていう実感の実地体験が、その旅オモシロかった1つです。

っていうトリトメナイ雑談なんとなく終ります、
寝るので、笑


撮影地:ノルウェー

山もきれいでした、ノルウェー。

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山岳点景:雲海航路

2016-10-17 22:16:30 | 写真:山岳点景
雲河の岸辺より 



山岳点景:雲海航路

雲海ながれる十月の空、標高1,955メートルの雲波はるかな島は奥秩父山塊。



太陽の角度すこし変わると山は色彩を変えます。



山頂の足下はるかな平地は雲の影、けれど頭上は高らかな秋の青。


撮影地:入笠山から望む八ヶ岳と奥秩父山塊@山梨県2014.10

雨の一日だったので気分転換、秋晴×雲海のコラボ写真で、笑
思い切って挑戦!! 6ブログトーナメント

入笠山は初心者ハイキングレベルとよく書かれています、が、360度パノラマ山頂は風×低温にさらされます。
また登山道が北斜面にあるため日没・気温低下のスピードが速いです。

①登山道は北斜面=日照時間が短い=気温が低い。
②山頂360度ぐるり風吹きさらし・退避場所もなし。
③ゴンドラで標高1800付近まで気軽に来られる=装備ナシの散歩延長者が山頂までつい登ってしまう。

というルートなので装備不足ハイカーが山頂でフラフラしていたりします。
自分が登った時もビーチサンダル家族の小学生が脱水症状になっていました、ので、

④絶対に「簡単なコースですよ」「あとちょっとです」は言わない、「○○が危険なので気を付けて」と注意喚起すること。

コレを真に受けて初心者&登山装備も体力も足りない人が登って遭難します。
励ますツモリの気軽な台詞、でもコレが不用意遭難を多発させる原因です。

○入笠湿原やマナスル山荘前の花畑まではハイキングキブンでも行けます、その先の御所平峠からは登山装備が必要です。
○水・雨具+防寒具・ヘッドライトはハイキングでも必須、特に水+塩分はこまめに摂らないと脱水症状・低体温症などキケン。
○秋は日没びっくりするほど早い×速いです、遅くとも15時には下山完了しないと転倒・道迷い遭難になります。
○特に入笠山の登山道は北斜面なため日没も気温低下もびっくりするほど速いです、装備ナシ・午後入山は絶対NG。

山は装備+技術知識×体調管理きっちりで・その先に見る広い空は爽快ホント気持ちいいです、笑

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山岳点景:雲上への道

2016-10-16 17:52:02 | 写真:山岳点景
超えた世界に、


山岳点景:雲上への道

標高1,600メートルから降ってまた登る道、
まだ馴化しきれない薄い大気に一歩ずつ、越えた尾根は雄渾の空。


第156回 過去記事で参加ブログトーナメント
撮影地:谷川岳天神尾根と白毛門@群馬県2013.11

天候ベストコンディションな休日なのに風邪っぴき、登りたいキブン写真だけでもと、笑

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第85話 暮春 act.17-side story「陽はまた昇る」

2016-10-15 23:25:01 | 陽はまた昇るside story
Thy last command Is all 誓約の春に 
英二24歳3月下旬



第85話 暮春 act.17-side story「陽はまた昇る」

午前5時半、薄墨あわい空に朱鷺色たなびく。

まだ冷たい夜明の風、それでも潜った門どこか熱気わだかまる。
昨日の訓練たちの余韻だろう、いつもながらの空気に英二は階段を昇った。

「お、宮田?」

夜明時、それでも人はいる。
朝早い同僚にふりむき笑いかけた。

「おはようございます黒木さん、昨夜はすみませんでした、」
「飲ませたのはこっちだろ、酒ほんと強いんだな?」

早朝の低い声、けれど精悍な眼は笑ってくれる。
ほの暗い廊下の隅、愉しげな長身に微笑んだ。

「弱くはないと思うけど、佐伯さんには負けるんじゃないですか?」

たぶん負けたのだろう、自分が。

―あの男には負けたくなかったんだけどな?

