萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

山岳点景:秋野にて

2016-10-13 22:38:04 | 写真:山岳点景
秋晴れ、午後の草原



山岳点景:秋野にて

急に寒くなったこの頃、山上は銀波ゆれるススキ原。
ゆれる尾花の根もと、紺紫すっくり佇む野生の竜胆リンドウ。


撮影地:山梨県某所

秋の夜長は日が短すぎ、遅くとも15時には下山完了で、笑

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山岳点景:山霧の初秋、色彩

2016-10-12 22:02:00 | 写真:山岳点景
秋霖ふる雫に、



山岳点景:山霧の初秋、色彩

十月上旬、雨あがりの山は霧ふかい雫の森。



華奢ゆれる紫あわい雫は関屋丁子セキヤノチョウジ、奥多摩では九月から咲きだします。



紫あざやかな鳥兜トリカブト、毒草ですが雨濡れた花色はただ美しいです。



あわい朱鷺色ちいさな花は高野箒コウヤボウキ、高野山では箒の素材に使うためこの名前がついたとか。
水滴まとう花びらは繊細で、箒になるなんて意外なほど可憐なかわいい花です。



亀葉引起カメバヒキオコシの薄紫ちいさな花びらが散ると、秋は紅葉を迎えます。



そんな頭上、朱色そまる穂咲楓ホザキカエデ・は別名で本名は麻幹花オガラバナ、カエデ科らしくない名前です、笑


撮影地:三頭山@東京都檜原村2016.10

まだUPしていなかった写真を貼ってみました、笑

前回も書いた通り雨後×霧の山は天候急転+足場も雨ゆるんで脆いため危険も多いです。
特に低山は道迷い遭難が多発しています←交錯する仕事道・水源林巡視路などに迷いこみ転倒滑落、死亡事例も少なくありません。

○ヘッドライト必須←日没や急な濃霧に対応する準備です。
○熊鈴は必携←秋は冬眠前の食べこみをするためヒグマもツキノワグマも行動範囲が広い=遭遇率が高いです。
○早朝&夕刻は単独行動厳禁←朝夕は野生獣の食事時間なため遭遇率が高く、特に空腹時は襲われやすい。
○15時には下山完了←とくに秋は日没早い&気温低下も激しい→道迷い・低体温症や凍死など遭難事故多発の時季です。
○雨具・防寒着は必携←秋雨・霧など天候急転+日没の速さなど予想外アクシデントが秋は多いです、万が一の自助対応しっかりで。

軽ハイキングや散策でも山は山、装備&基礎知識が安全の素です。
専門書ちゃんと読んで秋行楽を楽しんでくださいね、笑

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文学閑話:母国の花に―Reginald Horace Blyth

2016-10-11 22:13:03 | 文学閑話韻文系
異郷の母国


文学閑話:母国の花に―Reginald Horace Blyth

ひさしぶりに通った道、山茶花が咲いていました。
日本に自生する花色は白、これは↑園芸種ですが薄紅色やわらかに惹かれます。
この花が咲くと秋、で、いつも一句を想いだします。

山茶花に 心残して 旅立ちぬ

1964年10月28日に亡くなった文学者が遺した辞世句です。
彼は英国人でありながら日本を愛し、日本文化研究者として生き、日本で没しました。

Reginald Horace Blyth レジナルド・ホーラス・ブライス

ロンドン大学卒業後、京城帝国大学英文科助教授、第四高等学校英語教官を歴任。
第二次世界大戦下も日本に残り、そのため敵性外国人として収監されましたが日本を愛することを諦めなかった人です。
そして戦後、敗戦国となった日本に残ることを選んだブライスは戦後処理にも奔走し、学習院大学英文科に勤めました。
こうした日本サイドに立ち続けた彼の一貫した姿勢と研究功績に、東京大学も文学博士号を授与しています。

名誉白人という言葉があります、有色人種でも「特別」に白人と同等に扱おうという思想です。
いわゆる白人至上主義に生まれた言葉で「有色人種のクセにすごいじゃん?」っていう上から目線。
ようするに人種差別用語なんですけど、開国した明治期以降、日本人もこの扱いを受けていました。

