萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

山岳点景:360度×Highest point ―北奥千丈岳2017

2017-11-13 23:31:30 | 写真:山岳点景
蒼天、2,601メートル 


山岳点景:360度×Highest point ―北奥千丈岳2017

奥秩父山塊の最高峰へ、入口は木道から。
幅が狭い段もあり足もと注意、で、登ると最初の展望スポット夢の庭園。


青と白の稜線は南アルプス、連なる三千メートル峰。


また樹林帯×木道を登る道、ときおり見える銀嶺に見惚れます。


右サイド、岩のオベリスク佇む頂は百名山の金峰山。
登山口は同じ大弛峠から入れます。


吹きだまり残る雪、凍って硬くなっています。


ここは花の百名山&三百名山である国師ヶ岳のルートでもあります。
石楠花シャクナゲで知られる登山道で、その常緑の葉も小さく丸まって冬支度。


ひらけた岩場の小ピークは富士山の展望ポイント、ココの眺めが好きです、笑


登りあげ拓けた展望、


前国師岳、ここまでくると傾斜なだらかに。


南アルプス×雲海、もう雲上の世界です。


岩場のピークから眼下、紅葉も過ぎた冬枯れの高度感。


前国師岳から下り登りの鞍部を超えると三繋平、
残雪と霜で凍っていました。


三繋平を東へ、石楠花と這松の藪を抜けるとピークが見えてきます。
岩場×崩壊×高い段差で足場イマイチなため要注意、転倒した痕跡よく見るポイントです。


標高2,601メートル北奥千丈岳、奥秩父山塊の最高峰です。
360度パノラマは絶景、なんですけど知名度は低いトコも自分は好きです、笑


マイナーな最高峰、けれど空の青どこよりも綺麗です。


勇気あるお出かけブログトーナメント
撮影地:北奥千丈岳@山梨県山梨市

標高2,601メートルは寒冷地です、今シーズンも既に降雪あり。冬装備×登山靴きちんとお出かけください。
去年の同時期は積雪×林道アイスバーンになっていました。
※大弛峠から入山しやすく夢の庭園までは割と簡単に登れます、が、その先は登山装備ナシでは絶対NG・遭難されると迷惑です。
○寒冷期の木道は凍結しやすい→滑って転倒も多いです、特に降雪×気温低下後は軽アイゼンあると安心だと思います
○木道むきだしの個所はアイゼンで踏まないでください、木道を傷つける+アイゼンの刃をひっかけ転倒します。
○降雪時は雪で木道の穴や岩場など解りにくいです、ストックで足もと確かめながら歩いてください。
○野性獣の生息地です、クマ鈴や話し声で動物たちに通行予告しながら歩いてください※遭遇時の対処は専門書で要チェック。
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山岳点景:富士遠望

2017-11-13 00:00:27 | 写真:山岳点景
雲海はるか、臨む富士


心象的原風景 op.12ブログトーナメント
撮影地:前国師岳より北奥千丈岳の稜線と富士山@山梨県山梨市奥秩父山塊

標高2,570メートルは寒冷地です、今シーズンも既に降雪あり。冬装備×登山靴きちんとお出かけください。
○寒冷期の木道は凍結しやすい→滑って転倒も多いです、特に降雪×気温低下後は軽アイゼンあると安心だと思います
※但し木道むきだしの個所はアイゼンで踏まないでください、木道を傷つける+アイゼンの刃をひっかけ転倒します。
○降雪時は雪で木道の穴や岩場など解りにくいです、ストックで足もと確かめながら歩いてください。
○野性獣の生息地です、クマ鈴や話し声で動物たちに通行予告しながら歩いてください※遭遇時の対処は専門書で要チェック。
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山岳点景:紅葉彩色

