また、利根川進先生による脳科学研究の成果です。
脳には、海馬という記憶のセンターの近くに、人間では小指の先くらいの大きさの偏桃体という部分があります。偏桃体は、身体内外の危険、異常などをセンシングして、不安、恐怖などの感情を作り出すセンターとして知られています。偏桃体と前頭前野は互いにコントロールし合って、不安やうつの基盤になるようなレイニーブレインを構成していると言われています(「脳科学は人格を変えられるか?(エレーヌ・フォックス)」)。理研-MIT神経回路遺伝学研究センター長の利根川進教授は、脳科学的アプローチでうつのメカニズムについての研究に精力的に取り組み始めました。このグループがNature Neuroscienceに発表した最近の研究によると、この偏桃体の基底外側核という部分の後方と前方には、それぞれ嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞が集まっていて、互いに相手の働きを抑制し合っているというのです。偏桃体に嫌な体験細胞があってもおかしくありませんが、嬉しい体験細胞もあるというのは初めて知ったことですし、あんな小さな場所でそんな重要な感情や行動が決められているというのがおどろきです。
では、その研究報告のプレスリリースを見てみましょう。
図.嬉しい体験と嫌な体験に対応する神経細胞の存在領域
嬉しい体験で働く神経細胞と嫌な体験で働く神経細胞は、扁桃体基底外側核内で、混在しているという説(左)と異なる領域に局在しているという説(右)があり、詳細が不明であった。
嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞は、それぞれの働きを互いに抑制し合っているということだから、嬉しい体験細胞を活性化させれば、嫌な体験細胞を抑えて、ポジティブな心持ちになり、不安を減らし、前向きに幸せに生きていけるのではないでしょうか。日々イライラしたり、シュンとしながらなんとか生きている私たちの脳において、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞のバランスは、嫌な体験細胞側に傾いているのだと思います。嬉しい体験細胞を活性化させていくことが、楽に意欲的に生きていくうえで一つのポイントになりそうです。
脳には、海馬という記憶のセンターの近くに、人間では小指の先くらいの大きさの偏桃体という部分があります。偏桃体は、身体内外の危険、異常などをセンシングして、不安、恐怖などの感情を作り出すセンターとして知られています。偏桃体と前頭前野は互いにコントロールし合って、不安やうつの基盤になるようなレイニーブレインを構成していると言われています(「脳科学は人格を変えられるか?(エレーヌ・フォックス)」)。理研-MIT神経回路遺伝学研究センター長の利根川進教授は、脳科学的アプローチでうつのメカニズムについての研究に精力的に取り組み始めました。このグループがNature Neuroscienceに発表した最近の研究によると、この偏桃体の基底外側核という部分の後方と前方には、それぞれ嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞が集まっていて、互いに相手の働きを抑制し合っているというのです。偏桃体に嫌な体験細胞があってもおかしくありませんが、嬉しい体験細胞もあるというのは初めて知ったことですし、あんな小さな場所でそんな重要な感情や行動が決められているというのがおどろきです。
では、その研究報告のプレスリリースを見てみましょう。
『「嬉しい」「嫌だ」といった情動体験は、その体験に特有な行動を引き起こします。マウスでは、嬉しい体験は繰り返そうとし、嫌な体験にはすくみ行動(じっとその場に動かなくなる行動)をとったり、その体験を避けたりします。これまでの研究により、どちらのタイプの行動も脳内の扁桃体にある基底外側核の働きによって引き起こされることが知られていました。しかし、嬉しい体験で働く神経細胞(嬉しい体験細胞)と嫌な体験で働く神経細胞(嫌な神経細胞)が基底外側核内で混在している説と異なる領域に局在している説があり、その詳細は不明でした(図)。
今回、理研の研究チームは、行動中に活動した神経細胞を標識する遺伝学的手法を用いて、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞の特徴を調べました。その結果、嬉しい体験細胞はPppr1r1b遺伝子を発現し扁桃体基底外側核の“後方”に局在し、嫌な体験細胞はRspo-2遺伝子を発現し扁桃体基底外側核の“前方”に局在していることが分かりました。
また、マウスの脚に軽い電気ショックを与えながら、嫌な体験細胞の働きを「光遺伝学」で人工的に抑えるとすくみ反応が減少しました。光遺伝学とは、光感受性タンパク質を発現させた神経細胞群に局所的に光を当て、その働きを活性化させたり抑制させたりする技術のことです。また、マウスが鼻先を壁の穴に入れると報酬の水をもらえる装置で、マウスが水をもらっている最中に嬉しい体験細胞の働きを人工的に抑えると、鼻先を穴に入れる回数が減少しました。このことから、嬉しい体験細胞および嫌な体験細胞の活動が、それぞれの体験に特有な行動を“実際に”引き起こすことが明らかになりました。さらに、電気生理学的手法を使って、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞は、それぞれの働きを“互いに抑制し合う”ことを突き止めました。
今後、うつ病に代表されるような情動障害において、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞を別々に操作することができれば、新しい治療法の開発への道を拓くことができます。また、それぞれの細胞群の特徴に照準を絞って治療薬の探索を行うことで、より的確な情動障害治療の創薬につながると期待できます。』
今回、理研の研究チームは、行動中に活動した神経細胞を標識する遺伝学的手法を用いて、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞の特徴を調べました。その結果、嬉しい体験細胞はPppr1r1b遺伝子を発現し扁桃体基底外側核の“後方”に局在し、嫌な体験細胞はRspo-2遺伝子を発現し扁桃体基底外側核の“前方”に局在していることが分かりました。
また、マウスの脚に軽い電気ショックを与えながら、嫌な体験細胞の働きを「光遺伝学」で人工的に抑えるとすくみ反応が減少しました。光遺伝学とは、光感受性タンパク質を発現させた神経細胞群に局所的に光を当て、その働きを活性化させたり抑制させたりする技術のことです。また、マウスが鼻先を壁の穴に入れると報酬の水をもらえる装置で、マウスが水をもらっている最中に嬉しい体験細胞の働きを人工的に抑えると、鼻先を穴に入れる回数が減少しました。このことから、嬉しい体験細胞および嫌な体験細胞の活動が、それぞれの体験に特有な行動を“実際に”引き起こすことが明らかになりました。さらに、電気生理学的手法を使って、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞は、それぞれの働きを“互いに抑制し合う”ことを突き止めました。
今後、うつ病に代表されるような情動障害において、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞を別々に操作することができれば、新しい治療法の開発への道を拓くことができます。また、それぞれの細胞群の特徴に照準を絞って治療薬の探索を行うことで、より的確な情動障害治療の創薬につながると期待できます。』
図.嬉しい体験と嫌な体験に対応する神経細胞の存在領域
嬉しい体験で働く神経細胞と嫌な体験で働く神経細胞は、扁桃体基底外側核内で、混在しているという説(左)と異なる領域に局在しているという説(右)があり、詳細が不明であった。
嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞は、それぞれの働きを互いに抑制し合っているということだから、嬉しい体験細胞を活性化させれば、嫌な体験細胞を抑えて、ポジティブな心持ちになり、不安を減らし、前向きに幸せに生きていけるのではないでしょうか。日々イライラしたり、シュンとしながらなんとか生きている私たちの脳において、嬉しい体験細胞と嫌な体験細胞のバランスは、嫌な体験細胞側に傾いているのだと思います。嬉しい体験細胞を活性化させていくことが、楽に意欲的に生きていくうえで一つのポイントになりそうです。
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