有色人種国は西欧から見れば「下」そのためブライスの最初の妻も京城時代に離婚、帰国しています。
その後、再婚の妻に日本女性を選んだブライスは当時の常識から異端だったということです。
しかも戦中に迫害された日本で生きることを彼は選びました、その想いを聴きたいです。

ブライス博士の文学的功績は禅の思想と俳句を世界に広め、国際社会における日本文化への敬愛を確立したことです。
敗戦国かつ有色人種の国として差別や被支配にあった日本、それでも今、日本文化は世界中に愛好家がいます。
禅の精神に学び、武士道や忍者に憧れ、紫式部『源氏物語』に描かれる日本美を求め、漢字をcoolと評する。
今の日本アニメやマンガが世界中で人気になれている土台は、彼のような学者たちが懸けた人生です。

深い信念と揺るがない日本への愛、そんな学者は日本で亡くなり鎌倉に葬られました。
その最期に見た今生の花は山茶花、そんな辞世句は一人の学者が生きた熱あざやかです。

“山茶花に 心残して”

彼が生まれた国、イギリスに山茶花はありませんでした。
日本と中国の原産である山茶花を辞世句、今生最期に選んだ想いは「心遺して」
生まれた国の花ではなく生きた国に自生する山茶花、そこに心遺した文学者はどこを故国と想い、望郷を詠んだのか?

山茶花は散るとき、花びら一つひとつ舞います。
原生種の白花だと風花ふるようで、一陣の風いっせいに舞う姿は雪と似ています。
ブライス博士が亡くなった10月28日は鎌倉も山茶花が咲くころです、その日その窓も白い山茶花が咲いていたかもしれません。

山茶花に 心残して 旅立ちぬ

会ったことがない異国の人、著書も日本では版が少なく読んだことも少ないです。
それでも彼の辞世句は時間も生死も超えて毎秋、花が咲くたび響きます。

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第85話 暮春 act.15-side story「陽はまた昇る」

2016-10-10 23:55:07 | 陽はまた昇るside story
In mine Idolatry what showers of rain 偶像と真実 
英二24歳3月下旬