昨夜の「罰杯」あの結末どうなったのか?
おぼろな記憶ほろ苦く噛んで、けれど言われた。

「負けじゃないな、あれは互角だろ?」
「そうでしたか?俺が先に蕎麦猪口を置いたと思いますけど、」

訊き返しながら昨夜を手繰る、たしか自分が先に盃を置いた。
けれど山国育ちの先輩は笑った。

「あれと同時に佐伯、ひっくりかえったろ?あいつの介抱したの憶えてないのか、」

ことん、盃を置いたテーブルその向こうは?

―そういえばひっくり返ってたな、あいつ?

あの顔がばたり倒れこんだ、あの瞬間つい嬉しかった。
あのあと自分はどうしたろう?記憶なぞらせ微笑んだ。

「俺、水を渡しましたね?佐伯さんに、」
「そうだよ、佐伯もタクシーまで自分で歩いてたけどな。宮田はあのあと大丈夫だったか?」

精悍な瞳が訊いてくれる、率直な気遣いに笑いかけた。

「眼が覚めたら夜中でした、藤岡のベッド占領してて悪かったです、」
「そうか、藤岡とはのんびり話せたか?」

低めた声しんと廊下に訊く。
この先輩なり心配してくれる、ただ感謝すなおに微笑んだ。

「寮の屋上で缶ビール飲みました、今も立川まで車だしてくれて、」

あの同期と二人あれほど話したのは初めてだ。
そんな時間くれた先輩は笑ってくれた。

「そうか、国村さんまだ部屋にいるぞ?だから早く帰ってきたんだろ、」

もう一人、今話すべき相手いるだろう?
促してくれる眼ざしに微笑んだ。

「はい、行ってきます、」

今日、ここを出たら二度と戻らない男。
だからこそ今日ここで会っておきたい、願い歩いて廊下の涯ノックした。

「どうぞ?」

テノール応えて扉、かたり開かれる。
スーツ姿めずらしい長身が現れて、唇の端にやり笑ってくれた。

「朝帰りおつかれさん、み・や・た?」



もう、その部屋は何もなかった。

布団かたづいたベッド、文庫本ひとつない書棚。
デスクきれいに拭かれて何もない、壁ぐるり蒼かった写真も消えた。

「何にもないんだな、」
「あと1時間で退職だからね、正式にはサンマツだけどさ?明日から自由だよ、」

テノール朗らかに笑ってくれる。
その衿元めずらしくネクタイ整って、いつもと違うザイルパートナーに笑いかけた。

「ご機嫌ですね国村さん、退職そんなに嬉しいですか?」

元から警察官に向いていない。
そう評された無邪気な瞳からり笑った。

「そりゃ嬉しいね、ウルサイ規則なんたら解放だよ?守秘義務は一生モンだけどね、」
「医者にも規則なんたらあると思うけど、」

微笑んでベッドの端に腰下ろす。
ぎしり、固いスプリングの軋みにスーツ姿は言った。

「ソレも愉しいんじゃない?ほんとに選んだ道ならさ、ねえ?」

この「ねえ?」は予告で警告。
もう慣れたトーン困りながら訊いた。

「光一、それ周太のこと言ってる?」

この男が今このタイミングで言うなら?
見つめた推測に聡い瞳が笑った。

「もう選んでるかもしれないね、周太も3末だけど実質もう辞めてるしさ。だろ?」

もう選んでる、そうなのだろうか?
言われた可能性に訊いた。

「光一は周太と連絡とれてるんだ?」
「とれてるね、」

さらり言い返して椅子に腰下ろす。
長い脚ぽんと片胡坐くんで、悪戯っ子の眼ざし笑った。

「おまえも電話すりゃイイね、藤岡に教えてもらったんだろ?」

わかってるよ?