2017-11-11 19:10:33 | 写真:山岳点景
山ふところ、草紅葉と黄葉に織られる秋・極彩色。


戦場ヶ原の奥にある樹林帯×湿原です、登山装備でお出かけください。
撮影地:小田代ヶ原@栃木県日光市2013.10

標高1,400超える寒冷地です、今シーズン既に降雪もあったそうなので冬装備×登山靴きちんとお出かけください。
○冬期はトイレ使用不可になります、使用できる場所を確認の上お出かけください。
○寒冷期の木道は凍結しやすい→滑って転倒も多いです、特に降雪×気温低下後は軽アイゼンあると安心だと思います
※但し木道むきだしの個所はアイゼンで踏まないでください、木道を傷つける+アイゼンの刃をひっかけ転倒します。
○降雪時は雪で木道の穴や木の根道など解りにくいです、ストックで足もと確かめながら歩いてください。
○野性獣の生息地です、クマ鈴や話し声で動物たちに通行予告しながら歩いてください※遭遇時の対処は専門書で要チェック。
○国定公園内のため焚火不可・木の実などの採取も禁止です。
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第85話 春鎮 act.41 another,side story「陽はまた昇る」

2017-11-10 23:50:31 | 陽はまた昇るanother,side story
To me, fair frend, 美しいひとへ、
harushizume―周太24歳3月下旬


第85話 春鎮 act.41 another,side story「陽はまた昇る」

小雪ふる門、常緑の葉も白くなる。

こまやかな銀色かすかな風、どこか深く水が香る。
深々、音もない白銀しずかな里にソプラノ朗らかに笑った。

「着いたとたん降りだしたね、露払いかな?」

ぱたん、

運転扉をとじて施錠して、ふりむいて明眸が笑う。
もう決意している、そんな眼ざしに周太は微笑んだ。

「それって美代さん、お相撲の露払い?」
「そう、今から勝負だもん。湯原くんはさしずめ行司役だね?」

きれいな明るい瞳くるり笑ってくれる。
まだ左頬は紅い、それでも楽しそうな唇が言った。

「露払いって元の意味はね、神さまが通る場所の露を払い落とすことなんだ。この雪、勝利の女神だといいなあ、」

澄んだソプラノが小雪うたう。
雪空あおぐ瞳きれいに明るくて、記憶の詞ふれる。

To me, fair frend, you never can be old,
For as you were when first your eye I eyed,
Such seems your beauty still.

遠い幸せの時間、父がくちずさんだ異国の詩。
あの詞が今この山里に映る、雪ふる横顔の瞳まんなかに。

「ん…きっと女神さまだと想うな、」

声にして首すじ熱そっと伝う、だって誰のこと?

―こんなに大事なんだ、もう…それなのに僕はまだ、

大切だ、けれど忘れられない声がある。
もういちど逢えるだろうか?想いに隣が微笑んだ。

「湯原くんにも勝利の女神だよ、きっと、宮田くんにもね?」

おおらかな瞳きれいに笑ってくれる、ほら、こんなだから慕わしい。
いつのまにか超えた想いの相手に笑いかけた。

「ありがとう…きれいだね、」

きれいだ、ほんとうに。

きれいで明るい大きな瞳、この眼ざし大好きだ。
だから願いごと叶ってほしい、そんな雪の門前、常緑のむこう屋根も白い。
あの玄関くぐればそうだ、友人の言葉どおりだろうか?

『あのなあ周太、今、小嶌さんち行くと選択肢が無くなるんじゃね?』

チタンフレームの眼鏡ごし、聡い瞳が言ったこと。
昨夜に話した時間めぐりだす「選択肢」ここは分岐点だ、あのメールもその証拠。

……
subject:帰ってきて?
本   文:責任について話しましょう、お父さんと待っています。
……

あのメール、彼女の母は何を願い昨夜、あの一文を選んだのだろう?
どんな貌で文字打ったのだろう、その指は震えたろうか、それとも?