第85話 暮春 act.15-side story「陽はまた昇る」

自分勝手だ、自分の優しさは。

「俺が優しくするのは良いヤツに想われたいからだよ、藤岡が言ってくれるような優しさじゃない、」

言葉にした声は白く凍える。
靄あわい唇そっと缶ビールつけて、冷えた喉で笑った。

「俺って良いヤツぶるクセあってさ、見透かされると余計ムキになって良いヤツしたくなるんだ。嫌なヤツだよな俺、」

そんな自分だと今なら解かる、自覚が疼く。
だから約束ひとつ果たせない今に訊かれた。

「なあ宮田、もしかして佐伯さんになんか言われた?」

大らかなトーン尋ねてくれる。
澱まない声は朗らかで、すこし救われるまま口開いた。

「僕に営業しても無意味だって言われたよ、そんなやつザイルの信頼できないってさ、」

あの男に悪意はない、ただ正直なだけだ。
正直だからこそ突きつけられた記憶に訊いてくれた。

「うわ、またキツイこというなあ。いつ言われたんだよ?」
「日陰名栗峰で言われたよ、遭難者の荷物回収するときに初対面の挨拶してさ、」

春の雪深い尾根、まっすぐな瞳は静かだった。

『僕に営業しても無意味だ、そんなやつザイルの信頼できないだろ?』

あの言葉なにも反論できない、自分こそ。
ただ肚底わだかまり吐きたくて、吐息ふかく白く笑った。

「ポスターと同じ笑い方だっても言われたよ?初めて顔を合せた次の言葉がそれでさ、静かな眼で穏やかな声だったよ、」

あの眼ざし、あの声、だから今夜は呑み過ぎた。
そうして仰ぐ紺瑠璃はるかな屋上、雪嶺めぐらす夜に言われた。

「あーそういうの佐伯さんっぽいや、悪気ないんだよあれ。クソ正直っていうかさ、昔の湯原とちょっと似てるんだ、」

名前ふたつ、このタイミングで並べてくれる。
もう解かるようで相手の意図そのまま訊いた。

「藤岡には周太から連絡あったんだろ?」

着信ひとつない、受信メールもない、でも「自分だけ」なのだろう?
そんな推測に笑いかけた。

「さっき藤岡、湯原が無事かって訊いてくれたけど本当は連絡あったんだろ?でも俺とは連絡してないって周太に言われた?」

問いの声そっと白く凍える、薄闇あわい風に頬が冷たい。
月すこし傾く屋上の隅、同期は大きな眼まっすぐ口開いた。

「携帯の番号が変わったってメール着たよ、一週間くらい前だけどスマホにしたんだってさ。それだけだよ?」

だから返事、なにも来なかったんだ。でも、

「やっぱり周太、藤岡には連絡してたんだな…」

この同期には連絡が来た、でも自分にはなにもない。
どういう意味なのだろう、何があった?考えるまま言われた。

「電話帳が一部消えたらしいよ、宮田のも消えちまっただけだろ?ソンナへこむなよ、」

一部、そこに自分がなぜ含まれた?

―あのひとかな、こんなこと出来るのは、

めぐらす思考そっと風吹きぬける。
冷厳やわらかに髪ゆらす、額しずかに凍えて頭脳が冴える。
缶ビール片手の雪の屋上、星ふる紺青の町ながめて言った。

「ありがとな藤岡。でも周太に愛想つかされて当然だから、俺は、」

ポスターと同じ笑い方、そんな自分だと自覚がある。
だから指摘されて苛立って、その眼に声に重ねてしまった。

―あの男とザイルパートナーって、やってけるのか?

佐伯啓次郎、きっと真逆の男。

まったく違う生活環境、交友関係、そんな男なのだと今日だけで解かる。
あれだけ違いすぎる相手は今までいなかった、かすかな途惑いと自虐に背を敲かれた。

ばちんっ、

「なーに言ってんだよ宮田っ、」

掌型じわり背中ひろがる、痛い。
そのくせ明るい声に見つめた真中、大きな目が笑ってくれた。

「何してソンナこと想うのか知らねえけどさ、すくなくってもさ?山の宮田は優しいイイヤツだって俺は知ってる、」

その「優しいイイヤツ」は創った自分だ?
解かっているまま笑った。

「それだよ藤岡、その優しいイイヤツって貌が俺の道具だって言ってるんだけど?」
「うん?道具ってどういう意味で言ってんだよ?」

訊き返してくれる眼ざしが深夜も明るい。
この眼が自分にあったなら少しは違う人生だったろうか、想い見つめながら笑いかけた。

「優しいイイヤツの言うことなら誰でも聴いてくれるだろ、それで頼まなくても何でもしてくれる、」

結局それが自分の目的だ、無意識でも意識的にでも。
そんなこと繰りかえして辿りついた深夜の屋上、それでも明るい目が笑った。

「そーゆー難しいこと解かんねえよ俺?解かんねえからさ、山の宮田はホンモノだって解かるんだ、」
「解かんねえのに解かるって、なんだよそれ?」

笑い返してビール缶くちつける。
冷たい香ほろ苦い、それでも喉かすかな甘さに言われた。

「山は嘘吐き通せるトコじゃねえ、んだがら言ってっちゃ、」


(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】

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深夜雑談:秋の夜長×夜食テロ

2016-10-10 23:43:17 | 雑談
食欲の旬



深夜雑談:秋の夜長×夜食テロ

気分転換に夜食テロします。
休日に撮った挿絵用写真なので今作ったものではありませんがアシカラズ、笑

前菜は戻鰹のカルパッチョ、
刺身用の鰹に冷蔵庫にあったスプラウト+玉葱・人参・トマト+バジル。
バジルはベランダで採れた自家製です、実家のゴキンジョサンからもらった株分けが立派に育っています。