そんな視線まっすぐ笑ってくる。
唇の片端また上げた笑顔にありのまま微笑んだ。

「教わったよ、光一はぜんぶ解かってるんだな?」
「おまえよりは解かってるかもね、だから教えてやるけどさ?」

深いテノール笑って唇の端にやり上がる。
なにか企んでいるな?そんな貌が懐かしくて笑ってしまった。

「なんか光一のその顔、ひさしぶりだな?イタズラするぞって貌、」

この笑顔が好きだった、明るくて。
底抜けに明るい眼いつも朗らかだった、その瞳を曇らせたのは自分だ。
そう解かっているから今も引留められない場所で、聡い瞳からり笑った。

「たしかにね?俺から英二への悪戯ランキング上位かもね、」
「ランキング上位って怖いな、何?」

訊き返しながら肚底そっと力籠める。
どんなことを「教えてやる」のだろう?見つめた先、雪白の笑顔は言った。

「この部屋、佐伯啓次郎が来週に入るからね?まちがって夜這いナンカするんじゃないよ、」

夜這いって、何を言いだすのだろう?
可笑しくて笑ってしまった。

「佐伯さんが光一のいた部屋って、変な感じだな、」
「ふん?オマエそんなに苦手なのかね、」

明るいトーン訊いてくれる。
その問いかけ素直に頷いた。

「信用できないって言われたよ?僕に営業しても無意味だ、そんなやつザイルの信頼できないってさ、」

あの眼は冗談なんかじゃない、唯ただ正直だった。
昨日あの雪尾根に見つめた記憶、ザイルパートナーの瞳ふっと笑った。

「なるほどね?それってさ、佐伯啓次郎はオマエ次第だよ?」

底抜けに明るい瞳が笑ってくれる、その言葉つい考えこむ。
自分次第、そうかもしれない?めぐらす想い口開いた。

「俺の態度次第で佐伯も変るってことだろ、でも全否定っていうか、嫌われてる感じすごかったけど?」

最初から嫌っていた、あの眼は。
そう見つめた印象に深いテノールが笑った。

「だから昨夜は飲ませたね、べろべろ同士ちっとは連帯感も生まれたんじゃない?」
「あそこまで嫌われてると難しいんじゃないかな、」

本音そのまま声にして午後が重たい。
あの男もうじき来てしまう、そうしたら顔合わせる毎日が始まる。

―ここまで苦手意識って俺、めずらしいけど、

読めない男、御しがたい相手。
こんな初めてに困る前、ご機嫌な笑顔が言った。

「ソンダケ苦手な貌するってお初だねえ、そんな悩ましいんじゃ次は聴かないどく?ソッチも重要なんだけどさ、」
「もう一つあるのか、重要なら教えてよ?」

ため息かたわら微笑んだ真中、デスクの視線すっと細くなる。
ほんとうに重要らしい?そんな眼ざしが口開いた。

「今日、午前中になんとかして周太を捉まえな?でなきゃ一生後悔するだろね、」

がらんと何もない部屋、深いテノールだけが響く。
この言葉どういう意味だろう?