そんなこと昨夜からずっと考えている。
考えても定まらない、それでも今どうしても支えたくて傍にいる。

―僕こそ責められるかもしれない、でも支えたいんだ…それくらい、だいすきなんだ、

雪の門前ふたり佇んで、隣の横顔ただ眺めている。
その肩はベージュのコート透かして華奢で、けれど逞しい意志あふれている。
その強靭まで幾度いくつも震えた肩、泣いた瞳、そうして腫れた頬のまま彼女は笑った。

「ちょっと手強いかもしれないけど、でもゼッタイに、無事無傷で湯原くんは帰すからね?」

ああほんと、彼女は男前だ?

「ふっ…、」

ほら噴出してしまう、だって想い出してしまった。
つい可笑しくて笑った隣、大きな瞳くるり笑った。

「あははっ、なんでここで笑っちゃうの?」
「だって美代さん、あの…ラーメン屋のおやじさんのことばおもいだしちゃって僕、」

笑いながら声にして、ほら?共通の時間つながっている。
共にした記憶の温もりにソプラノ共鳴した。

「ね、おしぼりで顔拭いちゃったときのこと言ってる?オトコマエナネエサンダナアって言われた時?」
「ふふっ、それ…あははっ、」

再現ものまね可笑しい、笑ってしまう。
こんな時なのに二人ころころ笑いだして、その背後から呼ばれた。

「なんだね、ソンナに大笑いしちゃってさ?小嶌のおっちゃん聞こえてんだろねえ、だまーってさ?」

さくりっ、さく、雪ふむ足音にふりかえる。
純白やわらかに舞う空の下、よく知っている声が笑った。

「ただいま美代、御岳にようこそ周太?」

長身のダークスーツ姿、その瞳からり底ぬけに明るく笑う。
差した傘とボストンバッグ携える幼馴染にソプラノ笑った。

「おかえりなさい光ちゃん、助太刀に来てくれたの?」
「退職して帰ってきたダケだね、俺んちは隣だろ?」

黒目きれいな瞳が笑ってくれる、この笑顔にも逢いたかった。
だしぬけの再会に立ち尽くす雪の里、雪白まぶしい笑顔が言った。

「さて周太、美代にくっついて来ちまったみたいだけどさ?小嶌のおっちゃんは末っ子溺愛マンだよ、ロックオンされたらコワイけど?」

きれいな笑顔まっすぐ言ってくれる。
あいかわらず率直な幼馴染に呼吸ひとつ、白い吐息に笑った。

「美代さんの手伝いがしたいんだ、一緒に勉強する約束だから…もう嘘つきたくないんだ、誰にも、」

大風呂敷、なんて言われそう?
そんな覚悟もしてきた山里の門前、怜悧な瞳が笑った。

「なるほどね?じゃあ俺はイイ拾いもんしたみたいだね、」

深いテノール笑って、白い指まっすぐ隣家を指す。
見覚えのある門前から一台タクシー去って、マフラー姿ふりむいた。

「…え?」

なぜここにいるのだろう、このひとが?

「ね…なんで?」

ほら隣も驚いている、それはそうだろう?
ならんで見つめる雪の道端、登山靴かろやかに学者が笑った。

「御嶽駅もちょっと変わったなあ、何年ぶりか数えちまったよ?」

(to be continued)
【引用詩文:William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 104」】