パスタはカルボナーラ、舞茸どっさり秋味です。
黒胡椒も多めに削ってかけた黒ビールや赤ワイン系、日本酒なら香&味ガツンな醇酒タイプがオススメ。



茸のパスタといえば先日、
よく行く道の駅レストランで出してくれた香茸のペペロンチーノはなかなかでした、笑

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山岳点景:秋峰富士、十月

2016-10-09 23:54:14 | 写真:山岳点景
最高峰遠望 



山岳点景:秋峰富士、十月

十月、雲間の富士山。



例年なら雪被る十月、今日は無雪の最高峰。


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山岳点景:山霧の初秋

2016-10-09 22:33:01 | 写真:山岳点景
Metropolitan×時雨月十月



山岳点景:山霧の初秋

雨あがった午後、三頭山は雲の中。



橡の木トチノキ色づきはじめた霧の森、
亀葉引起カメバヒキオコシの花が残っていました、ふわっとした薄紫が花びら&赤紫が萼です。



カメバヒキオコシの植生は中部地方から東北南部、初秋に咲く山野草です。
茎に蓄えた水分が冬期、零下に凍って→膨張→破裂して氷の花を咲かせます。



で・これ↓が氷の花、一昨年の1月@三頭山で撮ったモノです。



東山薊アズマヤマアザミ、中部地方~関東に咲く山林の秋花。



林縁の木蔭、白嫁菜シロヨメナが霧の薄闇に冴えます。




毒草の山鳥兜ヤマトリカブト、ここのは薄紫あわく上品です。



森ながれる霧は雲、雲中にある山は天候悪化に要注意。



滝かかる楓も黄葉が始まりました。



黄緑→朱色にうつろう頭上の秋。

深まる秋ブログトーナメント


撮影地:三頭山@東京都檜原村

霧の山に登るのは原則危険です、なのでコレ↑も常連な散策コースのみで本格的な登山道には踏みこんでいません。
また秋の山は日暮れがびっくりするほど速い+日没後の気温低下が急激です、軽装での入山は避けて無難になります。

○ヘッドライト必須←日没や急な濃霧に対応する準備です。
○熊鈴は必携←秋は冬眠前の食べこみをするためヒグマもツキノワグマも行動範囲が広い=遭遇率が高いです。
○早朝&夕刻は単独行動厳禁←朝夕は野生獣の食事時間なため遭遇率が高く、特に空腹時は襲われやすい。
○15時には下山完了←とくに秋は日没早い&気温低下も激しい→道迷い・低体温症や凍死など遭難事故多発の時季です。
○雨具・防寒着は必携←秋雨・霧など天候急転+日没の速さなど予想外アクシデントが秋は多いです、万が一の自助対応しっかりで。
※低山は特に迷いやすいです、交錯する仕事道・水源林巡視路などに迷いこみ点滑落→死亡の遭難事例が絶えません。

軽ハイキングや散策でも山は山、装備&基礎知識が安全の素です。
専門書ちゃんと読んで秋行楽を楽しんでくださいね、笑

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第85話 暮春 act.14-side story「陽はまた昇る」

2016-10-07 23:56:00 | 陽はまた昇るside story
And drown in it my sin’s black memory; 罪の天上、
英二24歳3月下旬



第85話 暮春 act.14-side story「陽はまた昇る」

仰ぐのは、なつかしい紺瑠璃の夜。

「じゃ、乾杯、」
「乾杯、」

かつん、ぶつけた缶ビール稜線はるか響く。
登山ジャケットかすめる風そっと頬冷やす、星ふる銀いろ浮びだす。
深夜なだらかな屋上の夜、遠く近く山波たなびく空を月が晴れた。

「…きれいだ、」

凛々、月冴える。

雲はるか流れゆく、月下めぐらす稜線の銀色うかぶ。
尾根あわい光ゆるやかに麓たなびく、その銀いろ足許も照らす。
この夜の彼方に最高峰もある、そんな雪の屋上しんと穏やかで缶ビールの唇冷たい。

こんな夜どれくらいぶりだろう?

