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映画「ソルト」:アンジー,はまり役を得て眩いばかりの輝きを見せるの巻

2010年08月06日 00時00分01秒 | 映画(新作レヴュー)
アンジェリーナ・ジョリーが,ひたすら美しく,格好良い。特段彼女のフォロワーという訳ではないので,過去の主演作を全てチェックしてはいないのだが,これまで観てきた中では,彼女の魅力が発揮されているという点でこれが最高だ。
当初レオナルド・ディカプリオが主役に予定されていたところ,彼が同じような内容の作品に出演することになったため,結果的に役がアンジーに回ってきたことから,彼女に合わせて脚本もリライトされたらしい。だが何処から見ても彼女を想定して書かれたように思えてくる脚本を元に,最高のヒロイン映画を作るぞというスタッフの意気込みに背中を押されたアンジーが,身体を張った演技で魅了する。ジョン・ボイドの娘やブラッド・ピットの妻などという呼称はとうの昔に必要としないハリウッドの看板女優に,とうとう「代表作」が生まれた。

監督のフィリップ・ノイスは,ハリソン・フォードとのコンビによるジャック・ライアン・シリーズで名を上げた職人だが,劇場用映画は「裸足の1500マイル」以来8年振りになるらしい。だが本作を観る限り,手堅いアクション映画を撮るための秘訣は,完全に身体が覚えていたようだ。
ソルトは乗り物から飛び降り,飛び移り,腕を大きく振って走り,どんなに殴られても泣き言を言わない。言葉は身体に語らせる,というアクション映画の鉄則が,華のあるヒロインによって遵守され,エッジの鋭い絵となってスクリーンに映し出されるのを観ることは快感だ。

ヒロインの躍動をヴィヴィッドに焼き付けることが命であるこの手の作品ほど,スタッフの力量が重要になってくるが,その点でも隙がない。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でアカデミー賞に輝いたロバート・エルスウィットを撮影に据え,編集には,主役と思わせたスティーブン・セガールを開巻直後に殺して観客の度肝を抜いた怪作「エグゼクティブ・ディシジョン」を監督したスチュアート・ベアードを持ってくるというセンスは,至る所で目覚ましい成果を生んでいる。

ジェイソン・ボーン・シリーズがアクション映画におけるカット数のスタンダードを大幅に引き上げたことを意識しているのか,めまぐるしいカット繋ぎで観客に目眩を起こさせるようなシークエンスがほとんどないのも,ヒロイン映画の鉄則をしっかりと守っていて嬉しい限りだ。ウェルメイドのハリウッド映画が持つ安心感は,やはり休日の娯楽として,安くはない木戸銭にも見合うことを再確認。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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