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山岳点景:木洩陽の秋、柑子色

2017-11-10 08:20:23 | 写真:山岳点景
柑子色、橙色、黄金、金茶色、秋の陽×黄葉えがく染める色事典。


撮影地:美し森山@山梨県北杜市八ヶ岳下部2016.10

美し森は標高1,542メートル、牛首山へ向かうルートは足場イマイチもあるので冬装備×登山靴きちんとお出かけください。
○11月以降かなり冷え込みます、冬期は巨大な霜柱がベンチをひっくり返す零下の世界です。
○冬期はトイレ使用不可になります、使用できる場所を確認の上お出かけください。
○巨大な霜柱を普通の靴で踏みぬくと危険です、登山靴で足もとシッカリがおススメ。
○寒冷期の木道は凍結しやすい→滑って転倒も多いです、特に降雪×気温低下後は軽アイゼンあると安心だと思います
※但し木道むきだしの個所はアイゼンで踏まないでください、木道を傷つける+アイゼンの刃をひっかけ転倒します。
○野性獣の生息地です、クマ鈴や話し声で動物たちに通行予告しながら歩いてください※遭遇時の対処は専門書で要チェック。
※森へ踏みこむと熊の爪痕や鹿の群れをよく見ます、秋は冬ごもりの餌探しで活動も活発なので遭遇はホント要注意で。
※美し森売店より奥は登山道、特に美し森ロッジ分岐→牛首山・赤岳への道は浮石×藪漕ぎ×露岩の道が続くため登山装備ないと冗談ヌキで危険です。
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山岳点景:黄金水彩の森

2017-11-09 21:36:01 | 写真:山岳点景
朝霧ゆれる黄金の森、鹿の声。


11月の今は黄葉も終わり、雪×氷の季節へむかいます。
撮影地:美し森山@山梨県北杜市八ヶ岳下部2016.10

風景や街並み56ブログトーナメント
美し森は標高1,542メートル、牛首山へ向かうルートは足場イマイチもあるので冬装備×登山靴きちんとお出かけください。
○11月以降かなり冷え込みます、冬期は巨大な霜柱がベンチをひっくり返す零下の世界です。
○冬期はトイレ使用不可になります、使用できる場所を確認の上お出かけください。
○巨大な霜柱を普通の靴で踏みぬくと危険です、登山靴で足もとシッカリがおススメ。
○寒冷期の木道は凍結しやすい→滑って転倒も多いです、特に降雪×気温低下後は軽アイゼンあると安心だと思います
※但し木道むきだしの個所はアイゼンで踏まないでください、木道を傷つける+アイゼンの刃をひっかけ転倒します。
○野性獣の生息地です、クマ鈴や話し声で動物たちに通行予告しながら歩いてください※遭遇時の対処は専門書で要チェック。
※森へ踏みこむと熊の爪痕や鹿の群れをよく見ます、秋は冬ごもりの餌探しで活動も活発なので遭遇はホント要注意で。
※美し森売店より奥は登山道、特に美し森ロッジ分岐→牛首山・赤岳への道は浮石×藪漕ぎ×露岩の道が続くため登山装備ないと冗談ヌキで危険です。
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山岳点景:秋色水彩の森で

2017-11-08 12:23:30 | 写真:山岳点景
朱色きらめく黄金の森、草緑も光るゴールデンタイム。


撮影地:小田代ヶ原@栃木県日光市日光国立公園内2014.10

標高1,400超える寒冷地です、今シーズン既に降雪もあったそうなので冬装備×登山靴きちんとお出かけください。
○冬期はトイレ使用不可になります、使用できる場所を確認の上お出かけください。
○寒冷期の木道は凍結しやすい→滑って転倒も多いです、特に降雪×気温低下後は軽アイゼンあると安心だと思います
※但し木道むきだしの個所はアイゼンで踏まないでください、木道を傷つける+アイゼンの刃をひっかけ転倒します。
○降雪時は雪で木道の穴や木の根道など解りにくいです、ストックで足もと確かめながら歩いてください。
○野性獣の生息地です、クマ鈴や話し声で動物たちに通行予告しながら歩いてください※遭遇時の対処は専門書で要チェック。
○国定公園内のため焚火不可・木の実などの採取も禁止です。
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車内雑談:雪山帰路の翌日→平日

2017-11-07 21:56:39 | 雑談
昨日は今シーズン雪山初め、
今日は公用→実家→帰り道の途中休憩←今ココ。
そんな神奈川県某所は雨の夜、ちょっと休憩雑談、笑