「いいな、奥多摩の夜は、」

微笑んで白い吐息、アルコールそっと香る。
ほろ苦い芳香ゆるく喉すべりこむ、くゆらす白い香に同期が笑った。

「宮田も好きだよなあ、寒い屋上で冷えたビールって耐寒訓練だろ?」

耐寒なんて言いながら寒そうな顔していない。
そんな北国生まれらしさに笑った。

「ははっ、藤岡ぜんぜん寒がってないクセによく言うよ?」
「宮田もだろ?都会育ちのクセにすごいよな、」

からり笑い返してくれる、その横顔は夜空にも明るい。
小柄だけど登山ジャケットの肩は頑健で、去年より逞しい眼ざしに笑いかけた。

「藤岡の地元、もっと寒いんだろ?」

この話、こちらからして良かったかな?

まだ早かったろうか、それとも訊いて良かったろうか。
すこしの迷いと笑いかけた隣、大らかな笑顔がこちら向いた。

「もっと寒いよ。でも温かいんだ、今も、」

今も、

そう笑ってくれる瞳は大らかに和む。
いつも明るい同期、でも映した過去が見つめ返した。

「俺んちさ、津波で流された話って宮田にしたっけ?」

今日は3月の終り、だからこの話もしてくれる。
そんな眼ざしに英二は微笑んだ。

「すこしだけ、かな?」

全てを聴いたわけじゃない、それでも事情は見える。
まだ話すことも辛いだろう?けれど北国の笑顔は言った。

「俺の地元は宮城だけどな、あの地震の津波かぶってさ、じいちゃんが死んだんだ、」

地震、津波、そして死。
そこにいた横顔はちいさく笑った。

「じいちゃんは見つかったから幸運だったよ、でも探すのに俺、ご遺体たくさん見てさ?それが救助隊を志願するキッカケなんだ、」

月と星の屋上、鉄柵もたれて小さく笑う。
登山靴の足もと雪あわく凍って、そんな三月の夜に微笑んだ。

「強いな、藤岡は、」
「ありがとな、でも罪悪感すごいよ?」

返してくれる言葉そっと引っ叩かれる。
そのとき残された者が何を抱くのか?その瞳がふり向いた。

「なんで俺が生き残ったんだろうって考えるんだよ、だから救助隊を選んだんだ俺、」

罪悪感、だから選んだ。

こんな想い、昔の自分なら嗤ったろう。
でも今なら解かる肚底から訊いた。

「お祖父さんも警察官だったよな?駐在所で柔道を教えてたんだろ、」

警察学校時代、そんな話を聴いている。
なぞった記憶に同期は笑った。

「地元の駐在さんだよ、救助にも出てたんだ。俺も宮城県警って思ったけどさ、じいちゃんが警視庁でチャレンジしろ言ってくれたんだ、」
「そっか、本部は違うけどお祖父さんと同じ道なんだな、」

笑いかけて鼓動そっと絞まる。
この同期も祖父と同じ道、でも違う明るさに微笑んだ。

「お祖父さんいつも一緒にいるんだろうな、先輩として一緒に、」
「俺もそう想うよ、だってなあ宮田?」

笑って大きな目が山を見る。
夜めぐらす稜線はるか、ふるさと望む視線は言った。

「じいちゃんさ、ご近所さんたちを救助して自分が死んだんだ、」

なぜ津波に呑まれたのか?