「後悔するって、周太に今日なにかあるのか?」
「ソレくらい自分で確かめなね、さて?」

長い脚さらり片胡坐ほどく、スーツの長身が立ちあがる。
もう荷物すべて消えた部屋、ブラックスーツ凛と笑った。

「飯食いに行くよ英二?最後のケイサツ飯つきあいなね、」

革靴くるり踵返す、その手は鞄ひとつだけ。
もう二度と戻らない、そんな背中に問いかけた。

「光一、次、一緒に飯食うのいつだ?」

警察官の先輩で上司、その貌はあと1時間で終わる。
けれど同齢の山ヤ同士ではいたい、願いに澄んだ瞳ふりかえった。

「明日から俺も予備校だけどね、越沢バットレスを毎朝ヤッて通うツモリだよ?」

山岳救助隊は辞める、けれど山はやめない。
そう告げる瞳は底抜けに明るくて、教えてくれた約束に笑った。

「週休に俺も行くよ、カップ麺また食おうな?」
「いいよ、今日おまえ週休だから三日後かね?」

笑って扉かちり開かれる。
廊下の窓あざやかな朱金の空、もう明ける今日にザイルパートナーは言った。

「いいかい英二、つかまえたいんなら今日だよ?」

(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】

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山岳点景:初秋の水面

2016-10-15 23:23:00 | 写真:山岳点景
不尽に満ちる、



山岳点景:初秋の水面

昨日の早朝、出先にて。
悠久たたえる満々の水、ぼーっと見ているだけで時が過ぎます。

撮影地:茨城県某所

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休日雑談:秋晴のインドア

2016-10-15 08:30:00 | 雑談
ひさしぶりの秋晴れ青空、
でも風邪の症状しっかり出てる=山なんか行けるわけがない、それでもやっぱり、

あー今日ほんと登ったら気持ち良かったろうなあ。。。

とつい思うので、
去年今ごろ頂上@北奥千丈岳から秋の蒼、



登山口までの林道は落葉松の黄葉が見事、



金茶色、深緑、秋深まる色そまる奥秩父山塊、



この左サイド↑冬枯れた山間を見ると解かりますけど、かなりワインディングロードなので運転注意。
見惚れたくなったら広めの路肩に停車しましょう、笑



標高2,601メートル奥秩父山塊の最高峰、山頂360度パノラマが好きです。



登りたかったなあ今日、なんて思いながらぼーっと座っているPCごし、
キャットタワーからの視線なんだかゴキゲン、おもちゃ投げるくらいはしないとです、笑


撮影地:北奥千丈岳@山梨県

北奥千丈岳の山頂は岩場×吹きさらし、強風と天候悪化は要注意です。

○夢の庭園までは散歩気分で登って来る人もいます、が、その先は登山装備が必要です。
○360度パノラマ山頂=逃げ場なし、落雷・強風が危険なポイントになります。
○登山ルートは隘路・細い木道あり、振向き・すれ違いの際にザックで人を払い落とさないよう要注意。
○登山口の大弛峠へむかう林道は曲がりくねったワインディングロード←運転注意!車酔い弱いひと危険です。
○岩場が多いため雨・雪のあとは特に滑りやすくなります、登山靴のグリップしっかりで。
○分岐点がいくつかあるルートです、間違えるとエライことになるので要注意※どんなエライことかは登山図で確認を。
○2,600超の吹きさらし山頂は気温かなり低め、登山ウェアしっかりで体温低下を防いで無難です。

大弛峠は百名山で知られる金峰山の登山口でもあります、そのため悪天候時、

「金峰山あきらめて北奥千丈岳・国師岳にしとこー」

なんて人もいますが、悪天候時の登山自体が危険+吹きさらし山頂は雷雲と濃霧強風の巣です。
風に低体温症を起こす、濃霧に踏みちがえ転滑落・道迷いからの疲労凍死、なんてことはベテランも他人事じゃありません。
悪天候時登頂がカッコいいーなんて勘違いしているヤツは単純ただただ迷惑です、救助する側のリスクと迷惑を考えましょう。
それでも登るなら「遭難しても救助不要」と近親者に遺言して登りましょう、笑

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第85話 暮春 act.16-side story「陽はまた昇る」

2016-10-13 23:53:18 | 陽はまた昇るside story
‘Cause I did suffer I must suffer pain. 悔悟の晨 
英二24歳3月下旬