昨日は栃木県と群馬県の県境に登ったんですけど、
11月だから雪あるかもなーと事前に調べたら雪ありで、
行ってみたら雪×ぬかるみリミックス登山道でした。

あーやっぱりなあ、

と、ゲイター履いて、
雪が硬くなるごと標高も高く、
斜面方角×地形で積雪量も変わって、
……

なんて書いたまま数日放置して火曜夜なんですけど、笑
帰宅の車内はなぜだか酒飲んじゃった顔けっこういて、

まだ火曜夜なのに元気だなー、

なんて感想と今ココで。
なんて自分も最寄り駅で待ち合わせ予定が入り、笑
火曜からナンだかのんびりしたモンだけど、連休明けだから?

なんていう今、オキャクサン来日で首都圏わりと警戒中で、
ソレでも火曜から呑んじゃってる呑気は平穏で、
ありがたいなーと。

なんもない無事がイチバン幸せです、笑


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道路点景:県境の夕刻

2017-11-06 09:19:02 | 写真:街角点景
雪山の帰り道、ふつうの峠道で。


山間部の道は街路灯が少ない×カーブ・急角度が多い=運転注意、撮影も「安全な場所」に停車してくださいね?
撮影地:県境@群馬県×埼玉県

朝日夕日空92ブログトーナメント
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第85話 春鎮 act.40 another,side story「陽はまた昇る」

2017-11-05 23:58:56 | 陽はまた昇るanother,side story
Since first I saw you fresh, which yet are green. 生まれた望みに、
harushizume―周太24歳3月下旬


第85話 春鎮 act.40 another,side story「陽はまた昇る」

はるかな青に雲がゆく、白くて、大地にとける。

「きれい…、」

背なか車の扉あずけた視界、白と青を墨色ふちどる。
黒いシルエット森をえがいて雪を透かす、頬なびく冷気が樹を香る。
もう三月、きっと山の芽吹きも近いのだろう?そんな田園の雪景に呼ばれた。