その理由まで聴いたことはなかった。
ようやく話してくれる視線はすこし微笑んだ。

「とっくに定年してんのにさ、じいちゃん昔のまんま駐在さんの貌で死んでたよ?ソウイウじいちゃんだから生きててほしかったんだ、」

誇らかな死に顔だった、そう解かる。

会ったことがない男、でもその貌きっと自分は知っている。
この2年間ずっと見てきた瞬間と、その仲間に英二はそっと笑った。

「俺、藤岡が生きていて良かったよ?」

生きていて良かった、この同期が。
素直な想いに缶くちつけて、呑みこんだ麦の香に言われた。

「やっぱ宮田やさしいよなあ、ありがとな?」

朗らかな声が笑ってくれる、その笑顔まっすぐ明るい。
紺瑠璃の闇ふる屋上、それでも月と星の明るい夜にふっと告げた。

「俺、優しくないよ?自分勝手なだけだ、」


(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」】

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山岳点景:太古の樹影

2016-10-07 23:05:05 | 写真:山岳点景
千七百の黄昏
 


山岳点景:太古の樹影

四世紀後半、築かれた古塚に暮れる1,700×365の夕空。


撮影地:国指定史跡銚子塚古墳附丸山塚古墳@山梨県甲府市

東日本最大級の前方後円墳です、江戸時代に編纂された『甲斐国志』にも記録があります。

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木夜雑談:夕月と食事時間

2016-10-06 23:43:33 | 雑談
今日は電話の多い日だった、ゴハンがらみで。

朝あれこれやっていたら電話が鳴って→あれこれ通話して、
電話が終わったら10時すぎ、で、またやるコトやってからデスクで朝ごはんして、

あー朝ごはんいうよりオヤツだなーとりあえず起きてすぐトマトジュース飲んであるけどさ、笑

なんて想いながらヤルコトやって、
いつもどおり昼ゴハンタイム遅くなり、さてゴハンしにいこうか思ったらまた電話が鳴って、
電話が終わったらもう15時に近く、で、

あー昼ごはん言うよりオヤツだなーってかもう夕方になるしなー、

ってことで、

昼もう帰ってからでイイや、そうだ外出そのまま帰宅しよう、笑

ってことで結局17時近くに昼ごはんして、
これもう夕飯だろうなーってか腹へっちゃったなー、ちゃんと食べよう、
なんて考えながら買物に寄ってみたら刺身盛り合わせがお買い得で、

お、悪戯坊主と分けっこして食べられるな?

ってことで買って、帰宅して、
いつもどおり悪戯坊主が出迎えてくれて、

「ごほうびはやくはやく」

と急かされるまま刺身→悪戯坊主の皿へ、
その残り+冷しトマト=刺身とサラダのわんぷれーとでぃっしゅにして、
もらいもんのビールをグラスに注いで、

あー夏日の晩酌はビールいいなあ、笑

と残暑の今日に着替えもせず飲んで、〆にうどん茹でたら一袋やっちゃって、
あーこれ絶対に腹いっぱいになりすぎそうだなあ、なんて思いながら食べてたら電話が来た、笑

電話の主は身内で、
送った荷物が届いたよーという報せ+いろいろ雑談、
ソンナコンナで50分ほど通話が終わったら、うどん少々のびていた。

ま、のびても美味いしイイか、笑

なんてワケで残りを食べ、
食べ終わってちょっとしたら、また電話が来たら夕飯お誘い電話だった。

あー今食べ終っちゃたけど?笑

って返事したら甘いモンでざーと出来る店に連れていくからと迎えにきてくれて、
そして着いた店は昼カフェ&夜居酒屋なトコだったから結局、日本酒+漬物+その他で軽く呑んで、

で、帰ってきたら悪戯坊主はお出迎え無しだった、笑

「しーらないしーらない夜またおでかけなんてしーらない、」

みたいな貌した白もふもふ@冷蔵庫の上、
ごめんなー?と抱っこしたら少し御機嫌を直してくれて、
と思ったら悪戯坊主はカリカリをやけ食いみたいにがっついた、笑

あー二度外出はやっぱり嫌なんだなあ?

とアラタメテ想いながら風呂に入り、出てきたら、
いつもどおり悪戯坊主は扉の前で待っていてくれた。

ほんと、猫は懐っこく愛情深いんだなあ?

とアラタメテ想いながら抱っこして、冷たい水を呑みながらパソコン前に座って、
ソンナ顛末をとりあえずナントナク書いている今ココ→小説これからやろうかなと、笑

で、そんな今日の帰り道は夕月がきれいだった。


<嬉しいこと、悲しいこと 9ブログトーナメントdiv style="text-align:right">撮影地:神奈川県某所

なんだって今日はこんな電話のタイミング?笑

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