第85話 暮春 act.16-side story「陽はまた昇る」

言われた言葉やたら響く、それは「言葉」のせいかもしれない。
それとも声の明るさだろうか、考えつい英二は笑った。

「それって藤岡の地元の言葉?」
「あ?思わず訛りでちまったな、しゃーないな、」

からり笑って大きな目が明るい。
あいかわらずな同期は缶ビール片手、深夜の屋上に笑った。

「山はボガ吐きゃボッコれるだ、でも宮田はボッコれねえだべ?んだがら言ってっちゃ、おだづなよ!」

紺瑠璃ふかい高い空、朗らかな声ひろやかに凄み笑う。
言葉の意味は解らない、それでも伝わる温もり笑いかけた。

「言葉よくわらないけど藤岡、叱ってくれてるんだな?」
「叱ってるって解かるのか、エセガギャにしちゃ素直だなあ、」

訛り大らかに笑ってくれる。
月ふる稜線めぐる町の一隅、明るい大きな目が自分を見てくれた。

「宮田の初めての死体見分、卒配すぐだったろ?」
「うん、」

うなずいて秋の初めが遠い。
たった一年半前の記憶、それなのに遠い時間へ同期が続けた。

「宮田はああいう死体を見たの初めてだったろ?身内じゃないドッカの誰かのご遺体は、」
「うん、」

またうなずいて森が映る、あれは巡回の夕刻だった。
秋ほの暗い森の底、浮んだ縊頚死体の長い白い首。

「首つり遺体はヒドイ状態になるし、他人の死体って正直ちょっと怖いよな。でも宮田は吐かなかったからスゴイって思ったよ、」

ひとつの映像に同期の声が言う、その言葉にただ正直な声がでた。

「最初だから絶対に吐きたくなかったんだよ俺、ほんとうは気持ち悪くかったけど意地を張ったんだ。馬鹿にされたくなかっただけだ、」

あれは唯、意地だった。
その意地張り通したかった一人に微笑んだ。

「藤岡は登山の経験者で柔道もやってたろ?最初から目標を見つけて山岳救助隊に選ばれる努力してた藤岡が、俺は羨ましかったから、」

焦っていた、この同期を見るたびに。

「俺は山の経験もないくせ剣道も柔道も体育レベルだったろ、駐在所に必要な経験ないのに卒配希望を出したんだ。とんだ背伸びした自覚は俺なりあってさ、だから適性が無いって判断されることは絶対にしたくなかったよ、背伸びを等身大にしたくてさ?」

背伸びして、精一杯に腕を伸ばして掴んだ場所。
高嶺だと解かっていた、だからこそ辿りついた今に笑った。

「そういう背伸びも気づかれたくなくてさ、必死で勉強して訓練かじりついて良いヤツの貌つくったんだ。たんなる見栄っ張りだよ?」

見栄っ張り、それでも辿りつきたかった。
そうして欲しかったものがある、その名前まっすぐ言われた。

「そーゆー見栄っ張りだから宮田、湯原の連絡先も俺に訊いてこないのかよ?」

衒いなく言ってくれる、こんな男だから羨ましい。
本当に羨ましいな?あらためての羨望と笑った。

「そうだな、今ほんと藤岡に嫉妬してるかも?」
「うわ、きれいな顔して笑っちゃってるよ、怖ええなあ、」

怖い、そう言いながらも大きな目は明るい。
月また傾いた空、怯えのかけら一つない笑顔に言った。

「周太は俺のこと怖がってるよ、だからアドレス消されたんだ、」

多分あのひと自身が消したのではない、でも同じだ。

―お祖母さんが消したんだろうな?周太の様子から気づいて、

その行動力も判断力も備える女性だ、祖母は。
そうする権利と義務も持っている、その理由に噤んだ唇ビールふくんだ。

―親戚だなんて誰も信じないだろうな、俺と周太は違いすぎて、

違いすぎる人、けれど逢いたい。
この想いは血縁ゆえだろうか?そんなこと幾度を考えたろう。
また考えめぐる足もと雪は凍る、さくり踏んで冷たい鉄柵もたれて、ほろ苦い缶ビールごし言われた。