「湯原くん、ココアあったよ?」

ソプラノ透って目の前、ダークブラウンの缶ひとつ。
見慣れたラベルに懐かしくて、ほっと周太は笑った。

「ありがとう、美代さん…ごめんね、不慣れな運転手って疲れるでしょ?」

雪めぐらす山懐、自動販売機かたわら銀色ふきだまる。
やわらかな白い足跡さくり、明るい瞳が笑った。

「湯原くんこそ疲れたでしょ?レンタカーだし、ひさしぶりの運転おつかれさま、」

大らかな瞳が笑って、こつん、かろやかに缶ぶつけてくれる。
あまい湯気くゆらす乾杯くちつけて、ほろ苦い甘い香にソプラノ笑った。

「でも疲れるより私、びっくりしたよ?教習所の車じゃない運転席が初めてってイキナリ言うんだもん、」
「ん…僕もびっくりした、」

素直な感想うなずいて、日数カウントしたくなる。
運転免許を取得して、それから空いてしまった時間に大きな瞳くるり笑った。

「なんだか湯原くんらしいね?雪道なんてもっと初めてなんでしょ、それでも運転しようってガッツがすごいよ、」

レンタカーの扉に背もたれる隣、ベージュのコートの肩が細い。
華奢な女の子の言葉に白い湯気ごし、困りながら微笑んだ。

「むこうみずって言うんだと思う…こういうの光一にからかわれそうだね?」
「だね、きっと光ちゃん喜んで食いつくよ?」

薔薇色の頬が笑ってくれる、でも左頬は紅い。
まだ腫れたまま彼女は帰る、そんな雪の道に訊かれた。

「一緒に奥多摩まで来ちゃったけど、湯原くんはどうするの?」

朝、葉山の海にいた。
その隣そのままならぶ雪の里、樹の香る風に言った。

「僕も美代さんのお家、一緒していいかな?」

そのとき隣にいたい、今度こそ。
願いに明るい瞳を見つめた。

「僕も一緒に頭下げたいんだ、美代さんが進学を決めたのは僕がきっかけだから、責任から逃げるの嫌なんだ、」

一緒に決めた道、だから一緒に。
こんなふう想える今に夏の記憶こぼれた。

「僕、英二のときは隣にいなかったんだ…ご家族に僕のこと話したとき、」

夏の終わり、あのとき赤かった君の頬。

『母はね、予想通りで、これ、』

君は笑った、あのベンチで。
あれから季節めぐった雪の道、大切な女の子に微笑んだ。

「英二も頬を叩かれたんだ、お母さんに…でも、ほんとうは僕を叩きたかったんだ、」

だから三月の雪の夜、あの掌を避けなかった。
もう一年前になる痛覚そっと頬ふれて、隣に笑いかけた。

「今回も同じだよ、だから僕も一緒に頭下げさせて?美代さんが進学を決めたきっかけは僕だから、」

きっかけは自分、それくらい自覚している。
その記憶に明るい瞳くるり笑った。

「たしかに、きっかけは湯原くんだね?公開講座で青木先生と会わせてくれたトコからだもん、」

三月の終わり、都心に雪が舞った日。
そこから始まった今のかたすみ、白銀の空に微笑んだ。

「だから僕にも見届けさせてほしいんだ、きっかけになれたこと僕は自慢に想ってるから、」

植物が好き、その共通点につながれた。
そうして見つめあう夢の片割れは、明るい瞳くるり笑った。

「自慢に想ってくれるって力でるね、きっと私、父に勝てるよ?」

力が出る、そんなふう自分も役に立つ?

「ほんと…?」
「ホントに力でるよ、ありがとう、」

薔薇色の頬ふわり笑ってくれる、左頬は紅いままで。
まだ腫れたままの笑顔、それでも彼女は大らかに笑った。

「ほんと力でるんだよ、だからね、あの歌姫みたいになってほしくないの、」

歌姫、ほら?扉をひらく言葉だ。

「だから僕、美代さんの進学のことから逃げたくないんだ…英二からも、」

あの歌姫のようには逃げたくない。
そうして辿りついた山里の雪、純白まばゆい道に訊かれた。

「ね、湯原くん?今日、もしかしてって想うから登山ジャケット着てきたの?」

そういうことなんでしょう?
そう笑ってくれる瞳まっすぐ温かで、素直こぼれた。

「だといいなって想って…連絡もできないけど、」

変えられてしまった携帯電話、もう連絡先すべて消えた。
それでも繋ぎたかった願い声にした。

「今のスマホ、おばあさまが買い替えてくれたんだけど…英二の番号だけ消えたの、だから友達に聴こうと想ったんだけど…」

登山ウェアのポケット探って、スマートフォンとりだす。
まだ馴染まない薄い感触ふれて、ひらいた受信箱に訊かれた。

「その友達から返信ないの?」
「うん…山にいるのかもしれない、けど…救助隊員だから、」

答える心臓くっと軋む、絞めつけられる。
どうして返信ないのだろう?ちいさな不安に澄んだ声が言った。

「ね、新着メールの確認してみたら?」
「え…?」

どういう意味?
わからなくて見つめた真中、明るい瞳が笑った。

「あのね、奥多摩って山がちでしょ?それで電波うまく入らないコト多いの、山にいる友達なら受信も送信もタイムラグあるかも?」

ソプラノ明るく響いて、ちいさな指ひとつ画面ふれる。
とん、かすかな音に画面ひらいてスマートフォン震えた。

「あ、」

受信ランプ瞬く、表示きりかわる。
その諦めきれない願いに大きな瞳くるり、彼女が笑った。

「ね、クサレエンのほんとの意味って知ってる?」

(to be continued)
【引用詩文:William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet 104」】

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