「湯原が宮田を怖がるのか?でも、あの雪崩に体張ったのは宮田だろ?」

見ていたよ?そんなトーン話しかけてくれる。
テレビ映されていた光景に訊かれて、ただ微笑んだ。

「あれも俺の自分勝手だよ、俺が置き去りにされるのが嫌でサポートに入ったんだ。周太の傍にいたかっただけだよ?」

生きて欲しかった、置いて行かれたくなくて。
独り残されることがただ怖い、そんな本音に同期が笑った。

「置き去りは嫌だよな?そーゆーの俺もある、寂しくって怖いよなあ、」

そうだった、この同期は。
この同期こそ何人に「置き去り」されたろう?気づいた現実に訊いた。

「だから藤岡、山岳救助隊になったのか?救助のプロなら飛びこめるもんな、」

置いて行かれたくない、それならどうするか?
そうして見つけた場所の同僚はからり笑った。

「そうだよ?置いてかれるの怖いから飛びこんで救けるポジション選んだんだ、んだがら言ってっちゃ、」

大きな目に月光うるんで揺れる、けれど訛りが温かい。
泣きそうで、けれど明るい笑顔は口を開いた。

「言っちゃうけど俺もタカくくってたんだ、都会ぼっちゃんの宮田より俺のが現場では強いだろってさ?でも違ったろ、」

深い紺青色はるかな稜線、明るい声が響く。
静かな屋上しずまる一点、燈るような声に笑いかけた。

「違わないだろ?藤岡のほうが救助でるの早かったし、ザイルワークも上手いよ、」
「それはそうだけどな、山の駐在サンはそれだけじゃねえだろ?俺にしたら救助隊ソッチで選んでんだ、」

笑って缶ビールかたむける。
ごくり喉ぼとけ小気味いい、その口元さっぱり笑った。

「俺は最初の死体見分で吐いたろ、そのあとも食えなくて痩せて情けなかったよ?でも宮田は飯ちゃんと食えたんだ、初めてご遺体を見たのにな、」

大らかな声、けれど語られる記憶は辛い。
あれから経た年月に同期は続けた。

「ご遺体あんだけ俺は地元で見たのになあ?見て覚悟してここ来たのに何やってんだって情けなくて、山は嘘吐けねえ思ったんだ、」

その言葉、さっきも言っていた。
訊いてみたくて凍える柵に微笑んだ。

「山は嘘吐けないか、どういう意味で言ってるんだ?」
「なんていうかなあ?奥多摩は登山の危険モチロンだけど自殺者も多いからなあ、生きると死ぬの紙一重が山だって俺なり思うんだ、」

朗らかな声のんびり続けてくれる。
言われるまま肯けて笑いかけた。

「そうだよな、天気一つで風景も難易度も変わるな?体調も誤魔化せば危ないし、」
「それそれ、自殺のつもりが晴天の山で元気になって帰った人もいるんだよ、紙一重だろ?」

闇やわらかな屋上の隅、白く息ながれて夜が更ける。
もう深更すぎゆく午前の夜、息白い笑顔は言った。

「紙一重だから容赦なく自分ぜんぶ出るよ、自分にすら嘘吐けねえのが山だなあ?」

嘘吐けない、そう笑った声はるか稜線にゆく。
夜ひろやかな屋上の酒、ほろ苦い冷たい香に声が温かい。

「んだがらな、山の宮田はタフで優しいイイヤツだって俺は知ってる。そのまんま湯原にも連絡しなよ、ほら?」

ポケットごそり出してくれる、かちり開いて灯が燈る。
あいかわらずスマートフォンじゃない携帯電話、変わらない同期に笑いかけた。

「藤岡もガラケーのままなんだ?」
「山じゃこっちのが便利だろ、壊れにくいし充電保つし。ほら宮田も出せよ、赤外線送信できるだろ?」

話しながら携帯の先端を向けてくれる。
今いちばん欲しいアドレス届くのだろう、それでも躊躇って言われた。

「遠慮すんなって宮田、知りたい人には教えてくれって湯原に言われてんだってば?疑うんならメール見せるよ、」

言いながら指先すぐ動かす、その顔あわい光に笑っている。
嘘なんか吐いていない、そんな大きな目にかり笑ってくれた。

「ほらな、これって宮田のこと言いたかったんじゃねえかな湯原、」

ランプ燈らす電子文字、その文面が懐かしい。
ただ懐かしく見つめる雪の屋上、夜の紺青ふかく紫紺に明るむ。


(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】


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